中国ドラマの醍醐味は、食と毒薬・・もとい、食と生薬の存在感。
「如懿伝」にもいろいろな漢方薬が散りばめられておりました。
「如懿伝」にもいろいろな漢方薬が散りばめられておりました。
室内の虫除けには、薄荷と艾(よもぎ)と半枝蓮。
ヘビ除けに雄黄酒(撒いたり呑んだり)・・と、外用の漢方も。
白髪予防に、皂角(シナサイカク)などの薬剤に、梅の花についた雪解け水を加え、それに櫛を浸して髪をすく。
皇帝が最愛の妃の為に用意したのは「緑梅粉に密陀僧(白檀や竜脳、樟脳のような香り)、白蓮の雄しべで作られた白粉」。これはきっと効能云々というより思いを込めた心のお薬(化粧品?)・・・。
皇帝が最愛の妃の為に用意したのは「緑梅粉に密陀僧(白檀や竜脳、樟脳のような香り)、白蓮の雄しべで作られた白粉」。これはきっと効能云々というより思いを込めた心のお薬(化粧品?)・・・。
これらの信憑性はさておき、宮廷らしいエレガンスと、庶民とはかけ離れた世界観を醸し出しておりました。
お茶やお香にも宮廷らしさが演出されています。
「斎雲瓜片」というお茶が出てきます。
ドラマでは“胃をキレイにする” として、進呈されておりました。
「斎雲」は地名のようですので、「六安瓜片」のような緑茶 ではないかと想像します。
「六安瓜片」・・・明代には献上茶だったお茶です。
如懿がショッキングな事があった後に沈水香(=沈香)を炊いていると、海蘭が「蔵香(香にはホントはまだれが付く)を炊くべきよ」と言うシーンがありました。お香には強壮鎮静の効力があります。「強壮」といっても、興奮させるのではなく心を強くするイメージ。海蘭は沈香より効果が強いものを使うべきではと言ってるので、蔵香とは「蔵」=チベット→麝香に、丁香などのスパイスがブレンドされたお香かな〜??
沈香は、神経痛、関節痛、婦人科疾患にもよいとされています。これは、過度なストレスが自律神経系に支障をきたしているところを、香成分の働きにより交感神経と副交感神経のバランスを取って改善できるという作用を使って改善されるということなのでしょう。そういう働きは「理気」と呼ばれています。
その他お香では、富蔡皇后から贈られた腕輪に仕込まれていた零陵香なんてのもありました。ドラマでは不妊の原因になるとされていましたが、実際にはそんな話はないようです。
更に、ドラマで出てきた生薬をちょっとあげてみます。
● 玉竹人参:夜通し柩を守る青桜への差し入れでした。「玉竹(=アマドコロの根茎)」と「人参」だと思います。
● 瑠璃茉莉(るりまつり)と大血藤(だいけっとう):
ドラマでは、“湿気を取り除き身体の巡りをよくする” ---- 理気除湿効果をと、処方されていました。瑠璃茉莉は、青い花を咲かせる南方の灌木で、ジャスミンとは別モノ。
大血藤は、活血通経の効果があり、腹痛などにも使われるアケビ科のつる性の木の茎。
● 白薬:雲南から献上された止血効果のある生薬。
● 木通と甘遂:
舒妃のむくみに処方された薬に混ざっていた生薬。
ドラマ中では、腎が弱っている時の服用は禁忌とされている設定。
● 槐(えんじゅ)の花精油:
蜂蜜と練り合わせたものが、身体の熱を取るとして届けられていました。
槐のルチン効果?
● 紅花と牛膝(ごしつ):
ドラマでは、紅花牛膝汁という薬膳スープになって登場。「牛膝」は、ヒユ科のヒナタイノコヅチの茎の節。月経不調などに使われる活血通経止痛の生薬。利尿作用もあり、関節の疼痛などにも使われる生薬だそう。
● 凌霄花(ノウゼンカズラ):
如懿が冷宮で育てていた花。ドラマでは除湿効果(疼痛対策?)だったように記憶していますが、特に生薬としては使われていない植物だと思います。
さて、信憑性がビミョ〜なものも含みながら、中国らしさを演出(?)したところへ、ガツンと強烈なインパクトとして出てくるのが「毒薬」です。
● 辰砂(シンシャ):
硫化水銀からなる鉱物で、赤色硫化水銀、丹砂、朱砂などのこと。
日本でも、鮮やかな赤色顔料として「丹(に)」とか「朱」と呼ばれて、古くから用いられてきました。
https://sites.google.com/site/fluordoublet/home/colors_and_light/inorganic_pigment/cinnabar
日本でも、鮮やかな赤色顔料として「丹(に)」とか「朱」と呼ばれて、古くから用いられてきました。
https://sites.google.com/site/fluordoublet/home/colors_and_light/inorganic_pigment/cinnabar
コレ、赤チンに通じる成分なのです。
赤チンは、正式名を「マーキュロクロム液」といい、名前の由来は水星のマーキュリー(mercury:水銀)。水星は「辰星」と呼ばれていたのでした。
昭和生まれの元お転婆、両膝坊主がよく赤チンに世話になりました〜。)))
ちなみに、赤チンの後任として、昭和46年に登場した無色で滲みない消毒薬「マキロン」(山之内製薬)の名前も、マーキュロにから来ているんだそうです(!)。
ドラマでは、枚嬪や儀貴人が死産した原因が料理にもられた辰砂だと判明し、如懿が家宅捜査されてしまいました。後宮のお妃たちの「毒使い(生薬の副作用使い?)」は、終始ドラマに登場し、事件の鍵となっているのです。
誰が毒をもったか解っている。でも、それがどう解明されるか!? これはもう、誰が犯人か〜??と見るアガサクリスティーではなく刑事コロンボ系サスペンス。
食材に含まれる赤色は、ポリフェノールのアントシアニン等。小豆然り、赤は邪気祓いの象徴ともなったりしますが、鉱物の赤は、コワイですね。。。
ちょっとネタバレでゴメンナサイですが、ドラマ終盤に怜妃が賜る天下一奇毒「鶴頂紅」。丹頂鶴の頭頂部の赤からは、猛毒の物質が採れるという俗信からの名前のようですが、「鶴頂紅」=「丹毒」は、毒物の極み、三酸化砒素のこと。砒素なら一発致命の猛毒薬!!
こんな危なっかしい薬物も、権力者の鶴の一声でいかようにもされるのかと思うと、ああ・・・魔宮、後宮、くわばら、くわばら・・・・。
おっと、あくまで「もしかして、こんなこともあったのかな〜??」のドラマです。
いやはや、漢方薬は、時代を問わず、中国ドラマを彩る名脇役(脇薬)なんですね♪
いよいよ最後(・・にしたい!)。次回は「ザ・料理編」です〜 <つづく>
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