晩餐会の料理は、食材の買い付けからはじまります。
パリで手配し、運び込まれた「食材」には、生きたままの鶉や、牛の頭、鶏のもみじ(足先)、キャビアにチーズ、ワイン等々・・・。そして、極めつけが、生きたままのウミガメ(!)。今ではワシントン条約で取引禁止になっていますが、この頃はまだ「食材」でもあったのですね(!)。
ルター派の村人たちには(でなくても?)、度肝を抜かれる食材ばかりで、バベットの料理の仕込みが「魔女の仕業」に見えたのも無理からぬことです。
さて、晩餐会の料理内容は下記のとおり。
○ウミガメのスープ
○キャビアのドミドフ風 ブリニ添え
○鶉のパイ詰め石棺風 フォアグラ詰め トリュフソース
○季節のサラダ
○チーズの盛り合わせ
○ラム酒風味のサヴァラン フルーツのコンフィ添え
○フルーツの盛り合わせ
○コーヒー
実は意外にシンプル。
でも、火元は薪木が燃料のオーブン、調理器具も殆どが木と陶器、食材は、「生き物」をシメるところから、水も井戸水を汲んで瓶に溜め込んで利用・・・といったあの当時の台所事情を考えると、レストランと同じ料理を、ひとりで作るのですから、大変な労力と時間が使われたことは想像に難くないところです。
一連の超アナログな台所事情を観るのも、密かに面白いポイントかもしれません。
調理道具としての陶器や匙等々、これぞホンモノの「民芸」です。
そうそう、晩餐会のお料理に使われる食器は、バベットがパリから買ってきたものとお見受けしました。
姉妹の家には、グレイの陶器のお皿が壁に掛かっています(ティータイムなどのシーンで出てきますので、ご留意ください)が、それではなく、絵柄のついた磁器が使われていました。
改めて、映画を観た後で、30年前には気に留めなかったところがいろいろ見つかりました。
バベットはシェフでしたので、自らワインを選ぶことは無かったはずですが、彼女はお酒もいろいろ買い付けてきています。
晩餐会で出されたアルコールは。。。。
食前酒 ○アモンティリャード(ミディアムドライのシェリー酒)
最初のお酒 ○1860年のブーブクリコ(シャンパン)
ワイン ○1845年のクロ・ブジョ(ブルゴーニュの赤ワイン)
食後酒 ○ハイン フィーヌ・シャンパーニュ(コニャック・ブランデー)
シェリー酒の年代も知りたいところです。
ん!? 1860年のシャンパーニュを1886年に・・・!??
そのシャンパン、もう枯れてますがな。シャンパンは、そんなに長期保存出来ないはずです。どんなにガンバッテも、美味しくいただけるのは5年〜10年までではないかと・・・。クロ・ブジョは、41年モノ。これもヘタすると枯れていそうなくらいのビンテージですがな。ちょっとやり過ぎな気もしますが、19世紀最高のヴィンテージとかなんとか(?)、"最高級"を表現する為の何らかのこだわりがあったのでしょうか??
・・・とまあ、こんな具合にお酒については、少々突っ込みどころがアリマス。
そういうところからしても、この映画はやっぱり料理がテーマではないと思うのです。
バベットの粋なお金の使い方、運命と決断。世の盛衰を目の当たりにしてきたバベットだからこそ出来たことかも知れません。そして何より「芸術は人々の心を解き放つ」ということを最もシンプルに可視化したラストの食事シーン。
こんなところが、この映画の味わいかと思いますが、いかがでしょうか?
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