2017年3月29日水曜日

味覚談 「五味」「六味」


薬膳を作る上で、考慮する「五味」というのがあります。「五味」とは、酸味、苦味、甘味、鹹味(塩味)、辛味の5つで、味によって体への特徴的な作用があるのです。

 酸味には、引き締める作用。
 苦味には、熱を冷ましたり、消炎、解毒、通便の作用。
 甘味には、滋養、中和緩和する作用。
 辛味には、発汗、発散作用、体を温める作用、気血の巡りをよくする作用。
 鹹味には、塊(しこりなど)をほぐす作用、便を柔らかくして排出する作用。

 ・・・といったふうです。

昨今ではこれに、「淡味」を加えて六味とするのが一般的になっています。
刺激のない淡い味わいには、体の潤いを助け、水分バランスを調整する働きのものが多いといわれます。冬瓜やはと麦、菊花、イ草(←生薬なのだ!)などがこれに当たります。
この6つの味「六味」で体の過不足のバランスを整えるのも、薬膳を作る上でのポイントなのです。
科学的なことを、科学的な認識なくしなやかに暮らしに取り入れることができる優しいバランス学だと思います。このバランスは、動的な作用のバランス。

一方、科学の視点は、とても物質的。五味を栄養面でのバランスで考えるアプローチが可能です。

 酸味は水素イオンの存在を、苦みはアルカロイドなどの自然の毒性を察知。
 酸味や苦みは、植物の実が未熟であることを判別する味覚でもあります。
 強すぎる酸味や苦みには要注意であると共に、量は控え目がいいようです。
 甘味は、糖質の存在を判別するセンサー。
 塩味は、ナトリウムなどのミネラルの存在を察知。
 そして5つ目には「旨み」。
 体を構成するタンパク質の原料であるアミノ酸や核酸などの存在を示唆しているととらえることもできます。

舌は本来、人間の動物的センサーで、味覚は生きていく上で必要な食べものや食べない方がよい毒などを察知する能力。進化と共に、酸味や苦みにも利点があることも認識され、それを中和する調味も覚えて、更に味覚も磨かれてきたのだと思います。

そう考えると、ある意味、味覚の発達と共に、脳も発達し、味が及ぼす体への影響もわかってきたと考えられなくも無いです。
陰陽五行説にある五味(六味)は、自然観察による分析であると共に、脳の働きとも大いに関わっているのではないかな〜と思う今日この頃です。

人間の行動範囲が広がったことと同時に、様々な知識も必要になってきた訳ですねえ。))) 食のグローバル化は、これなかなか脳には忙しい時代の流れなのかもしれませぬ。




2017年3月21日火曜日

『ブルゴーニュで会いましょう』



 Premier Cru (仏題)

2014  フランス映画
監督・脚本:ジェローム・ル・メール
脚本:レミ・ブルザンソン
主演:ジャリル・レスペール(シャルリ・マレシャル役)
   ジェラール・ランヴァン(フランソワ・マレシャル役)
   アリス・タグリオーニ(ブランシュ・モービュンソン役)

http://bourgogne-movie.com

ワインを造り伝える人達のちょっと素敵な物語。

「テロワール」という言葉が好きです。
テロワールとは、気温、日照、標高、土壌などの自然条件が形造る葡萄畑の個性のことで、これらがワインに映し出されます。
多くのボルドーワインのようにブレンドしてしまったら、分からなくなってしまいますが、ブルゴーニュには、特定の葡萄品種、単一品種で造らなければならないことが定められているので、テロワールという言葉は、言わばブルゴーニュワインの代名詞であり、味わいそのものでもあるのです。

映画は、そんなワインのテロワールを嗅ぎわけるような利き酒のシーンから始まります。ワインのテイスティングは、ほとんどが香りを嗅ぐところで識別されてしまうのですが、それは臭覚が味覚と一体化してとらえられるからだといいます。
香道や中国茶芸で「匂いを聞く」ことを「聞香」というけれど、ワインの利き酒はまさに聞き酒。)))

「熟した革」「ドライポルチーニ」「スモーキー」「粘度がある」「石灰土壌のミネラル」「火打ち石」「腐葉土」「インパクト」・・・etc... ワイングラスに鼻を突っ込みながらワインの味わいを表現していく主人公。「ワインを描写する語彙を日本人は持っていない」と、どこかの評論が語っていましたが、それが正に風土から生まれた言葉故でしょう。
先祖代々その土地に暮らす人のDNAに組み込まれた感性には、どう逆立ちしても叶わない何かがありますもの。
だから、ワインがテーマの映画には、さり気なくも味わい深い新鮮な言葉が沢山出てくるのです。
『モンドヴィーノ』(2004) では、醸造家の哲学が満載のグローバリゼーションへの提議がテーマでしたが、『ブルゴーニュで会いましょう』はワイン作りを守ることと家族、言わばDNAに組み込まれた"テロワール" についてのドラマ。

「(息子の罪について)父と伝統に背いた」
「伝統を捨てたら骨抜きになる」
「(ワイン造りに大切なことは)他のまねをしないこと、辛抱と忍耐」
「この土地で尊いことが二つある。ワインを造ることと、伝えること」
「革命以来所有してきた畑」

あとはもう、名優たちの名演技がこれ以上ない言葉になっています。
あ、それからブルゴーニュでの完全ロケという絶対的オーラ。

伝統とは、土地との結びつきの強さがあってこそなのですね。


コート・ド・ニュイの風景の中に浮かぶシャトークロ・ヴージョ(Clos de Vougeot ) は、ちょっと懐かしい思い出の場所。
20世紀になってからワイン利き酒騎士団の所有となり、平たく言うと、ブルギニオン(ブルゴーニュ民)の公民館みたいな拠点にもなっている。イベントの仕事でディジョンに滞在したときの会食パーティーでは、中世の風情漂う石造りの空間があっという間にレストランになり息吹が吹き込まれ、騎士団の歌や踊りの演出が・・・♪ 思えばあれも、ブルゴーニュという土地の、どうしようも無くスゴイ説得力なのでした。

先の『モンドヴィーノ』で出てきた醸造家の言葉に、「ワインは、造る人に似るのよ」というのがありました。ドメーヌ・マレシャルのワイン、きっと主人公のように古くて新しくて強い意志を感じられるブルゴーニュらしさに溢れた魅力敵な味わいにちがいありません。

そんなワインをいただいて、自分を一喝したい今日この頃。
自らのDNAに眠るアイデンティティを目覚めさせてくれる美酒となるかもしれません。

※ちなみに、映画はドラマですが、マレシャルは実在している(クロード・マレシャル)けれど、父親から畑を譲り受けた訳でもなく奥様もブルギニオンではないらしいけど、ブルゴーニュらしいワインを生み出している作り手のひとりとか。


さいなら〜〜(淀川さん風に)


2017年3月14日火曜日

4月の健美膳

生薬に親しむ(1)
~養血養肝の巻〜

ストレスを受け止める肝。新しいスタートは、楽しくも嬉しくも何かと知らず知らず負荷をかけているようです。食で肝のキャパを広げ、サポートしましょう♪

  内容
    ○冷製アワビの肝ソース 前菜プレート
    ○何首烏煮卵
    ○野菜料理
    ○筍ごはん(?)
    ○健康ジュース
    ○美味しいお茶

日時:4月1日(土),2日(日), 19日(水) 10:30〜14:30