2021年6月26日土曜日

キムチ論争2  唐辛子談


Bali バドゥン市場にて(2009)

今日は、真っ赤っかなキムチに必須の、唐辛子についてです


唐辛子は、15世紀後半までは、中南米にしか生息していかった植物。
コロンブスが、スパニョーラ島(今のキューバ)で唐辛子を発見したのが1493年。
その後、スペイン人とポルトガル人により持ち帰られた唐辛子は、瞬く間に世界中に広がり、100年足らずで、インド、日本、中国、韓国に伝わり、最終的には料理を激変させていくことになるのです。

日本へは、1542年にポルトガル宣教師によって、苗ごと持ち込まれました。
朝鮮半島には、豊臣秀吉の朝鮮出兵(1592年)で、日本が医療用(凍傷予防対策)または「武器」(目潰し用)として持ち込まれたのがはじまりとする説が有力となっています。
こうして伝わった唐辛子は、朝鮮半島でもやはり最初は毒薬扱い。李朝中期に記された百科全書『芝峰類説』(李サイコウ編纂/1613年)の食物部の章には、唐辛子を指す「南蛮椒」「倭芥子」が猛毒として記されているそうです。また、それより少し後に書かれた料理書『飲食知味方』(張桂香・著)に、まだ唐辛子は出てこきていないのだといいますから、まだ食物扱いではないということのようです。
料理に登場するのは、それから更に100年後の18世紀に入ってからで、農書『増補山林経済』にキムチやコチュジャンが紹介されているらしいそれでもまだ、唐辛子の使用料はほんの薬味程度で、今日のような「真っ赤っか」になるのは20世紀に入ってからのようです。
これは、辛くない品種が普及したからかも知れないな。))

唐辛子のことをハングルでは「고추/コチュ」といいます。漢字があったなら、どんな表記になっていたのでしょう? ちなみに、日本の「“唐” 辛子」、「唐」は、歴史的に「外来のもの」というニュアンスで使われていおり、中国から伝わったという意味ではありません。


さて、中国においてはどうか?
古から食医がいて食薬や料理書が折々に記されている中国ですが、食薬書『本草綱目』(明代半ば/1578年)にもまだ唐辛子は取り上げられておらず、文献に出てくるのは、明代末(17世紀半ば)料理に登場するのは、次の王朝 清代初の園芸書花鏡』(陳淏子/1688年刊)で、唐辛子のことは「番椒」と書かれているのだそうです。「番」は、日本でいえば南蛮の「蛮」のように外国から入ってきたものを指す言葉(ex:番紅花=サフランのこと)。薬用、または観賞用であったことがうかがえます。
清代全盛期 乾隆帝の子にあたる7代皇帝 嘉慶帝(1760-1820)の時になると、ようやく四川で唐辛子の栽培が始まり、長江流域(四川料理、湖南料理、湖北料理など)の料理に影響を及ぼすようになっていったようです。

中国には、シルクロードという西域との交易ルートあるし、チベットと四川、雲南とは、いわゆる茶馬古道と呼ばれるルートがあり繋がっています。しかしながら、いち早くマカオに到達していたポルトガル人経由で伝わったと考える方が妥当に思えます。

いずれにしても、中国、韓国、日本・・・唐辛子の伝わった時期に大差はなく、それぞれに活用の幅を広げていったのではないかという印象です。

エスニック料理というカテゴリーの料理には唐辛子が必須といってもいいほど定着しています。それは皮肉にも、列強による植民地支配の歴史ともつながっていると言えるでしょう。

唐辛子は、19 - 20世紀になって「スパイス」として料理の中で花開し、食文化に大きな影響を与えて植物なのでした。こうやって見ると、伝統料理の歴史も、案外数 二、三百年程度のものなのですよね。)))
どんな環境にあっても、したたかに、軽やかに、各々のとらえ方でそれぞれの食文化にとりいれていく人々と唐辛子の柔軟性に、深い感慨を覚えます。


参考文献:『世界地図から食の歴史を読む方法』辻原康夫 
     『世界食物百科』マグロンヌ・トゥーサン=サマ
      レファレンス共同データベース
      『香辛料Ⅳ』山崎峰三郎

2021年6月20日日曜日

キムチ論争?!

泡菜擅子(パオツァイタンズ)
老四川瓢香にて撮影

何やら、中国と韓国の間で、キムチの起源を巡って論争になっているらしい。
火付け役は、中国の人気Youtuber李子柒さんによる投稿。 
<#(ハッシュタグ)中国の食べ物>で「キムチ」がUPされているのです。

youtubeも、人口14億の国でヒットすると、白も黒、黒も白になりかねないから、その影響力は侮れませんねえ。)))真実が多数決で決められては、研究者にはたまったものではないでしょう。

何をキムチとして論争を起こしているのか??
見ればYoutubeのそれは、真っ赤な唐辛子入り。
中国側が<中国は、1500年前から云々・・・>と主張しているところからすると、唐辛子が使われるようになる以前からのお漬けもの文化について言及しているようです。
「塩漬けなんて・・・どこの国にもあるじゃないか」と言いたくなる。

中南米原産お唐辛子が世界に広がったのは16世紀以降。
これが唐辛子入りのものについてならこの論争、着地点がありそうなのだけれど、中国が議論の俎上に載せてきたのは「泡菜(パオサイ)」。塩と香辛料、酒を加えた水床で作るお漬けもの。
泡菜は、日本で言えば、糠を使わないぬか漬けのようなもので、乳酸発酵させる一手間で、旨みを増した状態にし、そのままでも、また料理に使ったりする。インゲンなどを泡菜にして炒めると、それはそれは美味しい一品に(!)。

泡菜は、泡菜擅子(パオツァイタンズ)という漬物壺【写真】で作ります。
野菜が豊富な四川省独特のものなのだそうですが、中国各地で使われているみたいです。


キムチの語源は「沈菜(チムチェ)」、または「鹹菜(ハムチェ)」とか。
「沈菜」と「泡菜」。確かに似ています。
陸続きのお隣だし、元漢字を共有していた国同士だもの。
発酵食は温暖な南方が得意とするところ。日本でも、ぬか漬け文化は北九州が盛んです。
もちろん、影響を受けてもいるかもしれないけれど
日本の味噌や醬油だって、あぶない、あぶない。
「味噌は中国のものです」なーんて言われたら・・・やっぱり暴れますw

物事の本質は、お漬けものでは無く、国家間の言いがかりのネタに漬物文化を引き出したようなところが大いにありそう。

こういうことは「諸説あり」でくくるとして、美味しさを共有しようではないか。

せっかくだから、この機会に、赤いキムチに欠かせない、唐辛子のルーツをたどってみるとしましょう。

 「諸説」が気になる方はコチラをどうぞ♪
  ↓

<つづく>


2021年6月6日日曜日

7月の料理教室



 7月は、暑さに備えるメニューです。
名店の共同お取り寄せも+αで、おうちのご飯を充実させるおいしいタレと活用を色々ご紹介します。

 ●テーマ:夏支度  元気支度 香は食薬、鼻は味覚〜


 ●日時: 7月3日(土)日(日), 10日(土) 11日(日)   10:30 ~ 14:30  

               ※全日程、満席となりました。以降はキャンセル待ちのご予約となります。

 ●定員:各5名 

 
 ●内容:
   ・坦々麺 *特製タレづくり
   ・夏野菜の揚げ浸し  中華マリネ *マリネだれづくり
   ・デザート
     美味しい緑茶とお菓子(ホンモノのわらび餅)
     



★ お取り寄せシリーズ:美味しい金沢の蒲鉾 
★「暮らしのスパイス」オリジナル バーニャ・カウダのソ—ス
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2021年6月5日土曜日

仕込みの6月 らっきょう 梅 奈良漬け 


一昨年前の大雨が影響してか、昨年は、梅がほんとに少ない年でした。
なので梅仕事はお休み。その分今年は!!・・と、腰を上げました。
春の到来も、梅雨も急ぎ足の2021年。仕込みも前倒しで大忙しです。

らっきょう、梅干し、カリカリ梅に梅ジュース、梅ジャム、奈良漬け・・・願わくば、ひとつずつ着手したいところなのですが、よい素材に出会った順に手掛けると、なかなか首尾良く、都合良くとはいきません。


奈良漬けの酒粕も入手していないのに取りあえず下漬けを始めた胡瓜。
買ってみたら、既にちょっと熟れすぎててカリカリ梅に不向きだった梅は梅ジュースや煮梅に・・・。

今年は柴漬けにも挑戦したい・・・!

・・・・と、台所に張り付いている今日この頃です。<つづく>