2020年1月12日日曜日

『白鯨』

ゴロンしながら、映画(amazon prime)を観ちゃいました。
『白鯨との闘い』(In the Heart of the Sea)   /2015年 監督:ロン・ハワード

ある捕鯨船に乗り込んだ航海士と鯨漁と怪物白鯨との遭遇と、漂流の回顧録として描かれた長編小説『白鯨』(1851年/ハーマン・メルヴィル著)が原作。

時代は石油資源が開発されるちょっと前。
アメリカ東海岸の町は、鯨油による街灯で明るく灯されて・・・
浮かび上がってくるのは、この時代の身分、家柄による支配と、自然の驚異や漂流のリアリティー、そして己の宿命と闘う人間模様。そして、私感ですが、ジョン万次郎!
ジョン万次郎は、14歳(1841年)の時、こんな捕鯨船に助けられたのか・・・と。
そして、この映画の主人公でもある(船長になり損ねた)一等航海士チェイスみたいなホイットフィールド船長と出会ってアメリカへ渡ったのか・・・と。
また、この映画で描かれた90日にも及ぶ飢えと渇きの漂流シーンは、もちろん鳥島でのジョン万次郎も経験した(ジョン万次郎は143日間を鳥島で生き延びた!)し、死の境で丘にたどり着いた時の様子は、時代はちょっと遡るけれど、江戸初期、アメリカ開拓中のオランダ貿易船に乗り込んだイギリス人水先案内人のウィリアム・アダムス(後に三浦按針の名を徳川家康から賜る)の、日本漂着のそれを彷彿させるものでした。
ウィキより拝借
ウィリアム・アダムスの乗船していたリーフデ号は、捕鯨船ではなく、アジアのスパイス等の貿易を目的とする商船。スペインから独立したばかりのオランダは、スペイン経由で手に入れていた物資を自ら入手しなければいけなくなり、リーフデ号はそんな使命を授かった船だったのです。他の商船数隻と共に極東へ向かうことになりましたが、この航海は、途中スペインやポルトガルに拿捕されたり、嵐で沈没したり、立ち寄った陸地でインディオに襲われたり疫病をもらったり、ビタミンC欠乏症の壊血病に掛かったりで、惨憺たるものでした。それでもウィリアム・アダムスの一行リーフデ号のみが辛うじて日本に到着(漂着)しましたが、110名いた船員は、到着時24名、最終的に生き残ったのは14名だったといいます。

大航海時代、開拓時代・・・と、華々しい響きの現実は、大博打の一攫千金目的に大海原に飛び出す命がけの船旅。船の中で疫病が発生しようものなら、「幽霊船」と化し海上を漂い続けることになります。そんな中から『パイレーツ・オブ・カリビアン』などの映画の発想も生まれたのでしょう。

とにかく、15世紀以降のヨーロッパは、こんな荒々しいダイナミズムで溢れかえっていたのですね。)) 

「白鯨」に出てくる一等航海士は、映画ではチェイスという名前ですが、原作では「スターバック」という名前。ハイ、あのスターバックスコーヒーの名前の由来です。
コーヒーで、世界進出!といった心意気なのでしょうか。

ちなみに、捕鯨はスペイン、ポルトガルでは11世紀頃始まり、13世紀頃にはかなり発展していたよう。大西洋の比較的近いところでの捕鯨ピークは16世紀半ば。この小説にある19世紀にはイギリス、アメリカが台頭しましたが、この頃はもう鯨は激減し、ハワイ沖まで漁に出ていかなければならなかったそう。ジョン万次郎らを乗せたジョン・ハウランド号も、ハワイに立ち寄りました。ハワイからなら、極東日本も近い。開国を迫られるのも無理なからぬことでした。

「白鯨」の出版から2年後の1823年、ペリー来航。
世界のうねりの中に、日本がのまれていく序章です。

映画の邦題『白鯨との闘い』の「闘い」が「戦い」でないところ、名訳。
オススメ!!

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