素朴なものには、作る人とそれを好む人の嗜好が集約されている。
私は常々そう思っている。それが洋菓子となると、殊更に。
カスタードプリン、アップルパイ、シュークリームにフルーツケーキ。
これらが自分好みに仕上がっていたら、無条件降伏で、そのケーキ屋さんのファンになりマス。
アップルパイは、どんな種類のリンゴを使うか、どんな食感に仕上げるか、甘さ加減、焼き色加減等々・・・作り手の趣向がでるのです。
そう、リンゴのお菓子は深〜〜〜いのであります。
リンゴのお菓子といえば、タルトタタン。
アップルタルトから派生した(失敗から生まれた)お菓子らしいですが、強烈な郷土菓子の域かといえば、生まれたのは19世紀末と歴史はそんなに古くない。ロワールのプチホテル「タタン」を経営していた姉妹の失敗から生まれたというのがそのルーツとか。
その話の信憑性はさておき、フランス人はとにかくタルトタタンが大好きなんだそう。タルトタタン協会まであるんだとか。そんなタルトタタンを作っているお店は、フランス滞在経験がある方が多いと踏んでいます。特別な思い入れでも無い限り、何時間も掛けて鍋またはオーブンで煮詰めるあの手間暇をものともしない情熱は生まれないから。
製作工程がもうこれはお菓子ではなく煮物の域!ということなのか、すごいタルトタタンというのは、何故かケーキ屋ではなく、レストランで出会うことが多いです。
忘れられないのは、高田馬場のL'AMITE(ラミティエ)のタルトタタン。
一口食べて、思わず「リンゴの羊羹だ!!」・・・と、発してしまった。
このタルトタタンに出会って以来、私のタルトタタン水準は大幅にUPし、その後、なかなか呻るものに出会えないでいます。
ならば自分で・・!と、年に一度は、がっつりリンゴを買い込んで「リンゴの羊羹・・・リンゴの羊羹・・・」と呪文を唱えながら試みたりもするのですが、これがまた一筋縄ではいかない。
風の温度を頬が感じ、新モノのリンゴを見かけるようになった今日この頃。
ある番組で、フランスのタルトタタン協会から勲章をもらったという大正生まれのお婆ちゃんのタルトタタンが紹介されました。
京都在住の松永ユリさん(94歳)。今はユリお婆ちゃんの指導で、孫娘の若林麻耶さんがかつてのフランス料理屋を引き継ぎカフェでこのタタンを作っているそうです。
松永ユリお婆ちゃん曰く「干し柿のような食感」を求めて・・・(!)。
おぉぉぉ・・・これは・・・これは・・・きっと・・・!!!
そして、ついにゲットしてきました!!!
「プレーンヨーグルトを掛けて、お召し上がり下さい。」
そう言われたけれど、リンゴとバターのコクだけで味わってみるために、その食べ方には小さく逆らってしまった。(ゴメンナサイ)
干し柿の食感・・・足らしめてありました(!)。
随分久しぶりの、呻る美味しさでした。
またしてもタルトタタンの水準がUPしてしまった・・・。
あ〜〜〜〜〜〜・・・タンタン、永遠のタルトタタン。