2008年2月27日水曜日

『食客』


2007年 韓国TVドラマ全24回「食客」。一気に見てしまいました。



李朝末期に王の寵愛を受けた待令熟手の後継者が運営する韓国最大の宮廷料理店「雲岩亭」を舞台に繰り広げられるドラマ。
次の後継者選びから物語がはじまります。待令熟手の子孫だが野心がなく大らかな自由人イ・ソンチャン、プライドと野心家でエリート意識の高いオ・ボンジュ(この二人の青年は義兄弟同士)を中心に、韓国ドラマに必須(!?)の、血縁関係や恋愛が交差し、さらには、師弟愛、親子愛あり、料理バトルありで、コンテンツ豊富に展開していきます。
引き込まれてしまう要素は盛りだくさんですが、何より印象的であり魅力なのは、食の根っこを支える風土と文化がすがすがしく描かれているところ。
韓国の自給率は、日本同様低下していると聞きますが、このドラマを見る限りでは、豊かな自然に恵まれ食材豊かな国の印象です。それに、家庭料理の健在ぶりは、なかなかのもの。食糧自給率は日本同様低いといわれる韓国ですが、台所自給率は、かなり高そう・・・。
シネマンマ的食の視点から「ほぉ〜」と、思わず見入ったエピソード、シーンなど、見所を幾つかあげてみます。


第1話:鱈のスープ 韓国の包丁がチラッと登場。


第2話:ニベの浮き袋料理 中華の高級食材を、生からこんなふうに・・・!?


第3話:韓国の家庭の味、“チョングッチャン”(韓国納豆味噌鍋)なるものがでてきます。


第4話:山菜探しのシーン 


第6話:
ここからは、イ・ソンチャンが食材の行商を始め、「おいしんぼう」的展開がはじまります。蟹ビビンバが出てきますが、蟹の質をミソの色で見分けるところ「黄腸のズワイガニ」とよんでいるところなどが興味深い。
良質の蟹を、ビビンバでまぜこぜして食べるなんて、なーんてもったいない!
最高級のモノには出来るだけ手を加えないで食べて欲しいと思ってしまうのは、私が単に貧乏性だからか、シンプルイズベストの日本人だからか・・・。
「まぜごはん文化」韓国を彷彿とさせられます。


第7−10話: 
韓国の国産牛が登場! 肉の味利きでは、各部位を生で試食しているところが印象的(!)。大陸的というか「この人達は肉食なのね・・・」と、痛感してしまいました。牛の解体職人も出てきて、牛を丸ごと裁くシーンが・・・! 


第13話:
美味しいお肉の炭火焼きの秘訣が垣間見られます。ジュッ・・ジュッ・・ジュ・・と遠赤外線パワーで秒単位の仕切りで炙り、肉汁が落ちてくる前にサッと火から外す。安定してパワフルな火力を提供できる炭選びもこの回の「おいしんぼ」ポイントとなっています。ドラマでは、良い炭を探し求め、たどり着いたところは・・・山。山の斜面の水はけのよいところに根を張っていたナラの枯れ木。「この木なら最高の炭ができる」なんて、究極の職人気質な台詞も出てくる。「香炭」なる香草を混ぜ込んだ手作りの炭も登場して、シンプルな炭火焼きが、燻製(・・のように香りが付くのだろうと想像しました)さながらの複雑味を帯びて来くるのでありました。この辺りから、義兄弟の対立というもうひとつのストーリー展開もピークになりますが、彼らの選び作る料理で、イ・ソンチャンとオ・ボンジュのキャラクターが表現されているようでもあります。


そして、最も印象に残ったのが第15話の、キムチ作りのシーンです。キムチと一言で言っても、キムチの郷土料理があるほど様々。お茶の産地、河東では茶葉を一緒につけ込む「チャ・キムチ」という代物が(!)。唐辛子たっぷりの中で、生の茶葉からどれほどの香りが出るのかは正直クエスチョンですが、その栄養価には、なんだか説得力があります。


18話で、鮑の・・・


19話で鱒のスープ、そしてクライマックスへ向けて、全ての料理の要、「醤(ジャン)」が出てきます。味噌や醤油が仕込まれた瓶がズラリと並んだ「雲岩亭」瓶置き場。 その場所の地面や壁の造りまでが、味噌や醤油の味に影響を与えるので、塩の層を作ったりして工夫されているというのには驚きました。


最後には、老舗料亭とマスコミとの対立に日本人ビジネスマンまで出てきて、コンテンツもビビンバまぜまぜごはん状態になり、納まりどころをどうするのだろうかと、ハラハラもピークに達した視聴者を知ってか知らずか、最後は一気にたたみ込むのでした。めまぐるしい展開ながら、ほのぼのしてしまうのは、役者さんのキャラの良さと、やっぱり暖かい手料理、家庭料理が散りばめられているからかな。)))


オマケ:ところで、「食客」(しょっかく、しょっきゃく)ってどういう意味?
調べてみると、「中国の戦国時代に広まった風習で、貴族たちが才能のある人物をとして遇して養う代わりに、主人を助けるというもの。 彼らの中には任侠の志を持つ者が多く、場合によっては、命を差し出すこともあった。逆に主人を裏切り殺害することもあった」・・・とありました。