2016年12月29日木曜日

勝ち栗


勝ち栗をいただきました。
殻付きなのは初めて。
晒乾して炒り、また干して炒り・・・焦がさず作る保存食。

栗は日本的な食材のような気もするけれど、古代から中国にもヨーロッパにもある森の恵。

日本では、縄文時代には、北国の主食であったとの記録も。
桃栗三年、柿八年 柚子の大馬鹿十八年(あるいは梅すいすい十六年)
3年で収獲できるまでになるところも、心強かったかな?

4−5世紀にまとめられたローマの料理書『アピキウス』にも、胡桃、榛(ヘーゼルナッツ)、アーモンドと並んで、栗が出てきて、家畜の飼料にされていたりもした様子。
6世紀、北魏の時代にまとめられた中国最古の農書『斉民要術』(全十巻)には、4巻の果樹の部で、棗、葡萄に次いで、杏、梅、栗が紹介されています。
寒さにも強いこともあり、命の糧として、古今東西にゆるぎない存在であったようです。

砂糖が普及してからは、栗羊羹に天津甘栗、マロングラッセ・・・女性好みの甘物として象徴的地位も獲得。最もオシャレに変身できる滋味な食材です。

鬼皮に守られ、渋皮に包まれ、それでもこの地位を守ってきた栗!!
乾物とは見分けが付かないこの風貌も相まって料理してしまうより、御供えにしたくなってきました。

しばし飾って拝んで、「勝軍利(かちぐり)」縁起モノとして、おせちに仲間入り。
あはは・・・確かに、皮むき作業には、鋭・鋭・応〜!の勝ちどきが必要かも。


2016年12月21日水曜日

ゴパン




東南アジアの友人が言う「ごはん」がどうしても「ゴパン」に聞こえてしまって、何度も聞き直しては笑った。黒米を加えたこのパンを焼くと、いつも彼女のことを思い出してしまう。このパン、彼女に食べさせて、また「ゴパン」と言わせたい(笑)。
これは、米粉パン反対派のごはん入りパン「ゴパン」です。

試行錯誤を繰り返してやっと理想的な配合が決まりました。
お正月の里帰りにはコレを手土産にしようと、沢山焼いたのはいいのですが・・・。
冷凍庫がパンで一杯です。

時間の算段、懐の算段、冷蔵庫内の算段・・・いずれも厳しい年の瀬です。



2016年12月19日月曜日

お櫃



ここ数年、二の足を踏んでいたお櫃を、思い切って買いました。
栗久さんの秋田杉のお櫃。
炊きたてのごはんをお櫃に移しかえるだけで御飯が美味しくなる。
更には、冷めても美味しい。
お冷や御飯が美味しいのです。温めたくないくらいに。

栗久さん曰く「お櫃に入れておけば、夏場も常温で2日間大丈夫」。

まだ夏は越えたことがありませんが、なるほどごはんの傷みというのは、湯気が水滴になり、それが傷むところから始まるのだなと、お櫃の御飯と付き合うようになって分かってきました。

ひと昔、ふた昔前、薪木をくべ竃で御飯を炊いていた頃のごはんに近づこうと、家電メーカーが研究に研究を重ね優れた炊飯器を生み出していますが、実は炊く美味しさ以上にお櫃の「保存」の美味しさが、キモだったりするのではないか!??
そんな思いが、ふとよぎりました。

高級炊飯器を使ったことがないのでわかりませんが、もし、ごはんをお櫃に移すひと手間が、十数万円もする炊飯器を越える美味しさを提供していたら・・・!!

なんだかほくそ笑んでしまいそう。

工芸と工業。天人合一と人定勝天のせめぎ合い。
ヒトは何でも叡智で乗り越えようと試行錯誤をして来ましたが、それを杉のわっぱがスッーと涼しい顔で成し遂げててしまったような・・・。

もう少し自然に寄り添うことで簡単にかなえられる喜びが、まだまだ沢山あるような気がしてきます。

何千万円も使って宇宙に行かなくても、数十万で行けるところにもロマン溢れる大自然が沢山あるし、里山の息づかいも捨てたものじゃございませぬ。

そんなことを思いつつ、江戸の長屋のおよねさん(仮名)になった気分でお櫃のお冷やごはんをよそい、お茶を掛ける。

ずるずるずる)))))

んまい!

美味しいお漬け物、漬けたくなります。

温故知新か先祖返りかと笑われるかもしれませんが、暮らしの中の道具、人の手を出来るだけ近くに感じていたいものです。


さて、欲は尽きぬモノで・・・・。
お櫃に入るに相応しい美味しいお米も欲しくなります。
コチラは、料理研究家の冬木れいさんから、青森土産にいただいたお米『晴天の霹靂』。
斬新なパッケージには「ごはんが好きになるお米」と。
お櫃とコレで、ごはんがもっと好きになった今日この頃です。


2016年12月16日金曜日

柚子味噌


毎年八丁味噌で仕込む柚子味噌。
今年は、白味噌バージョンもプラス。

2食のふろふき大根を楽しもうという寸法です。

雅な白味噌、骨太な八丁味噌。どちらも好きですが、どちらもどこかよそ行き気分。
それはきっと、記憶にある祖母のふろふき大根が、いつもの味噌汁使用のお味噌で作られていたからだと思う。

柔らかく炊けた大根いっぱいの大きなお鍋と、味噌を練った小鍋が、まるでビュッフェのようにテーブルの上に置かれ、各自大根をすくっては味噌を掛け掛け食べたものです。
大根と味噌、両方を熱々で供しようとした苦肉の策だったのか、単なる横着か??

小鉢に盛りつけられたふろふき大根を「1ケでは足りない・・!」と感じてしまうのも、そんな「食べ放題ビュッフェ大根」に親しんだからかもしれない。


味噌は、生活感をあらわす最もさりげなく最も深ーい素材。
昨年のドラマ『天皇の料理番』では、マッカーサーの「日本人にとって天皇は?」との問いかけに宇佐美さんが「味噌のようなもの」だと応えましたっけ。「味噌は生まれたときからそこにあって、当たり前すぎて、その意味など考えたこともない。でも、明日から味噌を食べるなといわれたら、とてつもなく寂しく、暴動が起きるでしょう」と。
宇佐美さんは、天皇制を味噌に喩えましたが、味噌の歴史は天皇家ぐらい古いという、ドラマとは別の意味でこのセリフを思い出してしまいました。

味噌は飛鳥時代に大陸から伝わったと言われます。
正確には、大豆醗酵食品の「醤」という形で伝わったわけですが、味噌汁で味噌を食べるようになったのは鎌倉時代なんだとか。
一汁一菜という言葉もその頃からでしょうか。

仏教伝来と共に肉食のタブーが広まっても、日本人は味噌を始めとする発酵により生まれるアミノ酸で栄養のやり繰りをしてきたともいえます。
正に命の源、米と味噌。

そんな味噌。日本全国いろいろな味噌がありますが、土地土地の食文化を体現していると言っても過言ではないですね。

旅のような私の人生。やはりふろふき大根も、東西の味噌ハーフ・アンド・ハーフぐらいが相応しいかな(笑)。

一日1食1品は味噌を使ったお料理をいただくことが、目下、私のささやかな健康法です。





2016年12月7日水曜日

武則天(2)

「天にあっては、比翼の鳥となり、地にあっては連理の枝とならん」 
詩人白居易の「長恨歌」の中の有名な一節。
安碌山の乱が起きて都落ちすることになった玄宗帝が、楊貴妃に語ったとされるくだりです。

楊貴妃は、蜀(現在の四川省、三国志では劉備の国が蜀)の出身でしたが、実は武則天も蜀の出身。奇遇にも、唐を揺るがした女。ちなみに、玄宗帝は、武則天の孫に当たります。

あまりに有名な楊貴妃と玄宗帝のお話ですが、その少し前の伝説的な女性が「武則天」。
日本人にはちょっと馴染みの薄い人物だけに、このドラマ、興味深く全82話(!)を見終えました。どの程度歴史に忠実に描かれているのかは分かりませんが、系図についてはかなり正確に描かれているようです。【下図参照】

唐の二代皇帝李世民の才人(後宮の女性)でありながら、次代皇帝李治の皇后となる武則天。
ドラマでも、書物をよく読み知性の高い女性として描かれていますが、彼女は女帝となっていた14年間で元号や称号を度々変えている他、漢字も新しく創ったりしています。政治権力維持や統制の為の意図もあったでしょうが、教養の高さを感じさせるものです。

先に「唐を揺るがした女」と書きましたが、武則天の治世の元号を周としたりということもあり、李氏一族の統治から逸したという意味では「唐を揺るがした」といわれるのかもしれません。が、二代皇帝李世民、三代李治、そして李治の子どもへと繋ぎ、最終的には李治の皇后として同じお墓にはいるのですから、きっちり国を治めた人物なのではないかと想像しています。実際、武則天の治政は安定していたといわれます。
李治の次の皇帝の座を巡っては、その後を継いだ皇子立ちの在位期間は短く、様々ないざこざや陰謀があったのかもしれないと思わせます。
やっと落ち着いたかに思える玄宗帝の代は、唐が最も栄華を極めたとされる時期です。
名君と伝えられる玄宗帝ですが、両腕となった官僚は武則天が見出し引き揚げた人材だったそうです。

そんな唐代。日本は奈良〜平安。思いを馳せるには少々遠いのか、戦国時代にくらべるとあまり人気のない時代ですが、中国ではこの時代は、三国志と並んで、何度も何度も描かれドラマが製作される思い入れの強い時代のようです。
中国人の中華思想やプライドも、世界に馳せたこの時代の栄華が根っこにあるのかも!??

年号が唐から宋、宋から元、元から明、清・・・と移り変わっても、日本人は「唐モノ(からもの)」「唐モノ」と言って、中国=唐というイメージを長く持ち続けていたのですから、その文化的影響力は、否めません。

ドラマ『武則天』。
ファン・ビンビンをはじめとする俳優陣のスタイルや身のこなし、ハデハデの衣装や調具品は、今の中国のテイストを反映しているのかもしれませんが、この時代の、人の命の在りようなどは、なんとなく「そうだったかもしれない・・」と思わせるところが多々ありました。

李世民役のチャン・フォンイーや李治役のアーリフ・リーなど、華のある役者でガッチリ固められたキャスティングには、中国のパイの大きさがひしひしと伝わってきます。

チャンネル銀河につづき、BS12での放送も始まっている様子。
http://www.twellv.co.jp/event/busokuten/archive.html

82話は大変ですが、やっぱり見応えあります。オススメです。





【『国をゆるがすおんなたち』より】