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2024年1月1日月曜日

謹賀新年 2024



明けまして おめでとうございます

古代…紀元前2世紀頃迄の龍には足が無い。

中華民族の始祖・伏義と女媧が蛇身だったことが、龍の原形とか。
伏義と女媧は、古事記のイザナキとイザナミのような存在。
中華民族のトーテム・龍は、やがて鹿の角、牛の頭、大蛇の体、魚の鱗、鷹の爪が備わり最強となり、地上の天子 皇帝のシンボルに。
・
さて、日本。
龍の、雨をもたらすパワーは、瑞穂の国 日本でも畏敬の念を以て崇められて久しい。
十二支の辰は、12のサイクルの中で植物のピークの時期をあらわすのだそう。

こんなスケールで、こんなロングスパンで想像の世界を展開し、あらゆる事象を宇宙の摂理から導き出そうとした古代人の、なんと伸びやかなこと(!)。

そしてそんな中から、陰陽五行説が生まれました。


自然観察から生み出された陰陽五行説。
身体感覚の構築から生まれた中医学。

AIにはできない諸行です。

自分の体と向き合うのは、医者でもAIでもなく自分です。


一見、合理性で洗練されすぎる(?)便利すぎる(??)世の中ですが、生身の人体は、伝説の頃から殆ど変わっていません。


中医学、薬膳の学びは、やはり原点だと、改めて思う今日この頃です。



  今年も、どうぞ宜しく お願い致します。


 

2023年8月31日木曜日

愛玉子 オーギョーチ

朝ドラ、今週のタイトルは「オーギョーチ」

 愛玉只/愛玉子(オーギョーチィ)

万太郎が台湾から持ち帰り、寿恵子が始めた渋谷の茶屋で売り出し知られることとなった台湾スウィーツ・・・な〜んて展開になったら面白いけど、これはウソです!

でも、そんなストーリーがありそうなお店は実在します(!)。
根津に(!!)。

“ところてんの如き、怪しげな、食いもの” と、戦前戦中のコメディアンでエッセイストの古川緑波は食エッセイ* に記しているけど、「カンテンイタビ」とも呼ばれる植物なのでした。

種からとれるペクチンで固まる植物性のゼリー。
今では、バジルシードとかチアシードの方がすっかり有名ですが、それらと同様に、種が備えた濃厚ペクチンで固まるゼリーなのです。

レモン果汁とシロップをかけるのが定番の食べ方。

ポン酢を掛けて、ところてんのように・・・とはいかなかったのは、その弾力のせいかも。
ぶよん♪とした食感は、かみ切れる寒天でもなく、口溶けるゼラチンでもなくなんともいえません。

台湾で、発熱した万太郎は、この愛玉子の解熱・解毒の効能により救われることになるのかな。
この植物の原産地は、台湾烏龍茶の名産地 台中の阿里山辺り。
本日の万さん、阿里山を探索中だったか・・?!


台湾が日本の統治下となって、日本では台湾茶の喫茶も流行った時期があるというのは意外でしたが、このオーギョーチィも、その流れの中で、日本に紹介されたもののひとつだったにちがいありません。









*『ロッパの悲食記(ちくま文庫)』(1995年)
浅草を本拠地にコメディアンとして出世した古川緑波)
 

2023年7月3日月曜日

冬虫夏草 “Cordyceps”


“Cordyceps”

コレ、冬虫夏草ではないか!
ついにサプリに?!
生薬のお値段を知っていると、この値段にはちょっと「ほんまかいな?」と思ってしまう。
(本物は・・・イモムシ数本に万のお値段が付きます!)
・
冬虫夏草
 性:温 味:甘 帰経:肺・腎  
 益腎補陽 滋陰補肺 止血化痰 
子囊菌類のきのこの一種が青海省、チベットなどの標高3000m以上に生息しているオオコウモリガの幼虫に寄生し、幼虫を栄養分として菌糸を伸ばす。
古より不老不死、強壮の妙薬といわれてきた生薬で、手作業で採取される。
(チベットの貴重な収入源!)
昨今の成分の解析によると、ミネラルも豊富で、きのこなのにタンパク質も含まれるという。
血管や気管支拡張作用、動脈硬化改善の老化予防に役立つ成分、抗ガン作用、免疫増強作用、運動機能向上、疲労回復に役立つ成分が多種含まれているらしい。

本来、このオオコウモリガの幼虫についたもののみがこの効能に相応しいものとされているのだけれど、オオコウモリガ以外の様々な菌床でも培養できるので、サプリはきっと培養されたものが原材料のものでしょう。
蜂の子にはじまりイモムシ(幼虫)の栄養価の高さは、周知のこと。
そのイモムシの栄養を吸いこんだキノコと人工の床で培養したものは、同じはずはないけれど、それでも近いものができるのでしょうか。日本でも何カ所か研究所があり、幼虫に限らず様々な虫で培養させているのを、植物園の展示で見たことがある。
当然、床が違えばキノコの成分にも違いが出て、中には食べてはいけないものも(!)。

冬虫夏草は、イモムシ部分にも栄養がのこっているので、エキスではなく生薬まるごといただくのがいいらしい。

高価であることが知られているので、中国では薬膳料理にあえてそのままの姿を留める調理法で供されますが・・・コレ、少々グロい・・ですw

ともあれ、本物には手が出ませんし サプリの是非は不明なので、地道に日々の食事で養生するとします。
 

2023年6月1日木曜日

「梅雨」  梅と稲作と

 「梅雨」

やっぱり早かった。梅雨入り。
早速梅雨らしいお天気の今週。

そうそう、「梅雨」と言えば、昨年は古典の先生に大変興味深いお話を聞かせて頂いた。
古は、この雨の季節を「梅雨」とは言っていなかった…と(!)。

梅は中国から伝わった果実。
しかも、烏梅(ウバイ)という燻された黒い干し梅の状態で。
(お薬でした。)
音読みの「烏(ウ)」+「梅(メイ)」でウーメイ→「ウメ」と呼ぶようになったのが日本の「うめ」。

 
梅の季節の雨だから梅雨♪
梅雨の間、梅を漬けて、晴れた日には天日干しして・・・
そう、「日本はお米と梅干しの国さっ!」
な〜〜んてね。
そんな感じで思ってましたよ。ずーっと。
でも、違いました。

 
瑞穂の国では、梅ではなく、あくまでお米、稲なのです(!)。
梅雨の雨は、五月雨(さみだれ)。
「さ・み・だれ」は、「早・水・垂」。
この「早(さ)」は、稲の苗のことなんだって。
五月(さつき)は、早(=稲の苗)を植える時期だから「五月(さつき)」。

穀類の栽培が大きな集団・国の始まり。
そういっても過言ではない世界の歴史いろいろ。
日本は全てが米で回っていたのです。
それで、何故「梅雨(バイウ)」かって??
梅(バイ)は、黴(バイ=カビ・毒のこと、黴菌)の差し替え文字だったんだって。
同じ発音でより縁起のよい文字を当てがうというのは、中国でも日本でもよくある文化。
それをやった訳ですね。
漢字圏ならではの気の効いたことばあそび。
でも、元の文字は侮れません。
カビに気を付けてお過ごしあれ〜!との警告も忘れずに。
猛暑前に、エアコンのカビも、なんとかしたい))))。
写真は烏梅。


2023年3月30日木曜日

バイマックルー コブミカンの越冬、そして・・・♡


 秋口からポロポロと葉っぱを落とし、ついにハゲチョビンになったコブミカンの木。氷点下の日にはお家に入れてあげるため、かなりザックリ剪定し、ちゃんと生きているか心配だったけれど・・・

生きてました!!

こんなに新芽が♥

ういやつ。

今年も、トムヤンクンを始め、香り高いお料理が楽しめそうでアリマス♪


2023年1月28日土曜日

海参 なまこ



海参=なまこ。

「なまこ」で変換したら、「海鼠」が出てくるけど、中国語では「海参」と書く。
「海の人参」とは、海鼠よりぐっと体に良さそうな字面ではないか。
意外かも知れないが、ナマコは体を温める食べ物。
冷えだけではなく老化による諸々の症状(専門用語では腎虚)に良いとされる。
このことを知って以来、冬の間はなまこを積極的に食べるようになりましたw
本来瀬戸内は、酢なまこがお正月の定番という家庭もあるくらいなまこ食い♪
焙じ茶で洗って大根おろしで和える。
ポン酢でいただきます♪
こーゆーのには日本酒が必須♡

加熱調理する方が消化にはいいそうだが、日本では専ら膾としていただきます。

友人に、なんとナマコをステーキにして食べるという輩がいる(!)。島育ち&なまこの産地育ちの彼女は「騙されたと思って、やってみて♪」と、推してくるが、ゴメンナサイ、未だ挑戦しておりません。
彼女の生命力に溢れて元気な様子に、「確かにナマコは体にいいのだな」と、大いに説得力を感じるところ・・ではあります。

さて、中華版ナマコですが、 中華の干しナマコは、フカヒレ、鮑、貝柱などと並ぶ高級乾貨(ガンフォ)。「貨幣に匹敵する価値を持つもの」なのでした。
5−6日かけて戻してじっくり煮込んでとろっとろの逸品に。フカヒレや鮑の上海煮込みと一緒に盛られることもあります。一皿のお値段は、この下ごしらえの大変さに因るかと思われます。
一旦干すことで生まれる独特の食感も、このお料理の美味しさ。

膾もいいけど、中華の煮込みもたまにはいただきたいものです。

● 海参
性味 / 帰経:温・鹹 / 心・腎(肺)
補益類・助陽
補腎壮陽・益精療痿:性機能低下 冷え 頻尿
養血潤燥・温腸通便:咳 喀血、貧血 不眠症 多夢 血虚、陽虚の便秘に




2022年11月28日月曜日

ツッカベッカライ・カヤヌマのレープクーヘン

ツッカベッカライ・カヤヌマへ行ってきました。

ツッカベッカライ。なんだか日本人には馴染みの無い響きですが、ドイツ語でツッカは砂糖、ベッカライはパン屋。つまりカヤヌマ菓子店という、実はあっさりシンプルなお名前なのでした。オーストリアでマイスターの資格を取得した栢沼氏のオーソドックスなこのお店は、永田町と赤坂を股に掛けるロケーションにあり、平日はスーツ族が並ぶそう。

お使い物の「菓子折」を買うお店なら、私には縁は無さそうなのですが・・・

ココ、「レープクーヘン」があるのです!!

私の記憶にインプットされているレープクーヘンは、うっすらアイシングの掛かった丸い黒パンみたいなお菓子で、高級菓子の印象は皆無。でも初めて食べた時、何ともいい塩梅のブレンドスパイスの風味に、大いにときめいたものでした♡ 


アイシングのようなクリームたっぷりバージョンのレープクーヘン。

まだ砂糖なんてほとんど無い時代からの、ハチミツベースのスパイスパン(ケーキ?)。それがフランスのパン・デピスに、ドイツのレープクーヘン。ヨーロッパ伝統菓子の代表格と、私は密かに思っています。

レープクーヘン(Lebkuchen)は、ドイツを中心として中央ヨーロッパ各地で作られている伝統的なお菓子のひとつ。クリスマスのお菓子としても知られます。形も大きさも食感も様々で、しっとりと柔らかいものからビスケットのような堅いものもあり、後者はクリスマスのオーナメントとなったりもします。
シナモンやクローブ、アニス、ナツメグ、オールスパイス、カルダモンなどが使われ、アーモンドやクルミなどのナッツ類、レモンピールやオレンジピールなどの柑橘系のミンチが加えられたり、チョコレートなどで風味付けしてあったりします。

名前の由来については、正確には不明ですが、「レーベンクーヘン(Leben Kuchen)」=生命のケーキ」と解釈する説や、「リーブム(libum)=ラテン語でパンケーキ、捧げもののケーキ」が起源とされる説もあるそうです。パン・デピス同様のルーツであろうことを考えたら、前者(!)ってことになりますので私はその説をとります。

アーミッシュのお菓子にもこれと極似のお菓子がありました。今ではハチミツの代わりに糖蜜を使って益々濃厚なお味です。修道院で受け継がれてきたようなお名前でしたっけ。

そうそう、グリム童話の『ヘンゼルとグレーテル』*に出てくるお菓子の家。あれはレープクーヘンなのですよ。

ベースのスパイスケーキ生地にリッチなクリーム(アイシング?)やチョコレートのコーティングがなされているカヤヌマのレープクーヘンは、最豪華バージョンといっていいでしょう(お値段も!・汗)。

下賤な事を申しますが、一口100円以上!?? 

あ〜〜しっかり味わおう!


*「ヘンデルとグレーテル」は、グリム童話に収録されている作品。
初版は1812年で、様々な書き換え付け加えの末、現在に伝わるのは1857年版のものらしい。
原作では、お菓子の家は、壁がレープクーヘンで、屋根は菓子類、窓は透き通った砂糖(飴?)で出来ていた記述があるそう。
ちなみに、この物語の時代背景は、中世ヨーロッパの大飢饉(1315~17年)の頃で、口減らしに子供を森に捨てたりしたことが題材となっています。



2022年11月13日日曜日

薩摩のさつまいも

 薩摩のさつまいも「蔓無源氏」。

サツマイモの歴史は、意外に浅い。
ルーツは熱帯の中南米。
いわゆる「大航海時代」の15世紀末にヨーロッパへ紹介されたものの、気候条件が合わず、その後植民地とされた東南アジアの地へ持ち込まれて世界に広がったという。
日本へは、江戸時代初期に、中国から琉球、薩摩に伝わったらしい(だから「唐イモ」とか甘藷とと呼ばれる)けど、もうちょっと前にポルトガル人が持ち込んだりしてなかったのかな??
ともあれ、そんな頃から生き残ってきた在来品種なのか元々お芋が日本に居たのか、100年前に見つかった「在来品種」なんだそうだ。

見よ、このデコボコ姿!

品種改良されていない感満載デス。
まずは焼き芋に。それから良しなにはからうことにしよう♪



2022年4月3日日曜日

「共命の松」

 本日、お花見日和=チャリ日和。

爽やかな春の日差しに誘われ、自転車で桜見物することにしました。
花から花への蝶々気分で あっちの桜、こっちの桜・・・。

どこもなかなかの賑わいですが、府中町の水分峡森林公園は少しおちついた雰囲気(写真は入り口付近)。


ここは、4年前の西日本豪雨で氾濫した府中川の水源にあたります。
過去にも大きな水害の記録が残っています。
小さな砂防ダムが作られたのは昭和16年(1941年)のこと。

「大正15年 この地方は大洪水に見舞われた。府中町では堤防の決壊 10数ヶ所延べ3500間(約6300m)橋梁の流失20余 低地部の一帯 が海となり、田畑流失66町歩(約66ha)の被害家屋359戸にのぼり (当時の戸数800戸)余、人口3,700人であった。          大正15年の洪水による山林荒廃地の砂防施設工事を内務大臣に陳情、 昭和14年旱害による応急対策施設に字石ころび谷間の溜池新設を   議決昭和16年 県 水分峡堰堤工事が完成した。(府中町史から)」


川沿いの桜に添って上がっていく道中には、土嚢が積まれ、未だ復旧工事中のところがあちこち見られました。
この公園やキャンプ場も、ついこの前まで立ち入り禁止になっていましたが、今日は少し入れるようで、行楽を楽しむ人の姿もちらほら。。。

かつては稀少植物もみられた山道も、洪水と、人の手がこう入るともう「自然」では無くなりますが、仕方ないですね。)))

さて、その水分峡への道の麓にある龍仙寺。
ここには、樹齢600年を越える「共命の松」が鎮座しています。

元々は盆栽だったそうで、盆栽として100年以上、地に移されて500~600年といいます。
龍仙寺の創建は、1521年。室町時代。その時に、移植されたそう。
なるほど、盆栽のまま大きくなったみたいな風貌。

青々しい松葉に代謝活発 パリッと松皮。
まだまだ生きる宣言が聞こえてきます。


愛でて麗しい松ですが、松には救荒植物、薬草の顔もあるのです。
「救荒植物集説」* にも掲載されているそうです。

その昔、飢饉や兵糧攻めで飢餓に陥った際には、松皮を粉にして食べたのだとか。
そういえば、昔の大河ドラマ『黄金の日々』で、市川染五郎(現・十代目松本幸四郎)扮するスケサが、秀吉に兵糧攻めされる城で、コツコツ密かに木の皮から団子作っているシーンがあったのを、何故か印象深く記憶しています。
あれは松の木だった(それとも代用で他の木で作ったの)かな・・・??

秋田には、由来の松皮餅というのがあるのだそう。
こちらは団子に松の皮の粉を練り込むのだから、ちょっと贅沢かもしれないけれど、松の皮を食べようとしたきっかけは、北の国の飢饉かもしれないですね。

松は、まさに命の木。
その松葉も薬草。




*「救荒植物集説」/伊藤圭介・述(いとうけいすけ)・賀来飛霞(かくひか)・記
 1884年(明治17年)、シーボルトに西洋植物学を学んだ伊藤圭介が自著「救荒食物便覧」や実験をもとに、その他諸書を参考にしながらまとめ記した。123種の植物について、科名、方言、漢名、洋名、色、形状などの観察、植生、調理方法などが記されている。82歳の高齢であったので、賀来飛霞が執筆したと見られる。
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/112737

 参考:「お松を愛する会」HP:https://omatsu.club/2020/07/18/post-1610/

2021年6月26日土曜日

キムチ論争2  唐辛子談


Bali バドゥン市場にて(2009)

今日は、真っ赤っかなキムチに必須の、唐辛子についてです
。


唐辛子は、15世紀後半までは、中南米にしか生息していかった植物。
コロンブスが、スパニョーラ島(今のキューバ)で唐辛子を発見したのが1493年。
その後、スペイン人とポルトガル人により持ち帰られた唐辛子は、瞬く間に世界中に広がり、100年足らずで、インド、日本、中国、韓国に伝わり、最終的には料理を激変させていくことになるのです。

日本へは、1542年にポルトガル宣教師によって、苗ごと持ち込まれました。
朝鮮半島には、豊臣秀吉の朝鮮出兵(1592年)で、日本が医療用(凍傷予防対策)または「武器」(目潰し用)として持ち込まれたのがはじまりとする説が有力となっています。
こうして伝わった唐辛子は、朝鮮半島でもやはり最初は毒薬扱い。李朝中期に記された百科全書『芝峰類説』(李サイコウ編纂/1613年)の食物部の章には、唐辛子を指す「南蛮椒」「倭芥子」が猛毒として記されているそうです。また、それより少し後に書かれた料理書『飲食知味方』(張桂香・著)に、まだ唐辛子は出てこきていないのだといいますから、まだ食物扱いではないということのようです。
料理に登場するのは、それから更に100年後の18世紀に入ってからで、農書『増補山林経済』にキムチやコチュジャンが紹介されているらしい。それでもまだ、唐辛子の使用料はほんの薬味程度で、今日のような「真っ赤っか」になるのは20世紀に入ってからのようです。
これは、辛くない品種が普及したからかも知れないな。))

唐辛子のことをハングルでは「고추/コチュ」といいます。漢字があったなら、どんな表記になっていたのでしょう? ちなみに、日本の「“唐” 辛子」、「唐」は、歴史的に「外来のもの」というニュアンスで使われていおり、中国から伝わったという意味ではありません。


さて、中国においてはどうか?
古から食医がいて食薬や料理書が折々に記されている中国ですが、食薬書『本草綱目』(明代半ば/1578年)にもまだ唐辛子は取り上げられておらず、文献に出てくるのは、明代末(17世紀半ば)。料理に登場するのは、次の王朝 清代初の園芸書『花鏡』(陳淏子/1688年刊)で、唐辛子のことは「番椒」と書かれているのだそうです。「番」は、日本でいえば南蛮の「蛮」のように外国から入ってきたものを指す言葉(ex:番紅花=サフランのこと)。薬用、または観賞用であったことがうかがえます。
清代全盛期 乾隆帝の子にあたる7代皇帝 嘉慶帝(1760-1820)の時になると、ようやく四川で唐辛子の栽培が始まり、長江流域(四川料理、湖南料理、湖北料理など)の料理に影響を及ぼすようになっていったようです。

中国には、シルクロードという西域との交易ルートあるし、チベットと四川、雲南とは、いわゆる茶馬古道と呼ばれるルートがあり繋がっています。しかしながら、いち早くマカオに到達していたポルトガル人経由で伝わったと考える方が妥当に思えます。

いずれにしても、中国、韓国、日本・・・唐辛子の伝わった時期に大差はなく、それぞれに活用の幅を広げていったのではないかという印象です。

エスニック料理というカテゴリーの料理には唐辛子が必須といってもいいほど定着しています。それは皮肉にも、列強による植民地支配の歴史ともつながっていると言えるでしょう。

唐辛子は、19 - 20世紀になって「スパイス」として料理の中で花開し、食文化に大きな影響を与えて植物なのでした。こうやって見ると、伝統料理の歴史も、案外数 二、三百年程度のものなのですよね。)))
どんな環境にあっても、したたかに、軽やかに、各々のとらえ方でそれぞれの食文化にとりいれていく人々と唐辛子の柔軟性に、深い感慨を覚えます。


参考文献:『世界地図から食の歴史を読む方法』辻原康夫 
     『世界食物百科』マグロンヌ・トゥーサン=サマ
      レファレンス共同データベース
      『香辛料Ⅳ』山崎峰三郎

2021年6月20日日曜日

キムチ論争?!

泡菜擅子(パオツァイタンズ)
老四川瓢香にて撮影

何やら、中国と韓国の間で、キムチの起源を巡って論争になっているらしい。
火付け役は、中国の人気Youtuber李子柒さんによる投稿。 
<#(ハッシュタグ)中国の食べ物>で「キムチ」がUPされているのです。

youtubeも、人口14億の国でヒットすると、白も黒、黒も白になりかねないから、その影響力は侮れませんねえ。)))真実が多数決で決められては、研究者にはたまったものではないでしょう。

何をキムチとして論争を起こしているのか??
見ればYoutubeのそれは、真っ赤な唐辛子入り。
中国側が<中国は、1500年前から云々・・・>と主張しているところからすると、唐辛子が使われるようになる以前からのお漬けもの文化について言及しているようです。
「塩漬けなんて・・・どこの国にもあるじゃないか」と言いたくなる。

中南米原産お唐辛子が世界に広がったのは16世紀以降。
これが唐辛子入りのものについてならこの論争、着地点がありそうなのだけれど、中国が議論の俎上に載せてきたのは「泡菜(パオサイ)」。塩と香辛料、酒を加えた水床で作るお漬けもの。
泡菜は、日本で言えば、糠を使わないぬか漬けのようなもので、乳酸発酵させる一手間で、旨みを増した状態にし、そのままでも、また料理に使ったりする。インゲンなどを泡菜にして炒めると、それはそれは美味しい一品に(!)。

泡菜は、泡菜擅子(パオツァイタンズ)という漬物壺【写真】で作ります。
野菜が豊富な四川省独特のものなのだそうですが、中国各地で使われているみたいです。


キムチの語源は「沈菜(チムチェ)」、または「鹹菜(ハムチェ)」とか。
「沈菜」と「泡菜」。確かに似ています。
陸続きのお隣だし、元漢字を共有していた国同士だもの。
発酵食は温暖な南方が得意とするところ。日本でも、ぬか漬け文化は北九州が盛んです。
もちろん、影響を受けてもいるかもしれないけれど
日本の味噌や醬油だって、あぶない、あぶない。
「味噌は中国のものです」なーんて言われたら・・・やっぱり暴れますw

物事の本質は、お漬けものでは無く、国家間の言いがかりのネタに漬物文化を引き出したようなところが大いにありそう。

こういうことは「諸説あり」でくくるとして、美味しさを共有しようではないか。

せっかくだから、この機会に、赤いキムチに欠かせない、唐辛子のルーツをたどってみるとしましょう。

 「諸説」が気になる方はコチラをどうぞ♪
  ↓

<つづく>


2021年5月5日水曜日

ホロホロ鳥 


「禽」

食用の鳥、こんなに(!)。
鶏にチャボ、鶉にアヒル、鴨、七面鳥にガチョウ・・・ウコッケイもいるね♪
手前右から二番目の見かけないのは、ホロホロ鳥。

アフリカ西部 ギニアあたりが原産の鳥。
日本で唯一専門に飼育している石黒農場(岩手・花巻)さんのホロホロ鳥をお取り寄せしてみました。

赤道直下の地が原産ということで、本来温かい気候が好きな鳥のはずなのだけれど、石黒さんは、東北岩手で花巻温泉の熱を利用してホロホロくんたちをほろっと温かく育てていらっしゃるようで。(NHK「うまいッ!」,「満天青空レストラン」)

味わいの深さは成分の濃さであり複雑さでもあります。
同じ鶏でも、地鶏とブロイラーの味わいはちがうし、野生のセリやクレソンも香の強さがちがい、それは成分の濃さの違いでもあるようです。
ホロホロ鳥は栄養価がとても高く、高タンパク低脂肪、肉の赤身に含まれるミオグロビンは牛肉並み(!)で、ビタミン、ミネラルも豊富。まるでジビエのようでいながら、野生臭はほとんど無い。
このホロホロ、飼育環境はもちろん野生とは異なるけれど、スモークされたお肉(写真)は、まるで豚肉のハムのよう。
美味しいです♡



モモ、胸+手羽、ガラにざっくり解体。

ホロホロ鳥は、ギリシャ・ローマが地中海を制している頃からの食鶏らしいですが、商品に添えられた栞には<16世紀初頭にポルトガル王がローマ法王に献じたとされ、ヨーロッパでも飼育されるようになりました>と(!)。

「献上」ということは、まだ16世紀初頭=大航海時代までは普及していなかったということ。
なぬっ・・・!?
名前には、食材(食肉)のルーツや伝播がこめられていることが多いので、ちょっと調べてみました。
すると、なんとホロホロ鳥は、あの、クリスマスの主役ターキー(七面鳥)と、同じく「ターキー “Turkey”と呼ばれていたことが分かりました(!)。

 
ターキー(七面鳥)中〜北アメリカに生息する鳥。でも、なぜ「Turkey=トルコ」なのか?
そして何故ホロホロ鳥がターキーなのか??

それは、こう。
16世紀、北アフリカを含む地中海沿岸を制していたイスラム勢力オスマントルコ。当時はイスラーム世界からの伝来モノは、トルコと直接関係があるわけではなくても漠然と「トルコの」なんて風に呼んでいたらしい。なんだか私達が国籍がよくわからない外来のものを「エキゾチック」なんて風に言うのとちょっと似てます。昔の人なら「唐もの」とでも言ったでしょうか。
元々ホロホロ鳥は、イスラム圏だったアフリカからヨーロッパにもたらされたので、当時は "ターキー(トルコの鳥)" と呼ばれていたようです。
一方、新大陸---中米に渡ったスペインは、現地人が 「pavo=美しい鳥」と呼ぶ七面鳥に出会い、これをヨーロッパに持ち帰りました(1518年)。
ヨーロッパの人々は、この七面鳥を、ホロホロと同じ種類の鳥だと勘違いしたのか似ているのでそう呼んだのか、通称のターキーと呼んだのだそうです。
つまり、ホロホロも七面鳥も同じ中までターキー・・・と。
この混合があって、それがそのままアメリカ大陸に逆流し、七面鳥をホロホロの呼び名だった「ターキー」と呼ぶようになってしまい、すっかり定着してしまいましたとさ。
- - - とまあ、こういうことらしい。

 ●ホロホロ鳥
  キジ目ホロホロ鳥科。
  原産地:熱帯アフリカ
  和名:ほろほろ鳥(珠鶏)
  ※<江戸時代にオランダ船に乗ってきて、オランダ語の「ポルボラート」が
   なまってほろほろとなったと言われる>(栞より)らしい。
  英語名:guinia fowl(or cock / 「ギニア鶏」の意)
  仏語名:pintade(パンタード=「斑点模様の」の意)
  蘭語:parelhoen


 ●ターキー(和名:七面鳥)
  キジ目シチメンチョウ科の鳥。
  中〜北アメリカに分布。
  羽根は光沢のある青黒色。頭から首にかけての皮膚の裸出部が青・紫・赤等に変化する。
  (七色に変化するので日本語では19世紀の終わり頃から「七面鳥」)
  英語名:turkey
  仏語名:poule/coq d'inde→略してdinde (ダンド= 「インドの鶏」の意
      →(インド産ではなく)西インド諸島で発見されたという意味)
  蘭語:kalkoen(カルクフーン、カラクン鶏 コルカタ(現・カルカッタ)に由来)
  ポルトガル語:peru(=「ペルーの鶏」の意)
  スペイン語:pavo (=「美しい鳥」の意)
  中国語:火鶏(または吐綬鶏)


七面鳥には、斑点模様はないものの、カラフルなお顔に黒っぽい毛の姿は「トルコの鳥」ホロホロ鳥を彷彿とさせるものがあったのでしょう。大きさはずっと大きいので、大型ホロホロ鳥または大型トルコ鶏という感じだったかも。))

また、(イタリア人だけど)スペインの船に乗って航海し、新大陸を発見(1492年)したコロンブス(1451-1506) は、当初、その地をインドだと信じていました。
インドの美しい鳥といえば、クジャクですから、スペイン語の「美しい鳥=Pavo」は、クジャクのことを指すこともあったようです。
クジャクも、食肉とされていたりするようですが、ホロホロ鳥同様、大変栄養価が高いのだとか。更に、孔雀は毒蛇を食べても死なないことから、不死鳥として、ローマ帝国の頃から高貴な方々のお口に入っていたようです。中国でも、クジャクは不死鳥のシンボルで、鳳凰(フェニックス)のモデル。そここそが中国人が孔雀を好んで食す所以なのだとか。
ちなみに「七面鳥」のことを中国語では「火鳥」・・と(!)。


あれこれ日がなこんなことに考えを巡らせている内に、GWは終わってしまいました。

参考文献:『西洋たべもの語源辞典』内林政夫 著
     『世界食物百科』マグロンヌ・トゥーサン=サマ 著 玉村豊男 監訳
     『Food's Food 食材辞典』



2021年4月29日木曜日

オレンジワイン ( 天地人 Friends )






 天地人 Friends(オレンジワイン)。


もちろん果物のオレンジとは何の関係もない。
白ワインは種&皮を取り除いて醗酵、赤ワインは種&皮ごと醗酵させて作りますが、これは、白ワインの葡萄品種を、種と皮も一緒に醗酵させて作られています。
つまり、白ワインのぶどうを使い赤ワインの製法で作られているのが通称「オレンジワイン」。
アンバー色に仕上がるので「アンバーワイン」とも呼ばれているそうです。
旧ソ連支配下で埋もれていた中東コーカサス地方 旧グルジア(現ジョージア)に残る伝統的なワイン製法なんだそう。

昨今、この製法を復活させて作られるワインがちょっと注目を浴びているらしいのです。

中東コーカサス地方といえば、ワインのルーツとも繋がる地。
う〜ん・・・ワイン8千年の歴史の気配がするゾ♡

このテは結構冒険なのだけれど、ルー・デュモンの仲田晃司さんが手掛けているのなら・・!


古きを新しく。

マリアージュ云々と四の五の言わず どんな料理にも合わせやすい気さくさが魅力。
ワイワイ呑みにぴったりなので「フレンズ」。
ラベルはジブリの鈴木敏夫氏の書。

コンセプトが実にスマートですね。流石♪

そんな訳で、GWのおうち時間の為に1本購入してみました。

あ、ワイワイは・・・我慢しまーす(^^;)

PS: 現在、旧グルジア地方は、中国の一帯一路計画で、鉄道突破の工事中。
  この工事が様々な社会問題を生んでいます。
  トンネルが掘られ、自然破壊や労働者問題等々・・・。
  ※NHK BS 世界のドキュメンタリー
  「トンネル建設に揺れる村 〜ジョージア“一体一路の陰で”」
  (2019/ジョージア&ドイツの共同製作)でも取り上げられました。
  


2020年10月7日水曜日

杏仁




 子どもの頃、梅の仁が好きで、父に梅の種を割ってもらって食べていた。

よく漬かった梅は、仁まで美味しかった。

この姿にふとそんな些細な記憶が蘇る。

杏仁(あんにん / シンレン)。

日本語でも中国語でも、なんだかカワイイ響き。

杏も梅も、バラ科のサクラ属(ついでに桃もバラ科で、モモ属です)。

なんとも言えない繊細な芳香に、なるほどバラともサクラともお仲間ですね♪と納得してしまう。


皮を剥き、白い仁からナッツミルクを取って作るのが本当の杏仁豆腐。

節句料理としては、春の食べ物になるのですが、咳のお薬にもなるので乾燥する秋にも作りたい。

芳香をもっと・・♡とタップリの量を使って作りたい気がするけれど、未熟な梅にあるように、杏仁にも毒素の青酸配糖体が含まれており、昔から分量は慎重に決められていたそうです。

10月の教室では、杏仁酪、杏仁豆腐、杏仁酥をお楽しみ頂いています。

2020年8月25日火曜日

茗荷

茗荷を食べるとバカになる!?

バカはバカでも「物忘れ」「物覚えが悪い」類のバカらしい。
お釈迦さまに頂戴した名前が覚えられなかった弟子に、その由来があるといいます。弟子のチューラパンタカ(周利槃特/陀伽(しゅりはんどく/だか)は、授かった名前がどうしても覚えられなくて、名札まで作ってもらってぶら下げていたそう。文字通り、生涯その名(茗)前を「荷」なって苦労したことが由来とか。
この弟子のお墓には茗荷が芽を出したとさ。

この夏、久しぶりに読み返したくなって大人買いした手塚治虫の『ブッタ』。
(昔、親戚のお家にあったのを読んだのですよ)
紀元前5世紀のインド東北部。シャカ族の国の皇子ガウタマ・シッダールタが悟りを開きブッタとなり人々を導き亡くなるまでの、一生の物語。現在のネパール国境付近からガンジス川流域はブッタの祖国を飲み込んだコーサラ国やマガダ国があったところで、ブッタが悟りを開いたブッタガヤ(ビハール州)はかつてのマガダ国領土。
緯度でいえば、台湾と同じ位で熱帯〜亜熱帯だが、山岳地だったり、内陸だったり・・・気候は単純ではなかったことでしょう。茗荷だって生えていたかも知れない(!?)。

茗荷。
なにやら日本語らしからぬ響きと思えてきました。
茗荷はショウガ科の多年草。
インド〜東アジア原産でもあるショウガは、英語でジンジャー(ginger) 。 [ginger] は、サンスクリット語の [sringaveram] に由来する。
http://gogen-allguide.com/si/ginger.html
和食の薬味としても欠かせない茗荷ですが、まさかサンスクリット語のお顔をもっていたりして??

周知の通り、釈迦も如来も菩薩も阿弥陀も、皆サンスクリット語の発音を漢字に置き換えたものだ。なかなか絶妙な宛がわれ方で、サンスクリット語であることを忘れてしまいそうになるが、その響きには、なんともいえないエキゾティシズムがある。


『ブッタ』全巻。三分の二ほど読み進んだけれど、まだ名前が覚えられない弟子は出てこない。

インドの母国語ともいえるサンスクリット語も、インドの大学では第二外国語なのだとか。読める人も書ける人も非常に少ないと聞く。インドのことを学ぶのにも英語が公用語のようになっていることに、労しい歴史を彷彿させる。

おっと、冥加・・じゃなかった、茗荷の話でした。
薬膳では、辛温解表といって、葛根湯の葛根などと同じような効能ーー発汗により外感風寒の邪気を払うーーをもちます。微量ながら、針葉樹によく含まれる香成分 α-ピネンやゲラニオールを含み、これには抗菌作用、免疫機能賦活作用も確認されている他、集中力を助ける働きもある。
これら成分から鑑みると、茗荷はむしろ「もの覚えが良くなる」食べ物ではないか(!)。

素麺に、冷や奴、浅漬けに柴漬け、サラダにも茗荷・・・茗荷を沢山食べたから、いろいろ忘れたw ・・・という言い訳は、もう使えないデスね。。))

この夏も沢山食べたな〜♪

ツクツクボウシも鳴き、秋の気配もし始めたが、食欲維持のためにも、まだこの爽やかな香りの助けを借りたいところ。

あ、なんのかんのいっても、茗荷には年中お世話になってるんですけどね〜♥





『ブッタ』に描かれている風景





2019年8月21日水曜日

「薬食い」と肉食

「ローストビーフ」というより、しっかりめに火を通した「たたき」
ここ数年、毎年夏は、甘い物を控え、おやつにプチローストビーフを少〜し頂くようにしています。塩と蒜を擦り込んで、粗挽き胡椒を塗してあぶり焼きした、「ローストビーフ」というより、しっかり目に火を通した「たたき」です。(この暑いのに、オーブンに火なんていれられようかいw。)

お陰で(たぶん)夏バテ知らず。

6−7年前までは、夏と言えば食欲減退で体重減、だる重〜で。。夏は苦手な季節でした。
いえ、今でも苦手には違いないのですが、付き合い方を心得てきたという事でしょうか。

どうも暑さに弱い方は、痩せ型で胃腸の弱い方が多い気がします。
夏はどうしても水分補給で胃液も薄まりがち。冷たいモノも欲しくなって、内臓を冷やしがち。素麺、冷や麦、冷麺・・・と、つるつるっと頂ける炭水化物に偏りがち。
それら諸々が、少しずつ脾胃に負担を掛け、夏後半に悲鳴を上げるのかもしれません。そもそも体内の消化液も蛋白質から作られるので、夏だって蛋白質はしっかりいただきたいものです。

お店に並ぶ定番は、牛肉、豚肉、鶏肉ですが、この中で、最も脾胃のエネルギーをくれるお肉が牛肉。
牛肉は、補気、健脾、養血強壮の食べ物。内臓下垂にもよいとされています。
高級な霜降り肉ではなく赤身モモ肉などを、トマトや玉葱スライスなんかと一緒に、またはお酢の利いたマスタードや柑橘香る柚子胡椒などと共にさっぱりと頂くと、なーんか元気でいられるのです。

思えば、日本人の肉食は明治維新以降・・・というのは、たてまえで、江戸時代の人も「薬食い」と称し、または「ぼたん(猪)」、「もみじ(鹿)」に「桜(馬)」と隠語で呼んで、禁忌の肉を食していたそうな。それに、鶏肉や卵を食べることには、比較的寛大だったようで(もちろんご馳走だった)。

でも、家畜を連れ歩いて戦争していたヨーロッパの人達に比べたら、やっぱりお肉との距離は遠いのですね。日本人。
蛋白源は、お肉よりお魚だった・・・。
中国も、あの庖丁とまな板を見れば一目瞭然。「肉食」だ〜!あの、斧のような庖丁は、豚骨だってぶっ切ってしまうのだから。
また、あの万里の長城! あんなもので、異民族の侵入が防げたのだろうか???と、長年不思議に思っていたけれど、あれ、食糧の羊が越せない高さになっているのだそう。
米や味噌と違って、"食糧"自ら歩いて付いてきてくれるのだから、なるほど合理的な「兵糧」です。そう思うと、アチラの刀が、斧みたく太っといのも、ちょっと納得できます。

一方、日本といえば、三種の神器のひとつが剣でしょ。
仏教伝来以降、不殺生の教えを、宗教を担う僧侶らに留まらず、一般人までが広く守って来たのですから。 加えて、お肉を食べなくても、お魚があった(!)
刃モノはスーッと細くて美しいものになったのかもしれない・・・。
刺身包丁を見て、「刀みたい〜」と言ってる貴方。刀が「刺身包丁みたい」なのかもしれませんw!??

添付の写真のお肉、薄く削ぐには、刺身包丁が使い良いことw。


2019年8月17日土曜日

『千と千尋の神隠し』 イモリの黒焼きにミミズの干物



夏はアニメ、TVでジブリが恒例となっていますね。
ジブリ映画では『もののけ姫』が一番好き。テーマも、時代も、音楽も。(美輪さんの声も!)
今夜は『千と千尋の神隠し』でしたが、つい・・やっぱり見てしまいました。

一番好きなシーンは・・・もちろん最終の龍(ハク)が迎えに来て龍に乗って帰るところ。そして、腐れ神(かと思われたが実は名のある川の主)が薬湯に入って回復し、帰って行くところ。
能面の翁顔のおじいちゃん神様。お風呂の背景も能舞台みたいです。
要するに、龍の絵が好きなのだ。



龍が河川の神様という設定も素敵です。
水は命の根源。海よりも河川の恩恵を受けてきた中国らしく、その遡る水源は、天空の海とも賞される湖もありヒマラヤ以北に広がる「世界の屋根」チベット高原。
龍は、雲をおこし雨を降らせもする自然界の偉大な水の力。高貴で勇ましく、力強いイメージで、皇帝は龍の子孫とされています。物語の中の川の神様も、そんな中国の伝統的な意識から発想を得ているのでしょう。

春秋戦国時代以前の龍は、足が無い絵が殆どだったそうですが、後世で足(ちょっと鶏っぽい足ですw)が付きました。
映画では、手足が付いた龍です。鬚も長くてエレガント〜。
ちなみに、龍の顔は、ジブリではオオカミのような、どちらかというと犬系のカッコイイ顔にスッとシャープでインパラのような角ですが、中国の伝説では龍は「鹿の角、牛の顔、大蛇の体に魚の鱗、鷹の爪を持ち、口ひげが生え、顎の下には珠がある」姿の生き物とされています。(「鶏の足」という描写はない??)

ファンタジーの中で目一杯シンボリックに描かれた河川の汚染や開発という名の下に行われる自然破壊。「沼の底」駅は、ダムに沈んだ町のイメージでしょうか。
大人の為のアニメはやっぱり深い。


そうそう、釜じいの扱う漢方薬について。

①釜じいがリンに渡した「イモリの黒焼き」

@台北:漢方薬局で


















イモリは、滋養強壮の生薬。
日本では黒焼きが「惚れ薬」なんて呼ばれたりしたらしく、それがアニメの中でも描かれています。中国漢方だとこんな感じ(写真)。

強壮剤なので、雄雌対でくくって売られています。(「黒焼き」にはされていません)
漢方版バイアグラをこんなアニメに偲ばせるなんて、宮崎駿監督、何を考えているんだw。でもこれ、実は『千と千尋・・』は、「少女が娼婦に身を落として親の罪を償う」というのが元々の発想にあり、「湯女(ゆな)」も「娼婦」の隠語なんだという。
エグい設定をファンタジーというオブラードにくるみ、観客に謎掛けしてくる宮崎駿なのでした。

②ミミズの干物入り薬湯。

ミミズは、解熱の特効薬。生薬名は「地竜」(!)。
なかなかカッコイイ名前ですが、これ、オオミミズの乾燥です。
アニメでは粉末を薬湯に加えていましたが、そのままもどして煎じたりは・・・したくないなあ〜。
血圧降下、解熱、鎮痙、利尿、解毒薬としての効能があるといいます。
人間社会の汚物にまみれた神様が「油屋」に清めに来て入る薬湯ですから、生薬もちゃんと解毒のものを選んでいる(!)。 流石!

③苦団子。
何の生薬かは不明ですが、こちらも解毒剤のよう。解毒力のある食べ物は苦味のものが多いのです。同時に熱(炎症)を取ったりもします。

苦団子を食べさせられた「カオナシ」は、食べあさったものをぜーんぶ吐き出して元の無害な状態に戻りますし、龍姿のハクも、苦団子を食べさせて、魔女の印鑑を吐き出します。

昔の人ならこれらの描写の指し示す意味も、すぐに理解できたでしょうけれど、私達には、理解にちょっとワンクッション入ってしまうことも多々あります。
『千と千尋…』は、社会の入り口にいる若者へのメッセージをふんだんに盛り込んだ大人のアニメ。でも、もちろん子供も楽しめる作品。
映画にしても小説にしても、いろいろ盛り込まれていたとしても、見る側、読む側は、受け取れるところだけ受け取って、解るところだけ解ればいいのではないかと思ったりします。
また何年かして見た時、異なるメッセージを受け取ることが出来るーー。
読み返した小説に、違う面白さを見つけることができるのと同じようにーー。
それでいいのでは?

小さな子供に「イモリの黒焼きって何?」て聞かれたら、どう答えよう??
そんな試練もまた一興。大人の試練かも。



PS:先のブログ、三国志についての説明に、一部誤りがありました。
   訂正を入れて更新済ですが、その前にご覧になった方、大変申し訳ありません。
   是非また読み返していただけたら幸いです。