「冬虫夏草は悲しい。冬は土の中で過ごして、夏はキノコになってしまうんだから。」
『宮廷女官チャングム』の23話に出てきたセリフです。
このセリフにある通り、冬の間、虫(コウモリ蛾の幼虫)が、地中に潜伏している間、寄生した冬虫夏草属の真菌(コルディセプス・シネンシス)にジワジワ養分を吸い取られ、夏になる頃にはすっかり体を乗っ取られて“草” =キノコになってしまうというもの。
この菌は、他の虫にも寄生することが可能なのだそうですが、チベットの標高3000m以上の高山に生息するコウモリガの幼虫に寄生したものが群を抜いて優秀な成分の冬虫夏草になるらしいのです。動植物性両方の生薬の良いところを集約した稀少な中医薬。その効能も、滋養強壮、疲労回復、諸病治癒、不老長寿....と、かなりの万能ぶり。
古くは仙人の食べものという位置づけで道教思想とも深く結びつき、五行の自然哲学が生まれる過程でも一役買っているらしかったり、かの秦の始皇帝の為の不老長寿の薬草を捜すという徐福伝説にも関わりがあるとされていたりと、冬虫夏草伝説は、紀元前まで遡ります。
時代は下って唐代、楊貴妃におぼれた玄宗帝が不老の為に、かたやその寵愛を受けた楊貴妃が永遠の美の為に冬虫夏草を重用したとか。楊貴妃は冬虫夏草がとれる蜀(=現在の四川省・雲南省辺り)の国の出身なので、楊貴妃がもたらしたとも??
近代では、清朝全盛期の6代皇帝乾隆帝(在位60年間、88歳で逝去!)もご愛用であったとか。
記憶に新しいところでは、1993年の世界陸上〜そして2008年北京オリンピックで、中国が驚異的な成績をあげた影に、冬虫夏草(とスッポン、亀)に支えられた過酷なトレーニングがあったというのが話題になりました。
冬虫夏草はドーピングにはなりません。そのままで、素晴らしい万能サプリぶりを発揮してくれる “食材” なのでした。ですが、天然の冬虫夏草は1キロ百万円以上(!)。(この数値は産地によっても異なり暫定的なもの。現在日本に冬虫夏草の輸出は行われていないみたい。)選手への処方は1日分だけでも相当な額になるので、これはもう国家の威光をかけてのプロジェクト・・・!
ともあれ、何時の時代にあっても、とても庶民には手の届かないスーパーフードなのでした。
ああ・・・(溜息)。
でも、世の中には、溜息をつくだけではなく、先に触れたように「他の虫でも可能」なキノコなので、類似品の培養に果敢にチャレンジしている人達もいらっしゃるようです。
「さなぎだけ」はそんな一品。蚕のさなぎに寄生させて作られた「サナギダケ冬虫夏草」。蚕も蛾の幼虫。なるほど、なんだかイケそう(!)。
成分は自然採取のコウモリガ冬虫夏草には遠く及びませんが、それでも癌細胞に有効なβグルカンやナチュラルキラー細胞を活性化するホルモンのメラトニン、アガリスク茸に含まれることでしられる腫瘍壊死因子、活性酸素の除去に効果がある成分等々を含む冬虫夏草を作り出している研究所が国内にも複数あるようです(!)。
4年後の東京オリンピック、国産冬虫夏草の摂取で日本選手が大活躍!!・・なーんて、ことが起こったりして!???
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夏草花(乾燥さなぎだけ) |
品名:「夏草花」
原材料名:「乾燥さなぎだけ」、中国産。
名前に「虫」がないのにお気づきですね(笑)。
これは、虫で培養したものではなく、虫に類似の成分を添加した培養基で製造したもの。
ひょっとしたらまがいモノ系(??)....かもしれませんが「虫で培養していません」と、名前で表明しているところが潔い(笑)。
5千年に遡る伝説にまで触れたからには、最後はホンモノの冬虫夏草の薬膳スープなどでしめたいところですが、小市民の私には、高値の花。今のところは夏草花で、冬虫夏草の疑似体験と参ります。ゴメンナサイ。
ともあれ、歴史は古く、研究は新しい食薬なのであります。
ちなみに、含有成分の有効性は、現代科学によって分析、立証されています。
なかなか充実した成分ですが、続けて食することで初めて諸々の効果が見込める長期服用型(=冬虫夏草が沢山必要)でもあることを付け添えておきます。
ということで、夏草花を楽しみつつ、高貴薬をもとめるより、ごくごく普通の日々の食事からでもしっかり栄養吸収できるよう、胃腸の機能を高めることを心掛けるとしましょう。
だって、「薬より食事」っていいますもんね♪
■冬虫夏草
性味:温〜平・甘 / 帰経:肺・腎
補益 助陽類 益腎補陽 滋陰補肺 止血化痰
原産地・主産地:チベット、中国四川省、青海省、湖南省、雲南省など
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マカオのカジノホテルのブティックで売られている冬虫夏草。 カジノで圧勝しないと手に入らないってこと(笑)?
こちらはホンモノ、チベット産のようです。 |
人参、田七人参、冬虫夏草・・・高貴薬の棚か!?
冬虫夏草、手のひらに乗せた量が1万円以上であえなく退散でした。 |