2021年5月5日水曜日

ホロホロ鳥 


「禽」

食用の鳥、こんなに(!)。
鶏にチャボ、鶉にアヒル、鴨、七面鳥にガチョウ・・・ウコッケイもいるね♪
手前右から二番目の見かけないのは、ホロホロ鳥。

アフリカ西部 ギニアあたりが原産の鳥。
日本で唯一専門に飼育している石黒農場(岩手・花巻)さんのホロホロ鳥をお取り寄せしてみました。

赤道直下の地が原産ということで、本来温かい気候が好きな鳥のはずなのだけれど、石黒さんは、東北岩手で花巻温泉の熱を利用してホロホロくんたちをほろっと温かく育てていらっしゃるようで。(NHK「うまいッ!」,「満天青空レストラン」

味わいの深さは成分の濃さであり複雑さでもあります。
同じ鶏でも、地鶏とブロイラーの味わいはちがうし、野生のセリやクレソンも香の強さがちがい、それは成分の濃さの違いでもあるようです。
ホロホロ鳥は栄養価がとても高く、高タンパク低脂肪、肉の赤身に含まれるミオグロビンは牛肉並み(!)で、ビタミン、ミネラルも豊富。まるでジビエのようでいながら、野生臭はほとんど無い。
このホロホロ、飼育環境はもちろん野生とは異なるけれど、スモークされたお肉(写真)は、まるで豚肉のハムのよう。
美味しいです♡



モモ、胸+手羽、ガラにざっくり解体。

ホロホロ鳥は、ギリシャ・ローマが地中海を制している頃からの食鶏らしいですが、商品に添えられた栞には<16世紀初頭にポルトガル王がローマ法王に献じたとされ、ヨーロッパでも飼育されるようになりました>と(!)。

「献上」ということは、まだ16世紀初頭=大航海時代までは普及していなかったということ。
なぬっ・・・!?
名前には、食材(食肉)のルーツや伝播がこめられていることが多いので、ちょっと調べてみました。
すると、なんとホロホロ鳥は、あの、クリスマスの主役ターキー(七面鳥)と、同じく「ターキー “Turkey”と呼ばれていたことが分かりました(!)。

 
ターキー(七面鳥)中〜北アメリカに生息する鳥。でも、なぜ「Turkey=トルコ」なのか?
そして何故ホロホロ鳥がターキーなのか??

それは、こう。
16世紀、北アフリカを含む地中海沿岸を制していたイスラム勢力オスマントルコ。当時はイスラーム世界からの伝来モノは、トルコと直接関係があるわけではなくても漠然と「トルコの」なんて風に呼んでいたらしい。なんだか私達が国籍がよくわからない外来のものを「エキゾチック」なんて風に言うのとちょっと似てます。昔の人なら「唐もの」とでも言ったでしょうか。
元々ホロホロ鳥は、イスラム圏だったアフリカからヨーロッパにもたらされたので、当時は "ターキー(トルコの鳥)" と呼ばれていたようです。
一方、新大陸---中米に渡ったスペインは、現地人が 「pavo=美しい鳥」と呼ぶ七面鳥に出会い、これをヨーロッパに持ち帰りました(1518年)。
ヨーロッパの人々は、この七面鳥を、ホロホロと同じ種類の鳥だと勘違いしたのか似ているのでそう呼んだのか、通称のターキーと呼んだのだそうです。
つまり、ホロホロも七面鳥も同じ中までターキー・・・と。
この混合があって、それがそのままアメリカ大陸に逆流し、七面鳥をホロホロの呼び名だった「ターキー」と呼ぶようになってしまい、すっかり定着してしまいましたとさ。
- - - とまあ、こういうことらしい。

 ●ホロホロ鳥
  キジ目ホロホロ鳥科。
  原産地:熱帯アフリカ
  和名:ほろほろ鳥(珠鶏)
  ※<江戸時代にオランダ船に乗ってきて、オランダ語の「ポルボラート」が
   なまってほろほろとなったと言われる>(栞より)らしい。
  英語名:guinia fowl(or cock / 「ギニア鶏」の意)
  仏語名:pintade(パンタード=「斑点模様の」の意)
  蘭語:parelhoen


 ターキー(和名:七面鳥)
  キジ目シチメンチョウ科の鳥。
  中〜北アメリカに分布。
  羽根は光沢のある青黒色。頭から首にかけての皮膚の裸出部が青・紫・赤等に変化する。
  (七色に変化するので日本語では19世紀の終わり頃から「七面鳥」)
  英語名:turkey
  仏語名:poule/coq d'inde→略してdinde (ダンド= 「インドの鶏」の意
      →(インド産ではなく)西インド諸島で発見されたという意味)
  蘭語:kalkoen(カルクフーン、カラクン鶏 コルカタ(現・カルカッタ)に由来)
  ポルトガル語:peru(=「ペルーの鶏」の意)
  スペイン語:pavo (=「美しい鳥」の意)
  中国語:火鶏(または吐綬鶏)


七面鳥には、斑点模様はないものの、カラフルなお顔に黒っぽい毛の姿は「トルコの鳥」ホロホロ鳥を彷彿とさせるものがあったのでしょう。大きさはずっと大きいので、大型ホロホロ鳥または大型トルコ鶏という感じだったかも。))

また、(イタリア人だけど)スペインの船に乗って航海し、新大陸を発見(1492年)したコロンブス(1451-1506) は、当初、その地をインドだと信じていました。
インドの美しい鳥といえば、クジャクですから、スペイン語の「美しい鳥=Pavo」は、クジャクのことを指すこともあったようです。
クジャクも、食肉とされていたりするようですが、ホロホロ鳥同様、大変栄養価が高いのだとか。更に、孔雀は毒蛇を食べても死なないことから、不死鳥として、ローマ帝国の頃から高貴な方々のお口に入っていたようです。中国でも、クジャクは不死鳥のシンボルで、鳳凰(フェニックス)のモデル。そここそが中国人が孔雀を好んで食す所以なのだとか。
ちなみに「七面鳥」のことを中国語では「火鳥」・・と(!)。


あれこれ日がなこんなことに考えを巡らせている内に、GWは終わってしまいました。

参考文献:『西洋たべもの語源辞典』内林政夫 著
     『世界食物百科』マグロンヌ・トゥーサン=サマ 著 玉村豊男 監訳
     『Food's Food 食材辞典』