2019年5月26日日曜日

ポルトガルのお菓子 (追記)

雑学の域を出ませんが、4回に渡り南蛮菓子について書いてきました。

「大航海時代」とか「新航路発見」("発見" された先住民にしてみれば甚だ迷惑な話ではあるけれども)を歴史の一頁としてみれば、それはそれは壮大なロマンにも見えるのですが、この時代のヨーロッパ人たちは、途方も無くて、大胆で、残忍で、運まかせ。
野心なのか本能なのか、博打なのか??「生きてるだけで、丸儲け」だったのでしょうか??
この時代については、もう少し足踏みしていろいろ調べたいなあと思っています。

さて、2で取り上げた福岡の銘菓「鶏卵素麺」についてのエピソードをひとつ。
ポルトガル伝来といわれるこの鶏卵素麺とそっくりのお菓子が、タイ王国にもあるのです(!)。「ファイトーン」といいます。

こちらはポルトガル経由ではなく、なんとキリシタン迫害を逃れ海外に渡った日系人によって伝えられもの(!)。

鶏卵素麺でググると、こんなサイトがありますよ。
http://www.街かどタイ料理.com/article/401072846.html
※ウィキは正確とは限らないことを前提にご覧下さい。

マリア・ギオマール・デ・ピーニャ。
ポルトガルの植民地だったインドのゴアから来たベンガル人と結婚したキリシタン大名の末裔といわれる日本人とポルトガル人との間に生まれた方なんだそう!?
アユタヤ朝のタイで、これまた複雑なルーツ* のヨーロッパ人と結婚しています。





まさに「数奇な運命」の図です。

*ほそく:ヴェネチア共和国支配かのギリシャの島に生まれるも、10代半ばで島を出てイギリス・東インド会社に就職しタイに渡る。その後貿易会社で働き、自らも船を持ち貿易を試みるも、インドで難破。その折に、アユタヤ王朝の外交官と出会い、再びタイへ。

彼女の夫は、そのアドベンチャーな経験を積む中で複数の語学も身に付け、タイの王様に気に入られちゃって、外交のお手伝いをするようになるのだけれど、イギリス、フランス(当時ルイ14世の治世です)に便宜を図りすぎて他の高官たちから反感を買い、王様が病気で倒れたのを機に、次王と高官らに殺害されてしまう(シャム革命)。
その妻であったマリアも捕まり投獄されてしまいますが、彼女には、お菓子作りの腕があったため、宮廷のお菓子職人として登用されることになった!!
鶏卵素麺に繋ぎとめられた命だったかもしれない?? 
ファイトーンと共に、彼女のことも語り継がれたのですね。)))

迫害を逃れたり追放されたりした日本のキリシタンがアジア各地で足跡を残している話は、他にもこんなものがあります。

江戸時代初期、キリスト教禁止政策によりバタヴィア(当時オランダ領だったジャカルタ)に追放された「お春」。
お春(1625~1697年?) は、ポルトガル商戦の航海士であるイタリア人の父と日本人の母を持つ混血少女で、追放当時は、まだ14歳だったとか。
彼女が望郷の思いを綴り日本に送った「じゃがたら文」は名文で、憐憫の情を誘い、昭和に入って「長崎物語」という歌にもなっているようです。
故郷を追われた悲劇の少女として語り継がれていますが、現地で、オランダ東インド会社で活躍したオランダ人と結婚して、奴隷を所有するほどの結構いい暮らしをしていたようです。
・・・というのも、当時、東洋への航海は、海賊や嵐や病気のリスクを伴い、命も駆ける大博打。そんな航海に便乗する女性など殆ど居なかったので、航海士が現地の女性と結ばれるというのはとても多かった(というか、ほとんどそうだった)のでした。また、当時のインドネシアには、イスラム勢力も浸透していましたから、異教徒との結婚は難しく、“文明国日本” の女性は大変魅力的だったそう。
(*参照:『ジャワ探究ー南の国の歴史と文化』/ 井口正俊・著)

ポルトガル全盛の後、オランダ、続いてイギリスが、各植民地を徐々に上書きし、やがて七つの海を征するーーー。
そんなうねりの中で、ポルトガルのお菓子が東へ南へ伝わり、広がっていき、その地の郷土がしとして根付いたーーー。


一番乗りでアジアを席巻したポルトガルは、最終的には、殆ど全ての植民地を奪われることになるのだけれど、お菓子という足跡を残しました。そしてそれは、ポルトガル人に寄るところに留まらず、日本経由でもあったりしたことには、深い感慨をおぼえます。

・・・で、イギリスは、残すほどの甘味を持ち合わせていなかったけれど、後々独自のティー文化を持ち込む。そのお茶請けは、バター無しでも作れるポルトガルのお菓子だったかも・・・しれないですよね〜〜〜))))???

ああ・・・とんでもない脱線をしてしまった。いや、本来、食を探訪するということは、こういうことなのだ。 

深いため息と共に、今日は日本の渋茶を啜ってます。


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