2019年8月12日月曜日

クレオパトラと毒薬

夏闌の8月。デパートのブランドショップは、なんとウールのコートのディスプレイ(@@;)。「早すぎだよ〜〜!」と思いながらも翻って、私も今のうちに、秋冬の企画を出しておかねば!と、衿を正す。・・って、この暑さで、着ているのは衿なしアッパッパワンピースばかりなのですが。

精一杯の想像力で年末のお料理や茶会のテーマにお茶選び・・・の、その前に、今どうしてもやっておきたいのが、世界史の復習。
もはや料理のことだけ考えていては、料理もお茶も分からない!!
今世の中で起こっている様々な問題も、「そもそも論から知らなくては」という思いにも駆られます。
令和元年って、そんな年。
今を素通りしていたら、もう後が無い、取り返しが付かない。そんな世の中への危機感いっぱいの年のように感じているのです。
ピンチはチャンスとも言うから、これがいい転機となるよう祈りつつ・・・。

さて、昨今の発掘調査の飛躍的進展ぶり!!
最新科学の力で、次々と明らかになっていく古代の神秘!
先般も、東京国立博物館『三国志』展を見に行ってきたのですが、2009年に発見された曹操高陵(中国河南省)の出土品が幾つか来ていました。三国志といえば、時代は2−3世紀。『三国志演義』は、3世紀に書かれた歴史書『三国志』を元に、明代(14~16世紀)に想像力で膨らませてロングストーリーとなった不滅の大ベストセラー。
英題は『Romance of Three Kingdoms』。今も多くの人のロマンを誘います。
(ロマンスには、空想小説/作り話という意味もあるのです。)


高陵で見つかった曹操のものと思われる棺の中の骨の分析で、顔が復元されたり、持病(頭痛の伝説)の信憑性などもわかってきているのだそう(!)。

トルコのアナトリア地方の発掘調査でも、トロイの神話の根拠が見えてくるような発見があったり、リアリティが増すと共に数千年という時間がググッと縮まってきています。

時には、私の怪しい中年雑学の知識や旅の記憶が微かにリンクしたりすることもあり、そんなところも、ひと歳とってからのお勉強の面白さ♪
ついつい、寄り道も増えてしまってなかなかスピーディーにはいかないのですが・・・まあそれもじっくり関われるところも熟年勉強の旨みです。

歴史は、自分が興味が或る人や時代、ちょっと知ってるところから、その前後を探っていくと、芋づる式に知識が広がる気がします。
ブログでは、そんな、あえて脱線した「寄り道」部分を、出していきたいなあ。))


今日の「寄り道」は、今更いまさら・・の「クレオパトラ」。
一昔前の映画では、絶世の美女の誉れ高き女優さんが演じてきましたが、実際は美人かどうかは不明なんだそうですね。デスマスクのような再現をテレビで見たときは、鼻筋が太くてちょっと男性的な印象でした。
何カ国語も使いこなせる知性と教養の持ち主であったのですから、復元のお顔では表現できないカリスマ性とオーラに溢れていたことでしょう。また、当時最高レベルの文明を築いていたエジプトの富を纏っていたはずですから、服飾も美しい印象を増長していたことと想像します。
美容の為に酢に溶かした真珠を呑んでいたとか、絨毯にくるまってクーデターの中脱出してシーザーの元へ現れたとか、最期も美しく毒蛇(コブラ)に胸を咬ませて自害したとか、伝説も多く、映画ではここが華よと描かれています。最初の真珠を呑んだ話は、賢いクレオパトラなら大いにあり得そうな演出だけれど、後の二つは、あり得ないらしいです。

殊、蛇の毒については、神経毒故、即死どころか、数時間〜数日苦しんだ末、最終的に呼吸困難で死ぬらしいのです。キングコブラだと数時間、エジプトに生息するアスプコブラの毒だと数日も掛かるとか!!
キングコブラ、ギャオ〜〜!
しかも、3mにもなるヘビは伝説にある「無花果の籠」にはとても入らないw。
だから、蛇の毒ではなく、服毒自殺であったというのが通説です。

さて、その毒とは・・・!!
 アヘン、ドクニンジン、トリカブトの混合薬 (“Hemlock, mixed with wolfsbane and opium”) であったろうと、古代の医学に関する文献を調査したドイツの歴史学者クリストフ・シェーファー (Christoph Schaefer) 教授。
http://edition.cnn.com/2010/WORLD/europe/06/30/cleopatra.suicide/index.html

アヘンは、昔は毒とされていなかったようですので、苦しまないように調合されたのかな??(古代中国の薬学書に、水銀やアヘンがしばしば高級なお薬として記されていたりします。秦の始皇帝は不老不死を求めて水銀を服用し水銀中毒で亡くなったとも。阿片もかなり後世になるまで、頓服のような形で使われるお薬だった。)


40年近く昔の里中満智子さんのマンガ『クレオパトラ』で、死刑囚を実験台に、女王が美しく死ぬための毒薬研究をしているシーンが描かれていましたが、あんな風だったかもしれません。(・・・と、帝政ローマのプルタルコスが書き残しており、それを元に描かれた絵画も有名になったらしい。漫画家さんて、ほんと専よく調べていらっしゃる!!)
阿片とドクニンジン、トリカブトの薬が、果たして“quiet and pain-free death” となるのか??

トリカブトは、根、葉、茎、種、花や蜜にまで全てに毒があり、葉っぱ1枚で致死量という猛毒。
昔の毒矢は、このトリカブトを使っていたらしいですが、皮膚からも毒が入るので、触るのも憚られる。毒を仕込む方も、さぞやハイリスクだったことでしょう。


漢方名は、附子(ブシ)。

「一説では、トリカブトの毒にやられた人が苦しみもがく形相のように歪んで見苦しい容姿のことをたとえて “ぶし” と呼ぶように也、それが現代語の “ブス” の語源になったとか?」https://tenki.jp/suppl/kous4/2016/10/12/16361.html

猛毒ですが、真武湯、桂枝附子湯、八味地黄丸等々、漢方薬の配合で、附子が微量使われているものも少なくありません。

トリカブト。これもやっぱりもがき苦しみ・・・ “ブス” になっちゃうではないか!
ブレンドされた阿片が、その苦しみをどの程度抑えてくれるのか・・・???
はたして、クレオパトラは、本当に「美しく死ぬ」ことが出来たのでしょうか??

最後に、マイコレクション、シネマアルバム⑰⑱(芳賀書店)より、不滅の美しさ、二人のクレオパトラ画像を♪

1963年制作『クレオパトラ』のエリザベス・テーラー
1945年制作『クレオパトラ』のヴィヴィアン・リー

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