2018年1月31日水曜日

焼き林檎  (12月の教室より)



リンゴのお菓子を食べると、「ウインターホリデー」なーんて言葉が、頭の中で踊ります。
フランス語でリンゴを「pomme ポム」というのは、かなり馴染んでいますが、ポムもアップルも、なんだか弾む響きです。

リンゴは聖書に出てくるほど古からの、特別な食べもの。
なんといっても、アダムとイブが食べた禁断の果実ですもの。リンゴの木は「智恵の樹」としてメタファーにされている訳です。
民話『白雪姫』でもリンゴが出てきましたっけ。あれは毒林檎でしたけど。
ヨーロッパではとっても身近な果物だったことが伺えます。

ところで、ジャガイモのことは、pomme de terre=「大地のリンゴ」といいます。
方や果物、方や根菜。このまったくことなる二つに共通することは・・・
飢餓を救ったということでしょうか。

NYC=Big Apple。ビッグ・アップルとは、ニューヨーク市のニックネーム。
1920年頃に、競馬関係者の間で、NY競馬に憧れる意味で使われたとか、大恐慌時代に失業者がリンゴ売りをしたからとか、ジャズマンが言い出した言葉だとか、いろいろ定説があるようですが、70年代頃に広く使われるようになった言葉のようです。
それはさておき、何よりリンゴは、東海岸へ渡ってきた移民達にとって、貴重な冬の食糧であり、保存食という意味でも欠かせない食べものだったのでした。
感謝祭(thanks Giving)でも、クリスマスでも、祭事でなくても、人が集うとアップルパイなのは、今も昔も変わらないようで。命の糧と宗教的行事が結びつくのは必然的です。

Pomme de terreこと、ジャガイモ。18世紀フランスでは、南米から渡来したジャガイモは、最初は悪魔の食べものなどと嫌われていたのですが、天候不良による飢饉対策に食糧として推進導入された食べものなのでした。
そう、あのルイ16世とマリーアントワネットが、飢饉から国を救うために、ジャガイモ推進キャンペーンを張ったわけです。
ジャガイモの花を髪に飾ったりしていたなんて話もあるけれど、ホントかな。

「糧」であったリンゴはどのように食べられていたのでしょうか?
焼き林檎・・・だったかもしれません。
煮リンゴ・・・だったかもしれません。
いずれにしても、簡単な調理だったに違いありません。

そんなことを思いながら、リンゴのもっともシンプルな食べ方=焼き林檎を作りました。
バターとブランデーを効かせ、ちょっとおフランスに近付けたでしょうか??


2018年1月23日火曜日

大阪市立東洋陶磁器美術館


東洋陶磁器美術館は、東洋陶磁器コレクションとして世界一の量を誇る美術館です。
一見地味でシックな佇まいですが、常設では、国宝級の歴代中国・韓国の陶磁器を時代を追って見ることができ、時代時代の特色や進化が手に取るように分かります。日本の陶磁器の移り変わりも、それらとと照らし合わせて確認でき、何度行っても新しい気づきがあるのです。
企画展では、北欧展や、バカラ展、20世紀の人気デザイナーの作品展なども。

そんな幅広〜〜〜い守備範囲の中から、今年一番は・・・

「唐代胡人俑ーーシルクロードを駆けた夢」(中国甘粛省 慶城県博物館所蔵)
http://www.moco.or.jp/exhibition/current/?e=440


唐代の墓地から出土した、胡人俑(陶製人形)。
胡人とは、ソグド人など、漢民族ではない異民族のこと。
ソグド人は、シルクロードに於ける交易の主役として知られるイラン系の民族。その活動域は、オアシス国家を繋ぐに留まらず、大規模なキャラバン隊を形成して東西の文化流通を担っていた人々です。
唐代には、ソグド人の活発な経済活動を抱き込むようにして、これまでせめぎ合いを続けてきた遊牧民族をも融合した統治が進んでいき、胡人の漢化も進んだといいます。

引き出しの少ない私は、ソグド人というと、すぐに安禄山を思い浮かべます。
青い目で、背が高く、力持ちで忠実だった安禄山。玄宗帝の時代、複数の軍隊を任され、国境警備などに当たり出世していきましたが、楊貴妃の寵愛で勢力が増した楊一族が、徐々に幅を利かせるようになり、宰相となった楊国忠(楊貴妃の従兄)との対立が深刻化。安禄山の身にも危険が迫るほどになっていったのでした。
そんな玄宗帝の治世を憂いて反乱を起こし、混乱の制裁は楊貴妃に及んだ・・たというのが、楊貴妃を取り巻く物語としても語られています。
楊貴妃を死に追いやるきっかけとなった安禄山の乱。その安禄山は胡人=ソグド人だった。(正確には、ソグド人と突厥人のハーフらしい)

この俑のような風貌だったのでしょうか??
力強く頼もしい姿に作られている胡人俑は、この時代の活躍ぶりを物語るかのようで、これはまた、歴史・心の旅に誘ってくれそうな展示ではアリマセンカ??

展示は3月25日迄。
私も期間内のどこかで行きたいと思っていますが、大阪方面にお出かけの機会がおありの方、是非是非♪
ささやかな知識でも、ちょっとずつイメージとリンクさせて、リアリティーのある知識に変えていきたいな。




2018年1月14日日曜日

オーボンヴュータン ピティヴィエ


ピティヴィエ(Pithiviers) とは、パリから真南へ約90Kmのオルレアネ地方にある町の名前。そこに残る伝統菓子がコレ。
ザックリ言ってしまえば、アーモンドクリームフィリングのパイです。
最初は挽いたアーモンド入りのサブレにフォンダン(お砂糖のアイシングのようなもの)を掛けたお菓子をそう呼んでいたのが、17〜18世紀にパイ生地が生まれて以降、こういう形になったのだそう。

シンプルなものほど実は難しい〜〜〜。
バター、バター、バターの国、フランス。バターを練り込んだパイ生地の仕上がり(焼き加減、膨れ加減)、フィリングとの絶妙な水分バランスが、このお菓子の難しさでしょうか。そして、こういうお菓子には、作り手の「美味しさの美学」みたいなものが見え隠れするからたまりません。
フランスの国家最優秀職人を決めるコンテストで題材にされたりするのも、このお菓子のそんな所以からでしょう。

お菓子然り、ワイン然り。フランスの底力は、伝統を守る仕組みや精神が根付いていることと、しみじみ思います。過去を踏まえて前へ進むところは、国としての成熟さを感じさせます。

9年間もの海外修行で伝統の魅力にガッツリ浸ってきた河田勝彦氏のお菓子。秀逸でないはずがありませぬ(!)。

河田勝彦氏率いるオーボンヴュータンさんのピティヴィエ。
アーモンドフィリングとパイ生地の一体感と、意外に控え目な甘さが印象的でした。



2018年1月13日土曜日

鉄鍋

Before and After
2018年 料理教室がはじまります。
事始めは、庖丁研ぎに鉄鍋掃除。
家庭の火力だとちょっと時間がかかるけど、鍋を焼き切ってキンキンに。(写真はまだ8割・・)
鍋をゴタクにひっかけて、縁の焦げ付きを焼き切ります。

鉄鍋で料理すると、テフロンでは出せない香ばしさが加わり(きっと鉄分も加わり)、「たかが白菜炒め」が、メインディッシュを凌ぐ美味しさに。

年末に井桁シェフの飄香(ピャオシャン)でランチをしました。
その時のスープに、香ばしい白菜が♪
加える前に鍋で焼き付けて香ばしさをプラスする一手間がなされていたのでしょう。

香ばしさは、火を使う人類の専売特許。
鉄鍋を大いに活用して楽しみたいものです。

玉子焼きだって、鉄で焼くゾと、今年の意気込みです。オー!


(before)
(after)



(before)


(after)


2018年1月12日金曜日

鳳梨酥(フォンリースー)パイナップルケーキ


鳳梨酥は、台湾の郷土菓子。

本来は、他の多くの中華菓子同様、油脂はラードを使い、アンを包むというもの。
ラードを使うと、サクサク感が、「酥」(=サクサクの食感を現す語)の文字により相応しいものとなる気がするのです。脂の分子の大きさの違いからか、ザラッとしたサクサク感は、ラード独特の食感。沖縄のちんすこうも、サブレとは一線を画す個性がありますが、これもラードの仕業でしょう。
そして、アンには、台湾パイナップルと、冬瓜の砂糖漬けを煮たペーストを合わせたものが入ります。冬瓜が入ると、ねっとり感が出てグッと東洋的になる気がします。
皮のサクサクとの対比がお互いを引き立て合って、お饅頭でもなく、タルトでもない、いや、お饅頭でタルトな「中華菓子」なのです。


微熱山丘 (SunnyHills)の鳳梨酥(パイナップルケーキ)は、そんな従来のスタイルを一掃した新しいお菓子。
皮の油脂にはバターを使い、アンは台湾産のパインのみをたっぷり。(1ケに1/8ヶ分のパイナップルを使っているらしい)更に、形もレンガ型。
お皿に乗せると、用の東西を問わないのマルチぶりが実感できます。


私は、オーソドックスな鳳梨酥も大好き。
でも、こちらを頂くと、時代の流れを感じ、変化をゆったりと受け入れる気持ちにもなるのです。

そうそう、お茶。
台湾のお菓子には台湾茶??
「地元の料理には地元のお酒が良く合う」なーんて言ったりしますが、そう簡単ではなくなっているのがクローバル化の時代なのだ。

バターの繰り出すどうしようもない主張。
バター殿、アナタのアグレッシブさが、巻き起こす様々なお菓子の変革に、茶飲みババアの私めは、いつも悩まされておりまする。

SunnyHills青山店では、台湾烏龍茶と共にティーセットで出してくれますが、私は俄然、ダージリン1st フラッシュとペアリング。
「紅茶」と呼ぶには明るすぎる色だけど、明るくも冬の間のエネルギーが詰まった一番茶のパンチ(!)。この新・鳳梨酥をエスコートするに相応しいお茶だと思っています。



お皿:設楽 享良
猪口:崔 在皓(チェ・ジョホ)



2018年1月4日木曜日

あけまして おめでとうございます

2018年、ワンダフルな一年にしたいですねえ♪

今年も どうぞ宜しくお願い致します!