2016年7月5日火曜日

『ノーマ、世界を変える料理』


  写真:http://www.fashionsnap.com/news/2016-02-08/noma-movie/gallery/より


『ノーマ、世界を変える料理』(於・シネツイン)観に行きました。

ノーマという北欧デンマーク・コペンハーゲンにあるレストランのドキュメンタリー映画。
多くの人の最初のインパクトは「北欧が世界一!?」ではないかと思います。
私も然り。だって、北国のイメージは・・・長い冬・・白夜・・・& 保存食?
しかも、北欧の食材だけで構成させることをテーマに掲げているレストランだという。

正直言うと、映画のチラシやポスターにあるお料理の画像から「私の好みじゃないかな」というのが第一印象だったのでアリマス。
工作のようなお料理。温かいの? 美味しいの?? 食べにくそう。
ハーブやお花をそこかしこにあしらったプレートには、和食の皿に取り入れられた季節を演出するための切り取られた自然とは異質のモノを感じましたし、★星の格下げに自殺するシェフまで出る現代の料理界の頂点を目指すお話でしょ・・・と。

カリスマシェフ、レネ・レゼビ。

   野心家かな? 
   前衛的な趣向を持つ料理人かな??
   ミシュランの世界、ちょっと覗いて見るか。

そんな気持ちで臨んだ映画鑑賞でした。

ピンセットで盛りつけされるエクスペリメンタルな料理シーンが続きます。

   お料理もここまできたのね。
   こうやってみると、日本の盛り箸って優れモノね。

ナレーション代わりに、4年掛かりの取材から引き出したシェフの名言が続きます。

   "味は場所と密接に結びついている"
   "節度ある量を消費する”
   ”美味しいと感じるのは、自分と繋がることが出来るものがあるからだ”

レネは、マケドニア人(旧ユーゴスラビア構成のひとつ)ムスリムの移民です。
これはなかなかの逆境なのでは??とも思いましたが、村の人達や家族の中での垣根のない温もりの中で生きてきた彼のルーツであり、風土や文化の違いも、身を持って知っているというということかもしれません。異文化に過剰反応する人々や差別はものともしない逞しさは、そんなところに支えられているような。いや、それらが彼の負けん気で冒険的精神を培ってきたのかも知れません。

食材への思い、シェフの理念がf-word (f○○k'in...という言葉)と共に雄弁に語られます。
なかなかヤンチャなシェフであります。

その勝気さヤンチャぶりは、スタッフを鼓舞するミシュラン授賞式でのスピーチに凝縮されています。

レネの口から発せられた言葉。
   "micro seasons"
   "perfect storm"

北欧バージョンの二十四節気七十二候をレネがロックに表現する!

・・・なーんちゃって。

perfect storm は、オバマさんのスピーチにも使われた言葉ですが、決して大きくはない事象が重なり重篤な状況になることを象徴する言葉で、perfectが逆説的な意味で使われています。

連打される言葉の数々の中にも、レネの勝気さと繊細さが感じ取れます。

自然も民族色も豊かなマケドニアから、厳しさ半端無い北欧に移り来たレネの、更なる挑戦状のようにも見えまする。

   "三つ星よりも三人の子供に恵まれたことの方が、僕には価値がある"

   “世界一を投票で選ぶということ自体、ナンセンス。世界一の色を決めるのと同じ事だ。今年の世界一は、黄色です! 今年は赤が多数票を獲得!といっているのと同じこと。"

なかなか上手いことおっしゃいます。


このレベルの競争世界については全く疎い私のつたない感想だけではあまりに申し訳ないので、最後に
業界の要人によるコメントで気に入ったものを少し抜粋して終わりにします。


   "パンクなスピリッツで野趣と革新とエレガントが同居する料理を創作するレネ・レゼピ。" - - - - 南馬越一義(BEAMS創造研究所)

    "Artの許されぬことは、すでにあるものの繰り返し、と「模倣」。 命育むCuisineの許されぬことは「リスク」。" - - - - 土井善晴(料理研究家)



それにしても、海と空が一体となった嵐の映像、北欧の自然、綺麗だったなー)))。


シネツインでは、間もなく『バベットの晩餐』(1987年)も上映です。
19世紀のデンマーク、油とランド半島の物語。
レネのレストランがあるのは150年前はこんなところだった・・・!と思って見て頂くと、一層感慨深いものがあるかもしれません。



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