2019年11月11日月曜日

『大草原の小さな家』— 料理編7 ドリンク

料理編の最後に2、3、飲み物を取り上げます。

お父さんはウォールナットグローブに家を建てる時、井戸も掘りました。この水が、一家の生活を支えていました。

ドラマでは、専らコーヒーを飲んでいるような印象を受けます。でも本には、ケンブリックティーというのが載っていました。なんだかイギリスっぽくて洒落た名前なので何かと思ったら、その内容は、薄めたミルクに紅茶をちょこっと落としたもの。つまり子供用の薄〜いミルクティーです。だから時々は紅茶も飲んでいたのかもしれません。
ローラ達は「これを飲ませてもらうと、大人の仲間入りをした気分になった」そうです。


アメリカには、ボストン茶会事件*を経て、英国から独立を果たした歴史があります。そのためイギリスの象徴的飲み物である紅茶は敬遠され、コーヒーを多く飲むようになったといいます。
*イギリス本国から植民地側に一方的な税率で税金を課すので、とうとうぶち切れて、税の対象で象徴的だった茶箱を、積み荷から下ろさせずに海に捨てたという暴動事件。

でも、レモンの入ったアイスティーはアメリカ生まれなんですよね。

今、アメリカらしい飲み物と言えば、一番にコカ・コーラが浮かびます。
でもこれは1890年代になるまで登場しません。(コカ・コーラカンパニー設立は1892年で、南部ジョージア州アトランタにある製薬会社の開発です。)
ドラマ・シーズン1の19話(『大草原の小さな家』はシリーズ9まであり、各22-24話ある)「サーカスのおじさん」の中で、万病の薬といって重曹や重曹水を飲ませると、皆が治った治ったと元気になった(気がした)エピソードがありました。重曹水は、要するに炭酸水です。確かに胃は一瞬スカーッとしたことでしょう(笑)。
医師のベイカー先生以外はみんな騙されてしまうので、この頃は炭酸もまだ一般的ではなかったのだろうと思います。

この時代、爽やかなソフトドリンクといえば、レモネードジンジャーウォーター

ジンジャーウォーターは、大量に汗をかいたお父さんが、水をがぶ飲みしてもお腹が冷えないようにという薬膳的配慮で、生姜とお砂糖を加えた飲み物だったようです。
ちなみに生姜は、生が手に入らないのでドライのパウダーを使っていました。
炭酸飲料が普及してくると、これが「ジンジャーエール」に取って代わられたのでしょう。「ジンジャービール」なんてのもあるのですが、「エール(ale)」は本来ビールを指す言葉ですから同じ意味です。(※ジンジャーエールはノンアルコールです。)

もうひとつ、エッグノッグ(Eggnog) をご紹介しておきます。
一言で言うなら、生クリームでつくった濃いミルクセーキ。よくラム酒やブランデー(またはウイスキー)、そしてナツメグが加えられます。
ローラの家(インガルス家ではなく、ローラが結婚してから築いたワイルダー家)のレシピは、ナツメグがたっぷりでノンアルコールでしたが、通常家庭でつくったものにはお酒がしっかり入っています。なので飲み口の良さから調子にのってお代わりしていると、酔っ払ってしまいます(経験者)。

私の知るアメリカでは、エッグノッグは、クリスマスのときにだけ作られていましたが、ローラの本には、クリスマスに限らず病気や身体の弱っているときにアルコールを加えて飲んでいたとあります。ちょっと日本の卵酒と似ています。
卵酒も湯煎で丁寧に作ると、とろ〜り濃度がでて似たような仕上がりになります。
スパイスの中でも温熱効果が一際高いナツメグとお酒を加えれば、更に身体が温まることでしょう。卵とミルクと砂糖入りで栄養価も高い。確かにエッグノッグは養生食ですね!(まあ、アルコール入りのところは臨機応変に・・ですが(^^;))

『小さな家の料理の本』で紹介されているのは、ローラ達が食べてきたものの、ほんの一部に過ぎませんが、そこかしこに生活の記録が散りばめられています。
こうした本も、時を得て、日本の日記文学に通じる貴重な資料となっていくかもしれません?

ローラの生きた時代、ビタミン、ミネラル云々だの「一日何品目」、「炭水化物は減らして」だのという考え方など有るはずもなく、手に入るものでお腹を満たしていた暮らしでした。
それでも、ローラのお母さんキャロラインは84歳、ローラは90歳まで生き抜いています。
一方お父さんの方は、66歳とちょっと早死。
腰まで水に浸かって幌馬車を引きながら川を渡ったり、吹雪の中で狩りをしたりと、無理を押して家族のために大奮闘し続けたのが影響したのでしょうか。
ドラマ上でメアリーは後に病気で失明し、盲学校の先生になるという展開だったと記憶しています。ドラマと原作は少し内容が異なりますが、メアリーも、早死にで、63歳で没しています。

「食の健康」「薬膳的食べ方」等と、選択的に食べることが語られる現代は、恵まれた時代なのだとしみじみ思います。でも、ローラ達が今の私達の食事情を知ったら「“食の安全” を心配しなくてはいけないなんて、大変ね!」と、思うかもしれません。

命と向き合い、生かされていることを実感できる暮らし。そして、食べ物に感謝しながら皆で食卓を囲む暮らし。料理そのものよりも、そんな暮らしの有り様が『大草原の小さな家』をより魅力的にしているのだと思う次第。

<あと1本書きますw>


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