最低10日は寝かせないと、目指す全体がねっとり「ドライフルーツの羊羹」状態にはならないのであります。
私のイメージするフルーツケーキは「ドライフルーツ入り」ではなく、ドライフルーツを食べる為のケーキなのだ。
濃い出来上がりなので、5㎝四角ぐらいの小さめの型で焼き、薄くカットして頂きます。
なんとか12月頭の料理教室に間に合わせ、皆さんに一切れずつ。)))
残りは更に熟成を重ねています。
ところで、クリスマスのお菓子。
所変われば品変わる。
クリームを塗りたくった柔らかいケーキを頂くのは、日本ぐらいで、欧米では保存食の名残を感じるシックなお菓子が多いようで・・・。
●シュトーレン stollen(独)
お馴染みシュトレーン:キリストのゆりかごを模ったなんて、いわれていますが、ドライフルーツとバターをイースト生地に練り込んで作られます。クリスマス前から少しずつスライスして食べるもの。その歴史は14世紀に遡るのだとか。長期保存型のパン(お菓子?)。パンかお菓子か論争の代表格ですが、お菓子屋さんよりパン屋さんで見かけることの方が多いですね。
●クグロフ Kouglof(仏)
形は違うけどこれにちょっと似た感じのクグロフは、ドイツとフランスの国境に近いフランス・アルザス地方やオーストリア、スイスで食べられるイースト菓子。名前はフランス語・・・なんですね。陶器の型で焼くと、熱伝導が違うのでしょう。表面の焼き色の感じがなんとも・・なんとも美味しい!
●パネットーネ panettone
クグロフのイタリア版ともいえるのが、パネットーネ。アドヴェント(待降節)になると家庭で作られる伝統菓子。パネットーネ菌を用い、日持ちがいい。
そして、ルーツを探るとこれらのヨーロッパ菓子よりももっと古いかもしれないのが、レープクーヘンにパン・デピス。
中国(宋)からモンゴル〜十字軍を介してヨーロッパ各地に広まったといわれるお菓子です。
「パン・デピスの道はシルクロードと同じぐらい重要」とは、最も著名な食文化史の第一人者、マグロンヌ・トゥーサン=サマの著書にある言葉。
小麦粉と蜂蜜、重曹からできるシンプルな滋養食だったミー・キン(ミー・コン)が、当時勢力を増し領土を広げていたモンゴル軍の手に渡り、トルコ〜東ヨーロッパの諸民族、ヨーロッパへと広がっていき、様々に姿形を変えて根付いているお菓子。
途中から、スパイスも加わり特色のあるものに。
食文化の伝播の面白さが凝縮しているようなお菓子なのです。
以下、ミー・キンが、パンデピスに至る中で、生まれたお菓子を揚げてみます。
●レープクーヘン Lebkuchen(独)
ボーロのような、クッキーのような・・・お菓子の家は、この生地で作られます。
●スペキュラースspeculaas/speculoos
オランダやベルギーでニコラオスの日(オランダでは12月5日、ベルギーでは6日)に食べられていたクッキーの一種。ニコラオスは、サンタクロースのオリジナルですから、これもやはりクリスマス菓子ということに。
味、ほとんどレープクーヘンと変わらない(笑)。お隣ですものね。
ジンジャーマンなんかもこれらから派生しているお菓子のようです。
また、そのスウェーデン版が ペッパーカーカ /pepparkaka。
●パン・デピス Pain d'epice
終着点で、パン・デピスに。すっかりフランス、ブルゴーニュ地方ディジョンの伝統菓子という確固たる地位を維持していますが、このお菓子が生まれた13世紀頃は、まだフランスではなく、ブルゴーニュ公国です。ディジョンはその首都だったところです。フランドル地方、東ローマ帝国の時代です。当時の宮殿は今、美術館になっています。町全体が映画のセットみたいだったのを思い出します。
●ボーロ・レイ Bolo Rei(ポルトガル)
これは、珍しくスパイス味ではありませんが・・・海路から伝わった??
あまりに素朴な材料で、どこでも生まれそうなお菓子なので、もはやルーツ云々とうんちくを語るには足らぬ代物かもしれませんが、なんだかロマンを感じます。
いずれにしても、パン・デピスに似たお菓子は名を変え姿を変え、いろんなところに存在するのです。
こうやって見ていると、異色を放っているのが、イギリスの「クリスマスプディング」ではないでしょうか?
●クリスマスプディング
先ず、蒸し料理(菓子)であること。たっぷりの洋酒漬けドライフルーツと油脂(牛脂)やパンくずを何時間も蒸して、羊羹のようにしてしまうのですから、なんとも大胆不敵な輩です。そして、何年も保存できる!!
蒸して、中の酸素を完全に抜いちゃうんでしょうね。)))
最後にスペインのポルボロン。
●ポルボロン Polvoron
こちらもなかなか古いお菓子です。7世紀のペルシャのお菓子が起源とか。スペインはアンダルシア地方発祥のお菓子です。実はあんまりクリスマスを感じさせないお菓子なのですが、バターの代わりにラードが使われていて、スペイン異端審問の時代に隠れユダヤ教徒やイスラム教徒を見つけるための踏み絵的な役割をしたという説もあるらしいのですが、信憑性のほどは如何に??
ポルボロンのポルボは、粉、ちり、ホコリを意味する語。粉雪のような口溶けが特長のお菓子なので、ほろっと溶ける食感をこう表現したのでしょう。
中世。食糧を維持して生きるのが大変だったんだな〜〜〜と、クリスマスのお料理を見るだけでもひしひし伝わってきます。
お菓子ですっかりヨーロッパ旅行した気分になりました。
さて、熟成を得たフルーツケーキを薄〜く切って、美味しい紅茶をいれましょうか。
(実は私、クリスマスはケーキだけ。お祝いはしないのでアリマス。)
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