2007年7月24日火曜日

アルガンオイル(1)


【アルガンツリー(マラケシュからエッサウィラへ向かう道中にて撮影)】
アルガンは、モロッコの南西部にしか生息ない木。

その木の実から取れるのが、アルガンオイルです。

木の実100キロで1リットルしかとれないといえば、その貴重さがよく分かるかと思いますが、石臼で10時間ぐらいかけて挽くのだとか。
オリーブ大の種を割り、その中にあるアーモンドのような仁をそのまま挽いたのがピュアオイル。主にコスメに使われます。
ローストしてから挽くとピュアオイルよりオイルが抽出し易いそうですが、こちらは主に食用として使われます。

こうして取れたオイルは、オリーブオイルの3倍ものビタミンEを含み、かつアルガンの木はその植生故正真正銘のオーガニックであること等から、大変重宝され、大半は、ドイツやフランスへ輸出されてしまい、地元の方も、自分の肌のお手入れに使うことは少ないそうです。
でも、アルガンナッツを挽いて絞る作業を手がける女性達のその手は・・・シミひとつなく美しい!!

市販されているものは、ごまかしモノが多いため、農家を訪ねて挽いてもらうのが確実なんだそうです。
いいモノを手に入れるのには、お金もですが、それ以上に手間暇を掛けなければならないのですね。ホンモノを知らなければ、まやかし品も見抜けないのであります。
楽をしていい物だけを手に入れようったって、ここではそうはいかないのですね。

アルガンの木の葉は、山羊の大好物。木にのぼって(!)ムシャムシャ食べていました。

こんな食事をしている山羊のお乳は・・お肉は・・・イベリコ豚みたくリノール酸いっぱいの脂肪分を含んでいるので高級品だそうですよ。

2007年7月22日日曜日

アルガンオイル(2)アムルー







さて、アルガンオイル(ローストタイプ)の風味は???

ほんのりと香ばしくナッツィーな香りですが、ヘーゼルナッツやピーナッツのようなはっきりとしたナッツ香と異なりちょっと上品で控え目な感じです。

これを使ったお料理を一品ご紹介します。
アムルーAmlouといって、パンに付けるトロトロのディップです。

材料は、皮むきアーモンド 450g、シナモン 小さじ1/2、蜂蜜 300cc、アルガンオイル200cc。

サラダオイルで軽く炒ったアーモンドをペースト状にし、シナモン、蜂蜜、アルガンオイルを加えて混ぜ合わせるというもの。ハチミツは、ラベンダーやオレンジ、タイムの蜜が専ら使われています。

一度トライしましたが、アーモンドのロースト加減やペーストにする行程が微妙です。

アーモンドの油が分離しないように、そして全ての材料が一体化してトロリと仕上がるには何かコツがありそう・・・。これから試行錯誤やってみたいものです。

このアムルーに、アラビアパンを付けながらいただきます。
ハイカロリーなのですが、何ともいえない上品さと滑らかさが、幸せ感をよぶ一品です。




2007年7月10日火曜日

モロッコのミントティー


野外市場にて。
ミント(種類複数)、マジョラム、タイム、コモンセージ、パセリとコリアンダー等々。どれでもひと束1ー2DH(30円ぐらい)。

モロッコの朝は、ミントティーとホブスマグレブ(モロッコの扁平なパン)のコンチネンタルではじまります。

ガンパウダー*(中国緑茶)とミントを煮出して爽やかでしっかりした味のミントティー。

アラビアといえば、コーヒーでは??

そう思う人も多いかと思いますが、何処へ行っても、とにかく家庭ではコーヒーでも紅茶でもなく専らミントティーなのであります。

ですがその歴史は、さほど古くはなく、中国茶を陸路で輸送していた英国商人が、19世紀半ばに勃発したクリミア戦争で足止めされたため、本来イギリスへ持ち込むはずだったものをモロッコで売ってしまったことに始まったとか。(・・とすると、先のブログで書いた「銀と砂糖を交換していた時代」には、ミントティーはまだ無かったということになりますね!)

ミントティーはストロング!

ミントティーを飲んで眠れなくなったというのをよく聞きます(私もありました!)が、これは中国緑茶のカフェイン効果でしょうか。

ミントティーを作っているところを見ると、たいてい小さなヤカンでお湯を沸かし、その中へ中国茶 を加えて煮立ててから、ミントを加えていました。

正式には、煮立てて煎じた中国茶を、砂糖とフレッシュミントをたっぷり入れたバアラド(金属製のティーポット)に注ぎ入れ、それを、1杯150ccぐらいの小さなガラスに注いでサーブします。

熱いものも冷たいモノも、飲み物は専らこのグラス。
カフェでもコーヒーは、「グラスで」「カップで」と、選ぶことができ、地元の人は、専ら「グラスで」(もちろんホット)。

日本茶や中国茶のように、蒸らして茶葉をゆっくり開かせるという発想は皆無。

まあこれは、インドやトルコのチャイも同じですが、お茶の成分もしっかりと抽出され、ストロングになる訳です。

ミントは、たいていスペアミントを使っていますが、現地で"フリオ" と呼ばれる香りが尖って強いタイプのミント(見た目はちょっとマジョラムみたいで小さな葉っぱ)を少し加えたり、"ルイザ"(ベルベーナ)も少し加えたりとハーブをブレンドして使うこともあります。

砂糖は必須。

お客に出すときには、たいてい最初からポットに入れてあることが多かったですが、最近は、角砂糖を添えて出す家庭も少しずつ出てきたそうです。
砂糖は贅沢品。2キロのブロックが、12DH(180円ぐらい)で、こちらの平均所得からすれば、日本人の感覚でキロ400円ぐらいの感じではないかと思います。これが小さな角砂糖に加工されると、更に割高になってしまいます。

沙漠地方の人たちは、特にお茶に沢山砂糖を入れること等、6/27のブログでちょっと触れましたが、砂糖たっぷりのミントティーは、モロッコのおもてなしの心。

これにまた甘いお菓子が付いて、モロッコ人、相当の甘党です。

※「ガンパウダー(Gunpowder)」という名前は、お茶の製造工程で、茶葉を揉捻するときの方法で茶葉が丸く固められ、ツヤのある色になるので、その形状から火薬(Gunpowder)と呼ばれるようになったといいます。

2007年7月7日土曜日

モロッコ 食(3):ガム・アラビック



gum arabic


ガムアラビックは、アカシアの木のエキス。

先のメヘラーズで粉にして、オレンジフラワーウォーターやスパイス同様、香料としてお菓子に使われます。こちらではどこのスーパーでも買えるごく一般的な製菓材料のひとつ。ちなみにお値段は、1パック2g入り(小さじ1弱)で約120円(スーパー価格)。

『Secret of Moroccan cookery』by Fettouma Benkirane には、ガム・アラビックは、咳を和らげる効果があり、喉の粘膜のイガイガ感に効果的だとありますが、直接風邪薬としての効用は特に明記がありません。

メヘラーズで叩くと、ほんわりとムスクのような・・でも花のようでちょっと柑橘類の皮のような不思議な香りがします。

一粒口に入れて噛んでみると・・・柔らかいプラスチックのようで、唾液とも溶け合うことなく、とても食用の素材とは思えませんでした。

10年来のクエスチョンをひとつひとつ解消しながらも、新たに宿題が生まれつつある今日この頃です。

2007年7月6日金曜日

スパイス潰し:メヘラーズ



モロッコのスパイス潰し「メヘラーズ」


モロッコの調理器具で「これは!」と、思わず膝を叩いたもの。
先般(6/26)でちょっと触れた捏ね皿の「グスリア」、そしてこの「メヘラーズ」。
何てったって、よくつぶれるのです!
グラニュー糖だって、粉糖にしちゃうのです。
ハーブもニンニクも、程良くつぶれるのです。
胡麻は・・・やっぱり日本のすり鉢が一番ですね(笑)。

貧乏旅行とはいえども、これは買って帰らなくては!!
そう思って、スークを探し歩きましたが、店主が持ってくるものはいずれも金属テカテカで角もきれいに処理されておらず、そんなだから当然模様も何もなく、何とも殺風景なものばかりでした。
ちなみに、メヘラーズは、これ1ヶ(棒も一緒)で4キロもあります。
飛行機には持ち込めません。(立派な武器になりますので。)

スパイスは、ミルで引くより、やはりこんな道具でトントン叩いて潰したい。
スパイスの香り香り立つ中で、コトコト豆など煮込む・・・。

その国の料理に一番便利な道具があるものですね。

2007年7月5日木曜日

モロッコ: 食(2)


野外市場で売られていたオクラ


現地調達の食材で日本のものを作ろうとすると、何かと勝手がちがいます。

先般の「回教徒餃子」では、白ネギ代わりに西洋ネギのポワロを使い、牛の挽肉も、脂が少ないので、ごま油をかなり多めに加えて・・・・。

トマトとコリアンダーの組み合わせは、モロッコ人なら嫌いな人はいないはず。この2種をさらに加えて、かなり野菜たっぷりの餃子に・・・・。

そして、餃子の他に1点加えたサイドディッシュがオクラのゴマ和え。

インゲンでもよかったのですが、オクラは丁度出回り始めた旬の始め。気持ちも新鮮だろうとこちらにしたのでした。

この短くて太い、毛深い、硬いオクラ。

丁度枝豆みたいな手触りなので、枝豆を茹でるみたくしっかりともみ洗いしてから茹でることにしました。・・・が!? 依然毛深くチカチカ・・・。長めに茹でたら大丈夫かしら)))。

熱湯煮え立つ鍋の中へ放り込んで、

ーーー3分。まだちょっと硬いな・・・。

ーーー5分。まだ毛がピンピン・・・。

そうしているうちに、パスタを茹でるような大きめのクスクス鍋でを使っているにも関わらず、ゆで汁はどろどろになっていくではありませんか。

す・・・すごい。なんてチカラのある野菜なの!?

日本のオクラが長芋なら、モロッコのは自然薯級なのであります。

モロッコのスパイスつぶし「メヘラーズ」で突くようにして胡麻をすります。

銅製で重い擦り棒は、なかなか機能的な道具ではあるけれど、胡麻を擦るのは結構大変(笑)。

ともあれ、なんとかオクラのゴマ和えが出来上がりました。

こちらの野菜は野生的で濃い。

「モロッコの料理は煮物ばかり」という人も多いし、確かにそうなのだけれど、それは野菜がしっかりしていて濃いからでもあるように思いました。地の野菜が最も美味しく食べやすい調理法が生まれるのね。)))

人参らしい人参、豆らしい豆・・・曲がったキュウリにデコボコかぼちゃ、ズッキーニ・・・、甘味も酸味もたっぷりの果物。

食材本来の味を楽しむことができる。

これって最高のご馳走ではないでしょうか。

2007年7月3日火曜日

サヌジュ(ブラッククミン)



Nigella(仏語):ナイジュラ(ニジュール) / Sanuj(アラビア語):サヌジュ。

通称ブラッククミンとも呼ばれています(クミンとは全く異なるものです)。

『LES PLANTES DES MILLE ET UNE NUITS---Rituels de bien-etre au Maroc』によると・・・
"L'huile de cumin noir guerit toutes les maladies sauf la mort" ・・・

”コーランにも「ブラッククミンのオイルは、死以外の全てを癒す」とあり、古代エジプトでは「ファラオのオイル」とも言われていた。" だって。
万能薬らしい。

薬局の方に聞くと、スプーンひと匙程を布に包んで揉んで、それを片一方の鼻の穴を押さえて反対の鼻の穴にあてて匂いを吸い込む。ツーンとキツイけれど、これが頭痛に効くのだそうです。確かに頭がスッキリする感じ。嗅覚からの刺激の効用ってすごい・・・。

煎じたり砕いて軟膏に加えて外用薬に、煎じたり料理に加えて内服薬にもなるようです。

薬香屋で、このニジェールと何種類かの生薬を配合した軟膏を買いました。

極度の日焼けのせいか何かはわからないけれど、手の甲に湿疹ができていたのが、これを塗って一晩で痒みがなくなり、3日間で治癒。なかなかよく効きました(!)。




2007年7月2日月曜日

帰国




旅行と呼ぶには長いけれど、暮らしを味わうにはまだまだ短い滞在でした。

現地でお世話になったFさん&Mさん、Sクン・・・そしてそのご親戚の方々に心より感謝。そして癒し犬リキ・・・ありがとう。

昨日まで私の寝ていた部屋を、クンクン嗅ぎ廻っているらしい。)))

現地で購入した本なども参考にしながら、今後も料理や食文化の話のつづきを書いていきたいと思っています。

写真:帰路のカタール、ドーハーの空港で。

トイレの横に、足洗場がありました。

ムスリムのお祈りの前に手足を清める為か・・・と思いますが、

旅の途中のリフレッシュに、ちょいと足を洗っても宜しいでしょうか??

2007年7月1日日曜日

モロッコ:食(1)




これ(左上のフック)はなんでしょう?


屋上(こちらの家は、ボックス型でたいてい屋上があり物干し場などにつかわれている)の一角、どこの家でもたいていこのようなフックがついています。

これは、ムスリムの宗教的行事、メシュイ(犠牲祭)の羊を裁くときに使うフックです。
頸動脈を切り、血を抜いて、このフックにつるして裁いていくのだそうです。
羊は内蔵から足まで無駄なく食されます。 
一家で1匹。
集合住宅住まいの人は、実家にかえったり一族の誰かのお宅で一緒にやるそうです。
「『かわいそう・・・』なんて言わないこと。」
モロッコ人のFさんが言います。
「みんな命を食べているね。当然のこと。肉でも野菜でも、無駄にせず感謝して食べるだけだよ。」
市場にいけば、ハエを追い払いながら羊肉を売っています。
各部位に切り分けた肉と、足先、頭も並べられています。足先と頭は、皮付き。
茹でて毛をきれいに取り、煮込むと、豚足のような最高のゼラチン質が出る。
頭も同様に・・・。また、脳みそは、白子のようなあっさりとした味で人気の部位らしい。(私はまだたべていません。)スーパーの肉コーナーでは、毛付きのものはありませんが、脳みそや心臓、モツ肉ももちろん売られています。(心臓や脳みそは、人気の食材みたいで、夕方にはほとんど売り切れていました。)

野菜も肉も、食材を素のままの状態で購入する暮らし。

大変だけど、大切なことかもしれません。

写真右下:頭の煮込み。手前の白っぽいのが脳みそ。(at Jama El Funa)