夏はアニメ、TVでジブリが恒例となっていますね。
ジブリ映画では『もののけ姫』が一番好き。テーマも、時代も、音楽も。(美輪さんの声も!)
今夜は『千と千尋の神隠し』でしたが、つい・・やっぱり見てしまいました。
一番好きなシーンは・・・もちろん最終の龍(ハク)が迎えに来て龍に乗って帰るところ。そして、腐れ神(かと思われたが実は名のある川の主)が薬湯に入って回復し、帰って行くところ。
能面の翁顔のおじいちゃん神様。お風呂の背景も能舞台みたいです。
要するに、龍の絵が好きなのだ。
龍が河川の神様という設定も素敵です。
水は命の根源。海よりも河川の恩恵を受けてきた中国らしく、その遡る水源は、天空の海とも賞される湖もありヒマラヤ以北に広がる「世界の屋根」チベット高原。
龍は、雲をおこし雨を降らせもする自然界の偉大な水の力。高貴で勇ましく、力強いイメージで、皇帝は龍の子孫とされています。物語の中の川の神様も、そんな中国の伝統的な意識から発想を得ているのでしょう。
春秋戦国時代以前の龍は、足が無い絵が殆どだったそうですが、後世で足(ちょっと鶏っぽい足ですw)が付きました。
映画では、手足が付いた龍です。鬚も長くてエレガント〜。
ちなみに、龍の顔は、ジブリではオオカミのような、どちらかというと犬系のカッコイイ顔にスッとシャープでインパラのような角ですが、中国の伝説では龍は「鹿の角、牛の顔、大蛇の体に魚の鱗、鷹の爪を持ち、口ひげが生え、顎の下には珠がある」姿の生き物とされています。(「鶏の足」という描写はない??)
ファンタジーの中で目一杯シンボリックに描かれた河川の汚染や開発という名の下に行われる自然破壊。「沼の底」駅は、ダムに沈んだ町のイメージでしょうか。
大人の為のアニメはやっぱり深い。
そうそう、釜じいの扱う漢方薬について。
①釜じいがリンに渡した「イモリの黒焼き」
@台北:漢方薬局で |
イモリは、滋養強壮の生薬。
日本では黒焼きが「惚れ薬」なんて呼ばれたりしたらしく、それがアニメの中でも描かれています。中国漢方だとこんな感じ(写真)。
強壮剤なので、雄雌対でくくって売られています。(「黒焼き」にはされていません)
漢方版バイアグラをこんなアニメに偲ばせるなんて、宮崎駿監督、何を考えているんだw。でもこれ、実は『千と千尋・・』は、「少女が娼婦に身を落として親の罪を償う」というのが元々の発想にあり、「湯女(ゆな)」も「娼婦」の隠語なんだという。
エグい設定をファンタジーというオブラードにくるみ、観客に謎掛けしてくる宮崎駿なのでした。
②ミミズの干物入り薬湯。
ミミズは、解熱の特効薬。生薬名は「地竜」(!)。
なかなかカッコイイ名前ですが、これ、オオミミズの乾燥です。
アニメでは粉末を薬湯に加えていましたが、そのままもどして煎じたりは・・・したくないなあ〜。
血圧降下、解熱、鎮痙、利尿、解毒薬としての効能があるといいます。
人間社会の汚物にまみれた神様が「油屋」に清めに来て入る薬湯ですから、生薬もちゃんと解毒のものを選んでいる(!)。 流石!
③苦団子。
何の生薬かは不明ですが、こちらも解毒剤のよう。解毒力のある食べ物は苦味のものが多いのです。同時に熱(炎症)を取ったりもします。
苦団子を食べさせられた「カオナシ」は、食べあさったものをぜーんぶ吐き出して元の無害な状態に戻りますし、龍姿のハクも、苦団子を食べさせて、魔女の印鑑を吐き出します。
昔の人ならこれらの描写の指し示す意味も、すぐに理解できたでしょうけれど、私達には、理解にちょっとワンクッション入ってしまうことも多々あります。
『千と千尋…』は、社会の入り口にいる若者へのメッセージをふんだんに盛り込んだ大人のアニメ。でも、もちろん子供も楽しめる作品。
映画にしても小説にしても、いろいろ盛り込まれていたとしても、見る側、読む側は、受け取れるところだけ受け取って、解るところだけ解ればいいのではないかと思ったりします。
また何年かして見た時、異なるメッセージを受け取ることが出来るーー。
読み返した小説に、違う面白さを見つけることができるのと同じようにーー。
それでいいのでは?
小さな子供に「イモリの黒焼きって何?」て聞かれたら、どう答えよう??
そんな試練もまた一興。大人の試練かも。
PS:先のブログ、三国志についての説明に、一部誤りがありました。
訂正を入れて更新済ですが、その前にご覧になった方、大変申し訳ありません。
是非また読み返していただけたら幸いです。
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