「ロスト・キング 〜500年越しの運命〜」(於・サロンシネマ)を観てきました。
“キング”とは、リチャード三世のこと。イングランド王位継承を巡る内紛 薔薇戦争の渦中の人。そしてプランタジネット朝(ヨーク家)最後の王。
後世のシェイクスピアの戯曲で悪役に仕立てられたものだから、長い間すっかり嫌われ者の王となっていたのでした。
悪人のイメージは、二人の王子(甥)をロンドン塔に幽閉し密かに殺害したのでは?との疑惑があること、そしてシェイクスピアによる設定「せむしの醜男」により、体だけでなくコンプレックスによる性格の歪みがあるとされているから。(1674年には、塔内で、王子たちと思われる二人の子供の頭蓋骨が発見され、何者かによる殺害の事実は明かされている。)
描かれた時代はかなり下るけれど、ミレイとドラローシュの絵画はあまりにも有名。中野京子さんの著書『名画の謎』の表紙になるほど。
【塔の中の王子たち】(ジョン・エヴァレット・ミレイ作) 書かれたのは1878年。 少年たちがロンドン塔に幽閉されたのは1483年。 |
ちなみに、シェイクスピアは、1564年生まれ。
エリザベス1世(1533-1603/在位1558~63)が、織田信長と1つ違いなら、シェイクスピアは、もろ豊臣秀吉と重なる。(重ねる意味は特にないんですがw)エリザベス1世の治政後、イギリスは、革命で王が処刑されるような時代に突入しているのでした。日本は戦国時代。
シェイクスピアが「リチャード三世」の戯曲を書いたのは、実際のリチャード3世没後100年の1592年。
日本では秀吉の朝鮮出兵(文禄の役)の頃。1680年には『リア王』が。黒澤明監督がこれをモチーフに『乱』を製作したことは有名。
別に戦国時代だから・・ではなく、シェイクスピアの物語の普遍的テーマ性にこそその理由はあったのでしょうが、なんだかつい重ねてしまいたくなります。
映画は、歴史好きの主婦フィリッパ・ラングレーさんが2012年にリチャード三世の墓を見つけた(!)という事実に基づくもの。
フィリッパ・ラングレーさんの独自リサーチで浮かび上がるリチャード三世は、真っ当な政治を行おうとする心優しき王でした。お墓の発掘は、そのイメージを以て突き進んだ彼女の信念でした。
2009年には、イギリスの歴史作家フィリッパ・グレゴリーが『ホワイトクイーン』を書き、ベストセラーに。これは2013年にBBCでドラマ化されましたが、その中でも、リチャード三世は、フィリッパ・ラングレーさんのイメージに近いものでした。
この二人のフィリッパが、リチャード三世の名誉回復に大いに寄与したとも言える??!
勝者によって造られている歴史。
世界でも日本でも。
「リスキリング」と盛んに言われる昨今、歴史は万事のそもそも論、学びの一丁目一番地。
常にUP−DATEが大切だなとしみじみ思う次第。
PS:映画によれば、リチャード3世は「疑わしきは罰せず」の原則を取り入れたり、印刷技術のを推奨したりと、実はかなりの名君だったようです。