市場を一回りし、手にはマグロのカマ、野菜(野菜だって一束一パックから買える)、本。魚河岸横丁の一角にある書籍部は、狭い店舗ながらも飲食業関係者を対象とした料理本や雑誌に特化されており、料理関係なら欲しいものを見つけやすい。以前ブログに書いたお魚カルタも、こちらで買える。
一通りの買い物を済ませたら、お腹もペコペコにーーー。
10時頃になると、飲食店に人が集まり始める。私もここで、遅い朝ご飯をいただくことにした。
鮮度、素材が売りの軒の中でもお寿司屋は、一番の人気。真っ先に行列ができる。
列に並ぶ余裕もない胃袋を抱えた私は、あんこう屋「高はし」の暖簾をくぐった。
高はしは、魚料理の定食がおいしい。刺身、焼き魚、穴子丼、煮付け、あんこう煮等々、その日のお魚で造る料理に、ごはん、お新香、みそ汁を合わせた定食も頂ける。毎日通っても飽きの来ない料理で魚河岸で働く人々の胃袋と心を満たしている。
カウンター席12-13席。肩幅ほどののスペースで、まるで屋台のよう・・・。左隣には、一仕事終えた風の長靴姿のおじさん。注文も「いつものヤツ」の一言で、ごはんの量までおじいさん向きの定食が運ばれてきた。どんぶり飯に生卵をかけて掻き込んでいる。70近いかと思われる風貌だが、力仕事に従事する現役男性の豪快な食べっぷりだ。
右隣は・・・3人の若い男性。金目鯛の煮付けとお刺身の定食と、穴子丼、太刀魚の塩焼きを、慣れない様子で注文し、運ばれてきた料理の皿を珍しそうに3人で回しながら食べていた。
私は・・・まだちょっと時期が早いけれど、あんこう煮定食を・・・・。
間もなくどんぶりの汁物とどんぶりの御飯、みそ汁、お新香が運ばれてきた。
汁物が重なるので、右隣で単品の穴子丼を食べている男性にみそ汁を食べてもらうことにした。
「良かったら、これ(味噌汁)どうぞ」
「あ・・、ありがとうございます!」
「学生さんですか?」
「あ・・、そんな風に見えます?嬉しいな。会社が近くでして・・・夜勤明けなんですよ。」
朝日の整理記者さんかな?
3人全員がお味噌汁付き朝ご飯になり、朝の胃袋も安心感がましたところで、
「あの・・よかったら、これ一口どうぞ」と、金目鯛の煮付けを私に回してきてくれた。
「あ、これもどうぞ」
今度は、穴子丼が回ってくる。
遅れて運ばれてきたぶっとい太刀魚の塩焼きは、ちょいとお醤油をかけてそのまま私の前に・・・。
「じゃあこれも・・・」と、私も追加で頼んだお新香を回す。
ローテーションに加えて貰い、しこたま出身地やお国自慢混じりの美味しい話に花を咲かせ、4人で舌鼓を打った。
食べ物を共有すると、何故か会話も弾んでくる。
行きずりの人情に気をよくしている内に、気が付いたら「ちょっと多いかな・・」と思っていたどんぶり飯を平らげてしまっていた。
食事は、やはり大勢で頂くのが食欲も美味しさも増すというものだ。)))
一杯のかけそばならぬ、一杯のみそ汁。すっかり温まった心と体。いい一日のはじまりを予感した。
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