2019年3月25日月曜日

ヤマザキマリさんの『オリンピア・キュクロス』


『オリンピア・キュクロス』は、古代ギリシャの壺絵師が、東京オリンピックの昭和日本にタイムスリップする物語。「キュクロス」とは、ギリシャ語で叙事詩環のこと。(Epic Cycle) 

盛り込まれているエピソードの数々は、一見ギャグのようにも見えますが、作者のヤマザキマリさんが、マンガという手法で大まじめに展開する比較文化論なのだ。

写真は、主人公が日本の盆踊りを体験し、古代に戻って壺絵に描いたもの。
絵の完成度、スバラシイ!!(でも、こんなのが発掘されたら考古学者も歴史家もドンデンころりんこです・笑。)

史跡巡りの中で、数多くの壺絵を見てきた彼女は「ある意味、これは古代人にとってのマンガだ!」と思ったのだそう。
異国に暮らし、自らが体験してきたカルチャーショックや驚きを、マンガの主人公のそれに投影させているのですね。

巻末の解説文には「現代と古代、人間は、歴史を繰り返していく中で、結局そんなに変化してきた訳ではありません」と。

私も料理でこんなことが出来たら・・・!と、密かに思ったりしましたが、誠に恐れ多く、手に負えない果てしない研究故、上澄みをすくいすくい、一喜一憂するに留まっております。

ヤマザキマリさんの、人生を投じた研究活動に凄味を感じつつ・・・マンガに笑いこけています。

ちなみに、古代ギリシャのオリンピックでは、選手は皆「すっぽんぽん」で競技にのぞんでいたようですから、『テルマエ・ロマネ』のような映画化は無いと思われまするw。
(マンガでもモザイクが掛かっていますw)

興味の沸いた方は、マンガをご一読くださーい♪

2019年3月24日日曜日

新谷彰子さんの仕履展@MUNI


新谷彰子さんの仕履展が、絨毯ギャラリーMUNIで開催中です
私の茶壺と蓋碗、ウエッジウッドも参加中♪
お皿にお椀、お雛様に篆刻に・・・茶道具に留まらない布遊び。
作家さんの自由な心がギャラリー・オーナーの遊び心と相まって、楽しいお祭りを展開中です。
25日(月)まで。私もお祭りに参加中♪

私の茶壺とウエッジウッドもおべべを着せてもらって参加中♪
西洋更紗で和を包む
文房具も・・♪
お皿はお座布団付きで重ねて♪
私の赤絵の蓋碗も、お座布団付けてもらいました♡

2019年3月18日月曜日

XO醬 ジャーン!



XO醬というソース。
1980年代に、香港のペニンシュラホテルの当時の料理長が考案した“最高級”のジャン。
XOは、ブランデーの格付け名から取っているんだそう。
干貝柱に干しエビ、金華ハム、蝦子、咸魚などの旨みを一手に含ませる贅沢なジャンです。 

調味料やタレ、ソースは、なんでも一度は一から作ってみることをモットーにしている私ですが、このジャンには、手を出せずにおりました。だって、失敗したら、損失額も時間も多大だもの〜〜〜。

でも、神田雲林の成毛シェフが雲林バージョンXO醬を丁寧にご指南下さり、チャレンジする気が湧いてきました。
干貝柱を蒸して戻してほぐして揚げて・・・干しエビも、蒸して戻して刻んで揚げて・・・金華ハムも蒸して戻してほぐして揚げて・・・。これらを別々に調理して最後に合わせるのですから、2日掛かりでした。適切に火を通した薬味類や干醗酵塩魚なども加え、味が調和するまで、更に数日寝かせる。いや〜なんとも手間な作業です。

うふふ、でもなんか、それらしいものが出来上がり、気分は上々ですw。
4月の教室では、先週伺った竹爐山房(山本シェフ)のXO醬と一緒に使ってみようと思っております。

思えば、このジャン、とても香港らしい調味料だなと思うのです。
点心や蒸し料理の幅を広げてくれるし、この咸魚の風味がまた何とも香港らしい(!)。

咸魚の作り方を聞いて、益々そう感じるようになりました。
発酵臭を、美味しい風味に変えてしまうところは、日本の「くさや」や「へしこ」、「熟れ鮨」等にも通じるものがあるように思います。

瀬戸内の新鮮な魚をそのままにいただける地の食文化で育った私には、お魚の醗酵味は、いまひとつ馴染まない気がするのですが、小イワシの醗酵食=アンチョビなら(!)

美味しいタレ、ソースがあれば、お料理は限りなくシンプルに楽しめる。

皆に美味しいと言ってもらえますように。



2019年3月13日水曜日

東洋文庫ミュージアム 「インドの叡智」展


“太古のインダス文明にはじまり、マハトマ・ガンディー”を旗頭にイギリスから独立を勝ち取った20世紀半ばに至るまで、インドの壮大な歴史絵巻を紐解く” 展示。

「渡りに船」の思いで駆けつけました。
幸運にも、学芸員のガイドがあり、展示品添付の解説余白談もいろいろ伺うことができました♡

写真は、9世紀日本の世界観が映し出されている古地図。
(*東洋文庫ミュージアムは、フラッシュは禁止ですが、写真はOKなのです。)
インド〜中国〜日本の三国が、この順に大きく描かれています。中央上部には須弥山も(!)
「三国一」というのは、インド、中国、日本の中の1番(ほとんど世界一)のことなのでした。
伝え聞くことと空想の結晶のような世界イメージ図です。

私はこれまで、西洋から食文化を辿ってきたつもりでしたが、インドはどう絡まるのかわからないまま、ここ十年どっぷり中国にハマっておりました。昨今、インドからの風が吹き始めているのを感じていますが、ルーツを辿っていくと、自ずとこういう流れになっていくものなのかもしれません。ちょっと『西遊記』を新たな視点で読んでみたい気分ですw。
私の料理探訪も、きっとこの図に描かれている八方への川の流れのように、またインドから広がってくれることを祈りつつ。


2019年3月8日金曜日

4月の料理教室



ここのところ単発の教室やイベントが入ることが多くなったこと、それからリサーチがあり、時間を確保したいため、今年から自宅教室は、隔月とさせて頂いています。

今年は「定番料理をより美味しく!&真髄に近づく+薬膳1品」をテーマに展開してまいります。

  【内容】
   ・春の補全スープ(薬膳スープ) 

   ・自家製XO醬を使った野菜料理
 
   ・卵料理:
    ブクブク玉子の魚香あん

   ・ごはん

   ・デザート:紅茶湯圓

   ・美味しい中国茶


   4/3(水)満席、13日(土)、14日(日)、 5/11(土)満席
   ※キャンセル待ち受付中

- - - - - です。

尚、NHKカルチャーの方は、4月開講!
今期は「五臓六腑を労う」をテーマに、肝・心・脾・肺・腎、臓腑毎の働きと補う食べ物、料理などをご紹介していきます。



2019年3月1日金曜日

『グリーンブック』と フライドチキン

アカデミー賞受賞の『グリーンブック』が広島でも開幕になりました。
初日は、映画デーに重なって、相当な混雑でしたが、夕方の回にようやく席を得ることができまして、観てきました♪

よくある、人種差別をテーマにした映画の、良く出来た版かな〜と思って、あまり期待しすぎずに臨んだのですが・・・なかなか面白かった!

差別の激しい時代背景が二の次になる位、主人公の二人が魅力的で、友情物語と呼んでしまいたい(!)。ですが、この巡業ツアーが行われたのが1962年ということを思うと、とてもとても、差別の部分を後ろに置くことはできません。
何てったって、61年に、JFKが大統領就任('63年にはダラスで暗殺!)、マーティン・ルーサー・キング牧師の公民権運動でワシントンDCのパレード&歴史に残る名スピーチをしたのは'63年。その間の '62年、KKKによるリンチが繰り返されるような激しい頃です。
NYCから「ひとり公民権運動」のようなコンサートツアーを試みるシャーリーと、その用心棒を「生活の為に」引き受けちゃったイタリア系のトニー。
実はこの二人共、南部のすさまじさを、あまり解ってなかったんじゃないかい??とも思えるちゃう。

人種も生活も身に付けた教養も異なる二人。でも二人とも肝が据わっているし、ぶれない。
シャーリーは、英才教育を受けた教養人。トニーは、目の前のことをどう片づけたらいいか、いつも瞬時に判断できる地頭のよい智恵者。
トニーのような生命力のある人、カッコイイですね♪シャーリーも、黒人にもなりきれず白人でもないという孤独感を受けとめ、ストイックでありながら行動力と勇気を持っていてカッコイイ。

おっと、私の映画の感想などはこれくらいにして、本題の食のテーマに入りましょう。

 お題は「黒人の食べ物(ソウルフード)」。

映画で、黒人のソウルフード、ケンタッキーフライドチキンを食べたことが無いというシャーリーを、トニーが揶揄するシーンがあります。

KFCといえば、カーネル・サンダースのおじさん。あれ?白人じゃない?
ウィキでチェックしたら、ケンタッキー州にほど近いインディアナ州の生まれです。
KFCのチキンは黒人文化には直接関係ないのですが、フライドチキンのルーツには、大いに関係があるのでした。

黒人のソウルフード。それは、南部の大農園主が食べない部位を工夫して美味しく食べる智恵の結晶。モツ肉の煮込みなどはその代表で、フライドチキンも、最初は小さくて骨と皮だけで取り除かれる手羽先や首の部分を使った料理だったのです。フライにすると、軟骨部分なども食べられる上に腹持ちがよかったのです。
南部の農園主は白人です。その白人の日々の料理を作っていたのは黒人奴隷でした。
(この辺は、古くは長編ドラマ『ルーツ』や映画『風と共に去りぬ』などに出てくるシーンでもお馴染み。)ソウルフードは、ご主人の料理を作り、その残り(アラ)で、自分達の「まかない」をつくってきた中で生まれたものなのでした。

「チタリングス」と呼ばれる南部料理がありますが、豚のモツ煮で、これも同じくアラ料理です。
また、コーンブレッドなど、コーンを使ったものは、元々は黒人が、家畜の肥料のエサであるトウモロコシを潰して作ったのが始まりとか。
そんな品々が、南部の郷土料理となっていて、昔('80年代)、NYCのハーレムのレストランにもありました。(今もあるかな?)

それから、NYCのJazzスポットのメニューには、よくスペアリブがありましたが、これもきっと肉を削いだ後の骨に残っている肉を美味しく料理したことが始まりではと思います。

その他、先述のコーンでつくるお粥のような「グリッツ」(マッシュドポテトのように、ドロドロしたのを肉料理などの付け添えにしている)、「ハムホック」(豚足)、OXテールシチューなども、南部の郷土料理となっています。
「白人が食べない部位」という切り口でみると、なるほどそうかも知れないなと思えてくるでしょう?

あと、南部料理の補足として添えるなら、有名な「ガンボ」(オクラのスープ)。
あれは、オクラに臓物が入ります。
クロウフィッシュ(ザリガニ)料理も、キャットフィッシュ(ナマズ)も、南部料理ですが、白人の残り物に加えて、近くの川で採れる魚介を食べていたのがルーツだそう。
更には、アフリカン・アメリカンに加えてブラジルから連れてこられた奴隷もまた、ソウルフードの彩りに華を添えているようです。

私の教室で十八番の「瀬戸内ワタリガニのケイジャン*スタイル」は、黒人の多いフィラデルフィアで好きだったCrab Houseの復刻版。あれも元は、ザリガニ料理だったかも!
もっと言えば、一世を風靡したキハチさんの(かつては無国籍料理としてもてはやされましたっけ)ロブスター料理も、ルーツは南部のザリガニ料理では?と思います。
川魚特有の泥臭さをスパイスでカバーして美味しく食べられるように工夫してあるのでした。

80年代のフィラデルフィアで知ったもう一つのソウルフードに、商品名は忘れましたが「スクラップルス」(そのものズバリ、scraples とはクズ、切れ端、廃棄物の意)というのがありました。「クズ肉でできている黒人の食べ物なのよ」と聞かされ、一度だけ買って家で焼いてみたことがあります。モツ肉やバラ肉を小さく刻んで練って固めた脂っぽいパテみたいなものでしたが、カリカリに焼いて脂を出して食べたら、胡椒が利いてて結構美味しかったのを覚えています。

これまで、知らず知らずお世話になってきた美味しさには、色々なルーツがあります。「美味しいもの」というのは、素材のいいものから作られる正統な料理が王道であることは当然かもしれませんが、こういった人々の工夫で生まれる美味しさもまた一興。
でも、その負のルーツにもちゃんと目を向けておきたい。

さて、今晩のおかずは、フライドチキンのケイジャンスパイス掛けでもやりますか。