2022年11月28日月曜日

ツッカベッカライ・カヤヌマのレープクーヘン

ツッカベッカライ・カヤヌマへ行ってきました。

ツッカベッカライ。なんだか日本人には馴染みの無い響きですが、ドイツ語でツッカは砂糖、ベッカライはパン屋。つまりカヤヌマ菓子店という、実はあっさりシンプルなお名前なのでした。オーストリアでマイスターの資格を取得した栢沼氏のオーソドックスなこのお店は、永田町と赤坂を股に掛けるロケーションにあり、平日はスーツ族が並ぶそう。

お使い物の「菓子折」を買うお店なら、私には縁は無さそうなのですが・・・

ココ、「レープクーヘン」があるのです!!

私の記憶にインプットされているレープクーヘンは、うっすらアイシングの掛かった丸い黒パンみたいなお菓子で、高級菓子の印象は皆無。でも初めて食べた時、何ともいい塩梅のブレンドスパイスの風味に、大いにときめいたものでした♡ 


アイシングのようなクリームたっぷりバージョンのレープクーヘン。

まだ砂糖なんてほとんど無い時代からの、ハチミツベースのスパイスパン(ケーキ?)。それがフランスのパン・デピスに、ドイツのレープクーヘン。ヨーロッパ伝統菓子の代表格と、私は密かに思っています。

レープクーヘン(Lebkuchen)は、ドイツを中心として中央ヨーロッパ各地で作られている伝統的なお菓子のひとつ。クリスマスのお菓子としても知られます。形も大きさも食感も様々で、しっとりと柔らかいものからビスケットのような堅いものもあり、後者はクリスマスのオーナメントとなったりもします。
シナモンやクローブ、アニス、ナツメグ、オールスパイス、カルダモンなどが使われ、アーモンドやクルミなどのナッツ類、レモンピールやオレンジピールなどの柑橘系のミンチが加えられたり、チョコレートなどで風味付けしてあったりします。

名前の由来については、正確には不明ですが、「レーベンクーヘン(Leben Kuchen)」=生命のケーキ」と解釈する説や、「リーブム(libum)=ラテン語でパンケーキ、捧げもののケーキ」が起源とされる説もあるそうです。パン・デピス同様のルーツであろうことを考えたら、前者(!)ってことになりますので私はその説をとります。

アーミッシュのお菓子にもこれと極似のお菓子がありました。今ではハチミツの代わりに糖蜜を使って益々濃厚なお味です。修道院で受け継がれてきたようなお名前でしたっけ。

そうそう、グリム童話の『ヘンゼルとグレーテル』*に出てくるお菓子の家。あれはレープクーヘンなのですよ。

ベースのスパイスケーキ生地にリッチなクリーム(アイシング?)やチョコレートのコーティングがなされているカヤヌマのレープクーヘンは、最豪華バージョンといっていいでしょう(お値段も!・汗

下賤な事を申しますが、一口100円以上!?? 

あ〜〜しっかり味わおう!


*「ヘンデルとグレーテル」は、グリム童話に収録されている作品。
初版は1812年で、様々な書き換え付け加えの末、現在に伝わるのは1857年版のものらしい。
原作では、お菓子の家は、壁がレープクーヘンで、屋根は菓子類、窓は透き通った砂糖(飴?)で出来ていた記述があるそう。
ちなみに、この物語の時代背景は、中世ヨーロッパの大飢饉(1315~17年)の頃で、口減らしに子供を森に捨てたりしたことが題材となっています。



2022年11月24日木曜日

12月 料理教室

12月、いよいよカウントダウンが始まります!
気ぜわしくなる頃ですが、ちょっとだけ脱日常のティータイムをしていただこうと、今月は、アフタヌーンティーなど演出してみようという趣向です。

世間では、具だくさんのヘルシーサンドウィッチが流行のようで♪
サンドウィッチでヘルシーを追究するなら、自家製マヨネーズから(!)
滋味と安心の美味しさにチャレンジしてみましょう♪



 日時:12月10,  11,  17,  18日    10:30~14:30 

 内容:
   ・ベジスティックとフムス 
  ・“自家製” 素材で作るサンドウィッチor ピタパンサンド
   ※マヨネーズ作り
  ・マクビティーなスコーン 
    クロテットクリームとジャムなどと共に
   ・デザート 
   ・美味しい紅茶

  ※ヒストリア談:クリスマスの焼き菓子について
  ※福袋頒布会


「毒」 国立科学博物館 特別展

 

むかーし昔、神農さまは「身近な草木の薬効を調べるために自らの体を使って草根木皮を嘗て何度も毒に当たっては薬草の力で蘇った」という。
きっと長きにわたる人々の臨床結果を神農様というひとりの神の偉業に。
どれくらい昔かというと、四〜五千年前ということになっているけれど、これらが『神農本草経』としてまとめられたのは、1~2世紀(漢代)。
毒消しに使った薬草は、茶葉だったという説も(!?)。

展示は、地球規模で、古代のギリシャ、エジプト、インド等はもちろん、深海まで。
古代からの人類と毒のふか〜〜い関係について考察してあります。
毒矢を使った狩りなど、2万年前からあったというから驚きです。
毒に当たった動物には毒が回っているけれど、しっかり焼いて食べることで毒消しになったといいます。


自然の中で、今よりもっとダイレクトに死と背中合わせだったときからの、生きる “一丁目”、それが、食べ物の毒性について知り取捨選択できる能力を身に付けること。

13世紀 元代の『飲膳正要』。
記述は、まず最初に味と有毒か無毒かについて。
ユーラシアに広大な領土を誇る元。様々な動植物とも対峙していたことでしょう。

そう、そして、料理は解毒術でもあるのです(!)。
移動と共に、様々な動植物に出会い、火熱の力で様々なモノを「食薬」としてきたのでした。

う〜ん、古典薬膳の核心に触れた気がしますデス。


PS:展示最後、今回の展示に関わった各分野の研究員らのコメントが面白かったのでひとつ添付しておきます。質問は以下の3つ。
Q1.あなたにとっての毒とはなんですか?
Q2.あなたの分野で恐れられている(有名な)毒はなんですか?
Q3.毒にあたった経験はありますか?
毒に当たらないように注意をしていることはありますか?
ある研究員は、Q1に「抗がん剤」と応えていました。


2022年11月13日日曜日

薩摩のさつまいも

 薩摩のさつまいも「蔓無源氏」。

サツマイモの歴史は、意外に浅い。
ルーツは熱帯の中南米。
いわゆる「大航海時代」の15世紀末にヨーロッパへ紹介されたものの、気候条件が合わず、その後植民地とされた東南アジアの地へ持ち込まれて世界に広がったという。
日本へは、江戸時代初期に、中国から琉球、薩摩に伝わったらしい(だから「唐イモ」とか甘藷とと呼ばれる)けど、もうちょっと前にポルトガル人が持ち込んだりしてなかったのかな??
ともあれ、そんな頃から生き残ってきた在来品種なのか元々お芋が日本に居たのか、100年前に見つかった「在来品種」なんだそうだ。

見よ、このデコボコ姿!

品種改良されていない感満載デス。
まずは焼き芋に。それから良しなにはからうことにしよう♪



2022年10月27日木曜日

琥珀茶会 





 

ご参加下さった皆さま、楽しいひとときでした。
ありがとうございました。

琥珀茶会。
福建省のお茶いろいろ味わって頂きました。
英国王室が歴代飲み継いできた中国紅茶の味わいも添えて・・・。

変わっていくものと変わらないもの。
変わらないモノなんて無いのかも知れません。

茶会は、「今」を映す時間。

11月 料理教室

2022年も、あと二月半となりました。
11月は、クリスマスシーズンに備えて、おうち洋食のお料理を♪

「洋食より和食の方がヘルシー」。

そんなイメージも依然ありますが、洋の食卓も、どうしてなかなかヘルシーです(!)。

今回ご紹介する料理は、アメリカ時代に覚えた懐かし〜〜〜いお料理です。
ベジタリアンメニューに組み込まれていたタブリサラダにさっぱりハムのロースト。
ハムのローストは、自家製ハムから作ります♪
甘辛味は、世界共通の「美味しい」であることを、ここでも立証したいと思います。

お楽しみに♪


  ● 日時:11月  6,12 日 10:30〜14:30

  ● 料理内容:
   ・ハムのロースト・フルーツマスタードソース(洋の甘辛)
   ・キノコのスプレット & 骨太パン
   ・タブリサラダ 
    ※タブリサラダはデュラム小麦でつくる中東〜トルコのサラダです。
   ・春巻きを使ったスウィートポテトのデザート (揚げずに焼きます。)


『デリッシュ!』




 久しぶりに、料理の映画を取り上げます♪

「デリッシュ」(原題:Delicieux)

2020年/フランス・ベルギー合作
フランス語のデリシャス。
そしてこの映画では、主人公・料理人マンスロン創作のポテト料理の名前であり、彼の開いたレストランの名前でもあります。
1789年フランス革命後に、主を失ったお城のお抱え料理人たちがパリの街に散り、飲食店を開業したのが「レストラン」の始まり。
そう料理史は語るけど、実際にはどんな風だったのか・・・・。
それを具体的に描いたのがこの映画。
もちろん史実ではなく「多分そうだったんじゃないか劇場」。
あるいは「こういうケースもあったんじゃないか劇場」。


当時の貴族達の暮らしぶりや、食周り- - -厨房の様子も興味深い。
Restaurantの「Rest」は「休息」、「回復」の意。「レストランの先駆け」が、体を癒す食事を提供しお代をもらう場所=旅籠 だったというのも頷けます。
映画では、客人が持ち込む噂話や利用客の会話、兵士の往来でのみ、フランス革命の足音を感じさせるのでした。あえてドンパチの革命は描かず「料理人の改革」を浮き彫りに。


フランスを旅してお城を訪れたときはいつも「厨房はどこだったのかな?」と思うのですが、ボーヌのオスピスをのぞいては、それらしい所を知り得ることは殆どありませんでした。
でもよく見ると、石造りのホール内のアーチ型の窠に煤が付いている箇所が。  食卓史の本に載っていた絵の様子とビンゴ(!)。ここに火をくべ肉を回しながら焙る絡繰り時計のような器具と作業台となるテーブルを置けば、中世の厨房になる(!)。あの時は、ちょっとワクワクしたな〜♡ 18世紀には、大きなストーブのようなオーブンが台頭しているけれど、肉の焙りは依然この絡繰りゼンマイ仕掛け。
料理は「火」(!)、フレンチは肉(!)なのだ。

『英国王室の食卓史』(スーザン・グルーム著)
中世のウインザー城での調理の様子。


マンスロンが使える「食通」公爵の城の厨房。
巨大なストーブオーブンが。火元は薪。



美食が貴族だけの特権だった時代から、庶民が  “料理を楽しむ”  時代の始まり。
それは18世紀末からだったのです。
レストラン「デリッシュ」では、マンスロンをクビにした公爵がギロチンに掛けられたかもしれない話には触れず。

ラストシーンは、「数日後、バスティーユが陥落した」と、スクリーンに映し出された文字のみ。

ちなみに、マリー・アントワネットが処刑台に散ったのは、10月16日。


「デリッシュ」は、秋の森の恵で行き交う人を癒したのだろうねえ)))。


以下、写真はゴブラン会2010より、古典料理の再現。

デリッシュそっくり♪
中身は・・・ジャガイモとトリュフ!?








2022年10月6日木曜日

ピータン 「皮蛋」

殻を割ると、コハク色のゼラチン質と灰色の黄味という、食べ物とは思えないエグイ外観。
初めて食べたのは、いつだったろうか??
ショッキングなルックスなのに、何故か記憶が稀薄です。

中国通の友人に連れて行ってもらった台湾料理屋で食べたのが初めてだったのではないかと思うのですが、おそらく念入りな解説付きでその正体に関する予備知識をトクと訊かせてもらったはずなので、そのお陰か、恐怖心がなく「イケる食べ物」と、インプットされたのだと思います。

友人がきっといろいろ教えてくれたはずなのに、すっかり忘れて、再び自分で調べることとなってしまった。。。

『中国食物事典』によると、現在の作り方は、水に紅茶、塩、木灰を入れて煮立てた中に、石灰や天然ソーダなどを加え、ここにアヒルの卵を入れて20℃~24℃を維持して40日ぐらい熟成させ、その後、卵を粘土で包み、籾殻をまぶして保存する---という製造工程。
生卵が固まるのは、アルカリの仕業ということのようです。

黄身がしっかりと固まっている「硬心皮蛋」と黄身が固まりきっていない「糖心皮蛋」の2種類があり、前者はアンモニア臭がつよく、あらかじめ皮むきをしてやすませる時間をとることが必須。(これをしないで、苦手になる方、結構多し!)
後者は台湾の皮蛋「松花蛋」によく見られますが、アンモニアの刺激臭がほとんどなく、すぐに使えます。

ピータンが考案されたのは明代らしいのですが、冷蔵庫の無い時代、卵を保存する方法をいろいろ探っていた結果うまれたのでしょうか?それとも偶然の産物??
保存といえば、塩漬けですが、塩卵というのはアジア各地にもある。ゆで玉子を塩漬けにするものです。こちらなら意図的な保存方法です。。。

かんすいや木灰・・・アルカリ使いについては、中国がダントツのような気がします。


写真は、竹爐山房風「皮蛋豆腐」。
和の設えにもフィットする一品です。




2022年10月4日火曜日

10月 琥珀茶会のご案内



8月予定だったお茶会が10月に延期となりました。
お茶もお茶請けも、秋バージョンに整え直しまして・・・
お話は・・・
お話したかったことが増えてしまって、今も取捨選択の日々です。

【歌<トーク】のさだまさしのコンサートのようにならないよう(【お茶<トーク】にならないよう)にしなくては。
 
皆さまのご参加、お待ちしております♪


2022年9月26日月曜日

王冠 の宝石

 大英帝国王冠  The Imperial State Crown


イギリス版、三種の神器のひとつ。
王冠に填め込まれた宝石の数々は、贈答品であり戦利品。
王冠は、大英帝国の栄華の象徴。そして、歴史絵巻。

英王室所有の宝石には、元植民地からの返還要求もあるのだそうで。

11世紀、エドワード懺悔王ウェストミンスター寺院を建てた王!)が所有していたサファイアとか・・・
14世紀、英仏百年戦争の渦中、カスティーリャ王(現スペイン)ペドロ1世からエドワード黒太子(1330年 -76)に贈られたルビーとか・・・
16世紀、教皇クレメンス7世(あの、ヘンリー8世を破門した教皇!)がカトリーヌ・ド・メディシス結婚の祝いに贈った真珠とか・・・
20世紀初頭、当時植民地だった南アフリカで発見された世界最大のダイヤとか・・・
19~20世紀、インドシーク王国やムガール帝国)のマハラジャたちの宝石も?!

重さ、910g もあるんだそう(!)。

ドキュメンタリー映画『エリザベス 女王陛下の微笑み』(八丁座で上映中)でも「My neck will break…!/ 首が折れそうなの 」…と。
あれはジョークではないな。

王冠の重みもさることながら、歴史の重みもズシリと女王の頭上に圧し掛かったことでしょう。


写真は、昔メトロポリタン美術館で購入した図録より。
宝石を産する国のふんだんな宝石使いにのけぞってしまう。
ストーン・パワーともいいますが・・・
こんな豪華なものを身に纏うには、纏う側にも石に負けない気力・体力・気迫…等々相当なエネルギーが必要でしょうね。。。

石のパワーに助けられるのか、石と張り合うのか??

特に大柄なものは、マハラジャたちのターバン装飾に使われていた様子。
このすさまじく豪華な宝石に負けることなく堂々足る佇まい。
良くお似合いだこと。



















2022年9月18日日曜日

10月 料理教室


  テーマ:油脂考察と揚げものレッスン♪


  汗を沢山かいた夏の後は、乾燥肌になりやすいとか。
  現代人が油脂不足なんてことは、まず無いでしょうけれど、その昔、
  確かにあった、油脂不足(!)。
  
  あっさり揚がる揚げ方、そしてあっさりいただけるレシピをご紹介します♪


  ● 日時:10月,  2(日) ,  9 (日)


  ● 内容:

   ・開胃 & 潤いのスープ 
    (潤いで火照りを取る発想の薬膳スープ)

   ・揚げ春巻きバラエティー 点心の懐(お総菜〜おつまみ、おやつまで)
     エビ・ピータン・お芋、キノコ、お魚 etc..

   ・むかごとレンコンの一品 


   ・五子粥
    「チャングム」にもでてきた韓国のお粥   

   ・美味しい中国茶

   ・潤いの黄金デザート(腸と血のお掃除)



 

2022年9月8日木曜日

中秋節:月のお話

 中秋節。日本、中国それぞれのものがたり


日本では、月で兎が餅搗き。
中国の神話伝説では、月には金木犀が咲き、ヒキガエルがいて薬を搗いていると伝えられ、中秋の名月が美しいのは、月の金木犀が満開を迎えているからだという。

ところで何故ヒキガエルなのか。それを探ると中国版 古事記の『淮南子』、嫦娥奔月(じょうがほんげつ)/ 嫦娥月へ登る  へと導かれる。
各地の民話をまとめた物語故、ネットでググったりすると「諸説あり」が入り乱れ、矛盾のドツボにハマるのは必定。一筋縄ではいかなそうな気配ムンムン。
かなり手こずるが、大切りするとこんな感じになろうかと思う。
(※『淮南子』の原本を読んだわけではないので、これもまたかき集めのちゃんぽんになってます。)

まず、そのヒキガエルは、仙女だった嫦娥(じょうが)なのである。
嫦娥の夫、后羿(こうげい)は、弓の名手で、なかなか男前だったらしい。
この時はまだ結婚しておらず、※嫦娥さんが数々の求婚相手の中から后羿を選ぶという話もあって、その部分がかぐや姫に取り入れられているとも。嫦娥さんについては悪女説といい女説があり。

あるとき、天界に太陽が10ケも現れるという異常事態が発生し、地上は灼熱地獄に。
天帝(東王父)の命で后羿は、9つを射落とし、再び太陽1つの世となり平穏を取り戻した。
世を平定した后羿に、西王母(せいおうぼ)は、褒美として不老不死の薬を下賜する。
(ココ、后羿が不老不死の薬を手に入れる経緯に諸説あり。)

ところが、名を上げ出世した后羿は、だんだん横暴になっていったので、妻の嫦娥は、こんな男が不老不死になったらたまったものではないと、后羿が賜った不老不死の薬を盗んで飲んでしまう。嫦娥さんいい女説では、全然違う展開になる(末尾のリンク参照)ので、これは悪女説なのかな

西王母は、自分が渡した薬を盗んだ嫦娥をお咎めになり、ヒキガエルして月へ追放してしまいます。天界を追われた嫦娥は罪滅ぼしに(盗んだ薬を返すために)月でせっせと薬草を搗いているのだという。
・・・とまあ、細かいところを言及せずに流すとこんなお話なのだ。



おやま、月と下界は天上界の流刑の地なのか。)))
楽園を追われるアダムとイブしかり、地上とは苦しみの多いところという認識は東西共通なのですね。

『西遊記』では、孫悟空が西王母が所有する不老不死の仙桃を盗んで下界に降ろされたという設定だった。猪八戒も、天上界で嫦娥さんを見初め、ストーカーしたことが訴えられて、下界へ追放処分となったということだ。(法政大学比較文学者 王敏 「中国「花」文化ー桂花考ー」より)。

『西遊記』に出てくる豚・猪八戒は、三蔵法師に拾われ天竺への長い旅路をお供するとなるのだが、これは明代(16世紀)になってから承恩(1504?- 1582)によって書かれた白話小説での展開。※猪八戒も后羿も、美しい仙女 嫦娥さんに猛アプローチを掛けていたのだ。「猪突猛進」という言葉はそんなもうアタックぶりも彷彿とさせる(!?)。

この『西遊記』の時代背景は、三蔵法師=玄奘(602 - 664)の頃。唐前期(李世民〜武則天の頃)。日本が倭国から日本になった奈良〜平安の遣唐使全盛期である。
そして『西遊記』は、玄奘の記した旅の記録『大唐西域記』(646) が基となっている。
猪八戒も后羿も、仙人という設定なので、タイムラグはひじょ〜〜に長いのだ。(だからいかようにでもムリクリ辻褄合わせが出来てしまう民話w)


中国のあんなそんな物語が日本に伝わり、日本社会のいろいろに置き換えられメタファーが盛り込まれて「竹取物語」になったともいわれている。ジブリの 高畑 勲監督の映画タイトル「かぐや姫の物語〜姫の犯した罪と罰」も、なるほど意味深だ。

さて、中国版の物語は、何のメタファーなのだろうか??
中国の神様だの仙人だのを紐解くのは私にはハードルが高すぎるが、こんなことも想像できる。


后羿が射落とした9つの太陽。
それは、天帝(東王父)の10人の子供の跡目争い!?

天帝の時代、それは、殷、周、春愁戦国と始まる中国年表の、その殷の前、中国最古といわれる王朝「夏」の頃ではと言われていて、皇帝と神話の神がオーバーラップしているような時代。(日本の神武天皇みたいな感じかな。)地図上では、洛陽や開封といった多くの王朝の首都が置かれた黄河流域を含むエリアにあったようだ。

天帝=東王父に対して西の西王母。西王母は、崑崙山いるという。
崑崙山は、遠くタリム盆地と青蔵高原の狭間にある崑崙山脈のことではなく、中国古代の伝説上の山で、黄河の源流辺りだと考えられていた。いわゆる桃源郷のイメージもこの辺りで、玉を産み、不老不死の水が湧くその地に、女仙人西王母が暮らしていると考えられていた。

「兄弟の争いを平定して参れ」と帝の命を受けた軍師后羿は、“平定ではなく結局9名を死に追いやる結果となってしまい、息子達を殺された東王父に「そこまでやれとは言っとらん!」と疎まれた??(wikiにはそういう結末の説も。←中国ドラマをいろいろ見る限り、そんな情めいたことは一切無かったろうと私には思えるのだが。)
また、10人の皇子は皆母違いで、西王母の子供のみが、生かされた「太陽」だったことで、后羿は母西王母から、褒美を賜ったとか?  

天下平定に大奮闘した后羿の働きが帝に評価されなかったことで、后羿と嫦娥は、天界=都を離れて、月=田舎で暮らし、華やかとはかけ離れ、豚とヒキガエルのようになっちゃった……なーんてねw??  

逢蒙殺羿(ほうもうさつげい)


こんな故事があるそうです。
弓の名手だった后羿は、弟子で家僕の逢蒙(ほうもう)に弓の手ほどきをしてやっていた。
逢蒙は上達し、やがて自分は師、后羿よりも上だと考えるようになった。
后羿がいなければ自分が「天下一」。野心を抱いた逢蒙は、后羿を殺してしまう。
そこから、身内に裏切られることを「逢蒙殺羿」と言うようになったのだそう。転じて、弟子や友人はよく選ぶべきだという教訓でもある。
どうやら先の私の妄想「田舎に引き込んで豚のようになった(チャンチャン)」は、早くもハズレということか。

語り継ぐ人の「こうであったらいいのにな」という思いにストーリーも盛られ、伝説というものは果てしなく広がっていき、今日の私達を悩ませるのでありまするなあ〜。)))


嗚呼、今や「嫦娥」は中国の月探査ロケットの名前。
千年の伝承を打ち砕く月の真実を明かすロケットの名前になろうとは。


聘珍樓のサイトには、「嫦娥いい女説」のお話が載っています。
切なさもあって、この説なら「竹取物語」に通じるところ多々ありかなという気がしますデス。






2022年8月13日土曜日

セイロン紅茶とスリランカ

 1990年代後半。今思えば、あれもひとつの“ブーム”だったのでしょうか。
豊かな品揃えの紅茶専門店が楽しくて。
当時、好奇心が先行して前のめりの私は、度々通って「ここのお茶、全部制覇しちゃうぞ!」と、本気で思っていたものですw
今は「制覇する」なんて言葉の薄っぺらさに恥ずかしさばかりですが。

バラエティーを遊ぶお年頃を過ぎ、ここ十年以上はずーっと、神田神保町のティーハウス・タカノさんのヌワラエリヤを飲んでいます。
タカノさんは、多種をそろえるのではなく「今年はコレ!」と、味の絶対値でもって買い付けられるのです。だから品揃えは10種に満たない。でも、その中に、ストレートで美味しいもの、ミルクティー用、スパイスティーや煮出しチャイ用それぞれのベストが揃っているのです。
嗜好品ですから、客観的に「ベスト」といえば、もっといいもの、高級なものはいろいろあると思いますが、今風に言うとSDGsな価格と美味しさのものが揃っているのです。

5〜6月、ダージリンのファーストフラッシュ、続いてヌワラエリヤ入荷のお知らせというのが恒例。

が、今年は未だ船荷が着かない・・・とか。
手元の茶葉が少なくなってくると、途端に当たり前の美味しさが貴重なものになってきました。
7月5日のスリランカ「破産宣言」からひと月。現在、スリランカはどんな様子なのでしょう??

同じ味が頂けるってことは、平和ってことなのですね(!)。

17世紀以降、ポルトガル - - - - オランダ - - - - イギリスと、支配の上塗りを重ねられてきたスリランカ。
イギリスの支配は「胡椒の後に、唐辛子が来た」と表現されるほど「辛い」ものだったという。
プランテーションもコーヒーから紅茶へーーー。

写真は、10年前、スリランカ・ヌワラエリヤを訪れた時に宿泊した
チューダー様式のホテル(=元イギリス人の館)に飾ってあった写真です。










2022年8月7日日曜日

9月の料理教室

 皆さま、お元気でお過ごしでしょうか?

まだまだ猛暑が続きそう・・・!

9月は、ドカーンと疲れが出そうな予感もします。

そんな訳で、テーマは「滋陰補腎の養生ごはん」。

夏の疲労がたまった体に優しいお料理をーーー。

実は、料理教室を始めてから「初」のフカヒレです!

フカヒレは、特別なお料理ですが、ご家庭でも美味しく頂けます。
いろんなものがお取り寄せ出来るようになった時代の、こんな活用法いかが??
というご提案も♪
少しずつですが、召し上がって頂こうと思う次第です。

秋〜冬、補陰補腎に繋がるお食事に仕立てて展開予定です。
是非、ご参加下さい♪


●日時:9月 3日(土),4日(日),10日(土),11日(日)
    10:30~14:30


●内容:
「滋陰補腎養生ごはん」

   ・客家擂茶(←7月より繰り越しの一品)
   ・老虎菜
   ・季節の野菜炒め
   ・フカヒレ 湯葉トロ煮込み
   ・桑甚ごはん
   ・極上中国茶(※ワンランク上の中国茶)
   ・季節のプチデザート



2022年7月23日土曜日

芥子漬け


 

7月教室の一品だった芥子漬け。

  お鼻、ツーーーン
  お目々、ヒリヒリ

この「ツーン」が苦手な方、10人に1人ぐらいの割合でいらっしゃるようにお見受けします。
私はこのツーンに挑みながら刺激を頂くのが大好きで、いつも芥子&山葵は増量ぎみ。
芥子の揮発成分を鼻腔に入れないよう、スー、スー、スー・・と小刻みに鼻から息を吸いながらいただきます。芥子や山葵が苦手な方は、この呼吸が苦手なんでしょうねえ、きっと。
芥子の「ツーン」は、配糖体から生じるアリルイソチオシアネートという物質によるものらしく、ワサビや大根にも含まれる成分で、殺菌力にも通じる。

香る美味しさ。

料理の美味しさの半分は嗅覚が担っていると思うのですが、芥子漬けの美味しさは、この常識を覆す食べ方で尚人気を博している!? 芥子、タダモノではないゾ。

そこで、ちょっと芥子のお話を。

芥子には、黒、白(黄)、オリエンタルの三種があるとされています(SB創業者 山崎峰三郎氏の著書による)が、黒白2種として扱われていることが多いです。ホールスパイスを売る店頭でも白(黄)、茶色の2種類だけ。アブラナ科のこの植物は、古くから世界各地で活用されているので、もう原産国がどこだか分からなくなってしまっていますが、恐らく東地中海沿岸辺りではと言われています。
"マスタード(Mustard) "としては、白いディジョンマスタードかソーセージに添えられる茶色の粒マスタード。
南インドでは、スタータースパイスとしてブラウンマスタードシードをクミンと一緒に熱した油に加えてパチパチ弾けさせて香りを引き出すのがカレーの基本。
日本の練り芥子には、ウコン(ターメリック)が加えてあるから黄色いけれど、本来はディジョンマスタード同様もっと白っぽいもので、これが本来は「オリエンタル」種といわれているタイプのもののようです。

唐代にインドへ旅した玄奘(三蔵法師/AD600~664)の記した『唐西域記』には、芥子には神力が宿るといった記述があるそうです。中国にはインドから伝わり、インドのそれもひょっとしたら地中海沿岸あたりから広がったものかも(またその逆かも?)しれません。
魏晋南北朝の6世紀の農業書『斉民要術』に芥子菜のことが「胡芥」「蜀芥」と記載されていましたから、唐代以前には西部ですでに栽培されていたようです。
そしてその芥子が、7世紀には遣唐使によって日本に仏教と共に伝わり、加持祈祷に用いられるようになっています。
源氏物語(10-11世紀初頭・平安中期に書かれています)の「葵の巻」と「手習の巻」にも、芥子焼きのことが語られています。
(光源氏の正妻・葵の上を悩ませていた生き霊を調伏するための加持祈祷で炊いた芥子の香りが、六条御息所の衣に染みついて消えなかったとあります。)

古の人々が芥子の「ツーン」を楽しんでいたかどうかは不明ですが、何やら世界中の人々のDNAに組み込まれていそうな普及ぶり。あらゆるお料理に幅広く使えるキャパも、古句から親しまれてきたから故といえそうです。

芥子。不思議な魅力を秘めた代物です♪


あ、芥子漬けは・・・いっぺんに沢山仕込むと危険ですよ。

*芥子(白芥子)
 性味/帰経:温・辛/肺 
 化痰類 温肺袪寒(理気散結、寒性の席、喘息、稀息 稀痰など)
     通経止痛(関節疼痛・麻痺・陰痰) 食欲不振に。



2022年6月27日月曜日

 7月の料理教室

今年は梅雨が短く、長い夏になるとか!?
梅雨も大変ですが、猛暑が長いのは、ちょっと覚悟が要りそうです。
脾胃を労る体に優しい、気負わず作れる飽きの来ないお料理で、乗り切って参りたいと思う次第です。
あっさり和食には、落とし穴があります。
それは市販のモノに頼ると知らず知らず摂取することになってしまうリン酸塩や甘味料が含まれがちだということ。
真っ当な調味料を使うことは、腸の健康にも直結しています。

そこで、今回は、少し調味料についてのレクチャーを増量した内容に。

 
テーマ:調味料と添加物 ① さ・し・す・考察
     調味料検証レッスン♪

お醤油(と味噌も?)にフォーカスし、猛暑を乗り切る調味料を作ります。
夏の美味しい一汁三菜の和定食と共に♪

 <内容>
 ◎台湾擂茶ーーーミネラルサプリ食としての知恵。

 ◎江戸前調味料「煎り酒」作り  ※お持ち帰りアリ♪
 ◎出汁醤油ベースの調味料(めんつゆも作れます!!)

   <一汁三菜の和定食>
  夏野菜の和え物
  山芋の和え物
  魚介&煎り酒カルパッチョだれ / お肉の冷製  和のタレで (カルパッチョダレ)
  お味噌汁(納豆汁?)
  ごはん
  ちりめん山椒  & 香の物
  デザート(葛きり&梅蜜?)
  美味しいお茶

  ※豆かんてんお取り寄せの頒布

2022年5月14日土曜日

6月の料理教室



 スイスイ季節が移ります・・・
そう感じるのは、歳のせいか!?
さて、梅雨入り間近の教室では、スパイスの出番でしょう!
昨年は流通が止まっていたインドの美味しいカレー粉も入荷が確認できました!
ここはやっぱり美味しいカレーでしょ♪
これまで色々なカリーをご紹介して参りましたが、今回は、県外からの
お客様にも食べさせたくなる檸檬カリーをご紹介します。
今年も夏バテ知らずでお過ごしになれますように。


 ● テーマ:「柑橘バラエティー」
      〜 カレーバージョン 〜

 ● 日時:2022年 6月 11(土), 12(日),    18(土),    19(日)
                   10:30~14:30

 ● 料理内容:
   ・羅漢果でコーラ 
   ・カチュンバル
   ・野菜のマリネ
   ・レモンカリー
        ※インドの梅干し  “ニンブカ・アチャール
   ライス
   ・羅漢果のデザート
   ・菊花プーアール茶

 ※料理は一部マイナー変更がある場合があります。ご了承下さい。

 ※カレー粉予約受付(締め切りは5/15)。
   50g 瓶入り@700円(対象:会員様のみ)
 ※パコラミックス粉 予約受付(締め切りは5/20)。
  @300円(対象:会員様のみ)

2022年5月10日火曜日

瑞雲茶会 → 端午薬食茶会 2022


 恒例の茶会@MUNI広島ギャラリー。

1月から延期になっておりましたが、名前&テーマを変えて、催行となりました!

今回は、1月に既にお申し込み頂いていた方を優先予約とさせて頂きましたので、残席、19日のお席が2席のみとなっております。(ゴメンナサイ!!)


この度は、茶樹のルーツが味わいと共に楽しめる構成となっております。

お米と麦を切り口に2種の点心、乾菓もご用意しております。


この3日間、フィナーレのお茶をどれにするか悩みに悩んでおります。)))


2022年4月3日日曜日

「共命の松」

 本日、お花見日和=チャリ日和。

爽やかな春の日差しに誘われ、自転車で桜見物することにしました。
花から花への蝶々気分で あっちの桜、こっちの桜・・・。

どこもなかなかの賑わいですが、府中町の水分峡森林公園は少しおちついた雰囲気(写真は入り口付近)。


ここは、4年前の西日本豪雨で氾濫した府中川の水源にあたります。
過去にも大きな水害の記録が残っています。
小さな砂防ダムが作られたのは昭和16年(1941年)のこと。

大正15年 この地方は大洪水に見舞われた。府中町では堤防の決壊 10数ヶ所延べ3500間(約6300m)橋梁の流失20余 低地部の一帯 が海となり、田畑流失66町歩(約66ha)の被害家屋359戸にのぼり (当時の戸数800戸)余、人口3,700人であった。          大正15年の洪水による山林荒廃地の砂防施設工事を内務大臣に陳情、 昭和14年旱害による応急対策施設に字石ころび谷間の溜池新設を   議決昭和16年 県 水分峡堰堤工事が完成した。(府中町史から)」


川沿いの桜に添って上がっていく道中には、土嚢が積まれ、未だ復旧工事中のところがあちこち見られました。
この公園やキャンプ場も、ついこの前まで立ち入り禁止になっていましたが、今日は少し入れるようで、行楽を楽しむ人の姿もちらほら。。。

かつては稀少植物もみられた山道も、洪水と、人の手がこう入るともう「自然」では無くなりますが、仕方ないですね。)))

さて、その水分峡への道の麓にある龍仙寺。
ここには、樹齢600年を越える「共命の松」が鎮座しています。

元々は盆栽だったそうで、盆栽として100年以上、地に移されて500~600年といいます。
龍仙寺の創建は、1521年。室町時代。その時に、移植されたそう。
なるほど、盆栽のまま大きくなったみたいな風貌。

青々しい松葉に代謝活発 パリッと松皮。
まだまだ生きる宣言が聞こえてきます。


愛でて麗しい松ですが、松には救荒植物、薬草の顔もあるのです。
「救荒植物集説」* にも掲載されているそうです。

その昔、飢饉や兵糧攻めで飢餓に陥った際には、松皮を粉にして食べたのだとか。
そういえば、昔の大河ドラマ『黄金の日々』で、市川染五郎(現・十代目松本幸四郎)扮するスケサが、秀吉に兵糧攻めされる城で、コツコツ密かに木の皮から団子作っているシーンがあったのを、何故か印象深く記憶しています。
あれは松の木だった(それとも代用で他の木で作ったの)かな・・・??

秋田には、由来の松皮餅というのがあるのだそう。
こちらは団子に松の皮の粉を練り込むのだから、ちょっと贅沢かもしれないけれど、松の皮を食べようとしたきっかけは、北の国の飢饉かもしれないですね。

松は、まさに命の木。
その松葉も薬草。




*「救荒植物集説」/伊藤圭介・述(いとうけいすけ)・賀来飛霞(かくひか)・記
 1884年(明治17年)、シーボルトに西洋植物学を学んだ伊藤圭介が自著「救荒食物便覧」や実験をもとに、その他諸書を参考にしながらまとめ記した。123種の植物について、科名、方言、漢名、洋名、色、形状などの観察、植生、調理方法などが記されている。82歳の高齢であったので、賀来飛霞が執筆したと見られる。
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/112737

 参考:「お松を愛する会」HP:https://omatsu.club/2020/07/18/post-1610/