2009年6月17日水曜日

黒豆えんどう





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先月のことですが、鹿児島の伯父が作っている豆が届きました。「黒豆えんどう: 御飯と炊いたら、赤飯のようになります」と、チラシの裏に書いたメモ付き。

正式な名前は別にあるのかもしれませんが、見た目、味、共にえんどうそのもの。強いて言えば、濃いえんどう・・・といった感じです。

豌豆が栄養いっぱいで、あふれんばかりのミネラルが思わず色に滲み出てしまった!・・・という風貌ではありませんか。

早速御飯に入れて炊いてみました。
ほら!こんな感じです。



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伯父の暮らす辺りでは何でもない料理なのかもしれませんが、なんだかとてもご馳走のような気分でいただきました。何てったって、”豆赤飯”・・ですもん。

ところで、豆類の多くには、蒸し暑い時期のだるさの原因ともなる湿邪=体内に余分な湿(水分)が溜まるーーーを、排泄させる働きがあるのだそうです。

自然とは、賢くできているもので、豆が実る時期と蒸し暑い季節が上手く重なっているではありませんか。
旬の食べ物をたべることの大切さ、痛感します。

ちなみに、豆の食べ方には要注意。小豆や豌豆も、砂糖で甘く煮ると、砂糖の湿を引き寄せる作用で、除湿効果は打ち消されます。夏場に甘いものばかり食べていると、むくみが出るのもこんなところに原因があるかもしれません。

それにしても、豆を甘く味付けして食べるのは、アジア人だけなのですよね。何ででしょう??




2009年6月4日木曜日

レイシ談:『死諫之医』


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先日店先で茘枝を見かけました。
ライチだっけ?レイシだっけ??・・と、名前もおぼつかないこの中国果実、原産地は中国南部~インドシナ半島で旬は、今(!)、6,7月。
ちなみに、「ライチ」は英語読みで「Litchi」と書くからみたい。
楊貴妃の好物で何よりこの果物を有名にしているようですが、唐代の名将玄宗帝の寵愛を受けた楊貴妃の美貌が、このレイシだったかどうかは定かではありません。
レイシについて知っているのは、これ以上も以下でもなかった。
この本を読むまでは。

『死諫之医』(しかんのい)
医師で漢方薬剤師でもある劉大器氏の著書。
唐代の玄宗帝を取り巻く人々と玄宗帝の、欲望の病(糖尿病)をテーマにした小説で、実在の名医、孫思ばく(そんしばく:バクの字がJIS企画にないのでひらがなでごめんなさい)やその弟子孟言先(もうせん:言片に先で一字)が登場します。糖尿病になった玄宗帝に、様々な薬膳と漢方薬の処方を施すプロセスが後半3分の1を占める物語なのだけど、玄宗帝が、糖尿病になるきっかっけが、なんと、レイシを有名にした楊貴妃なのであります。

この小説によれば、楊貴妃は、蜀(現在の四川省)出身のちょっとぽっちゃり系の色白美人で、なかなかの大食漢でもあったようである。
お国を超えて嫁した姫君が故郷故国の味を所望することで、その国の食文化に少なからず影響を与えるという話はよく聞かれますが、楊貴妃もまた、自分の郷里の料理ーーー豊富な食材と調理技術の匠により「見た目より味で勝負!」といった食文化をもつ四川料理ーーーを求めたため、それまでの上品で華やかな宮中御膳坊が一新されてしまったといいます。
若い妃を娶った玄宗帝が、初老ともいえる年齢にして色と美食に目覚めたからこれ大変。また、決して政治的野心の持ち主でもグルメでもなかった妃だったそうですが、玄宗帝にねだる「ささやかな」我が儘は、政権を揺るがす大事へと繋がっていきます。
レイシは、南国の果物。しかも日持ちがしない。当時の長安でレイシを手に入れるのは殆ど不可能なことだでしたが、「レイシが食べたい・・・!」この楊貴妃のシンプルな願いに応えるべく、玄宗帝は、戦乱などの緊急時の為に確保しておかなくてはいけないはずの軍道を使って運ばせることにしたのでした。
乾燥した長安の地で、故郷で慣れ親しんだみずみずしいフルーツ、レイシを切望した楊貴妃の気持ちも分からないではないけれど、ねだった相手は、不可能を可能にしてしまう専制の世の権力者。軍道機能しない機をみはからって反乱軍が発起し、政権がひっくり返る大事へと至る・・・。
楊貴妃は、軍の兵士達らからの怒りを買い、玄宗帝の側近により賜死させられます。

レイシは、楊貴妃を死に至らしめた果物でもあったのでした。
あ~~~~。
古の悲劇に思いを馳せながら、レイシをひとつ・・・。
ああ、やっぱり美味しい・・・。
ちなみに、レイシは、温性で、補脾養血、生津止渇。つまり、体を温め、お腹にも優しく、気を満たし、潤いを与える効能がある食材。
たしかに、美容に良い食べ物・・・・でしたた。乾いた地、長安の玄宗帝の目に留まるだけのみずみずしさと豊満さを備えた楊貴妃の美貌の素だったかも知れない??。