2018年7月31日火曜日

辰巳芳子『サワコの朝』より

『サワコの朝』に、辰巳芳子。

「料理研究家」と、ざっくり言われがちですが、作家で生活史研究家の阿古真理さんの辰巳芳子評を借りるなら、
「食の思想家 辰巳芳子。どんなレシピを提供するかより、どんな発言をするかで注目を集める人。食を入り口に、人の生き方、社会のあり方まで視野を広げて発言する人。」

新しいレシピや作り方、献立のアイディアを生み出すところで勝負する人ではない。わずか30分足らずのトークの中でも、そのことが顕著に出ています。

(サワコ持参のしいたけスープについて)
「こういう味のものを作ろうと思わないこと。食材(この日はしいたけ)の命をどのように、損なわないで頂けるか。そういうことなんだ(!)」
「シイタケ、ふかした方が、ごきげんがいいな〜」と・・。他人と違うオリジナリティーを作ろうなどということは要らない。何をどのように食べたらいいかということを、もっと根本的に考え無ければいけない」



新しい料理の作り方や献立のアイディアが巷に溢れる昨今。
いろんな方々の智恵やアイディアへのアクセスもぐっと簡単になった。

   ・・・で、料理は美味しくなっていってるのか?
   進化しているのか??
   健康的になってきたのか????

   日々違う料理を作ったり、食べたりすることは必要なのか???
   作って見たい料理、食べてみたい料理は増えたか??

大いに疑問が湧く現世に、この方の言葉がグッと響きます。


   豊かな食卓  貧しい食卓

   異国情緒溢れる豪華な食卓イコール豊かな食卓なのか?
   孤食、買ってきた総菜、コンビニ弁当などの「製品」の食事が、貧しい食卓なのか?

90歳を過ぎて今尚、社会の変化に敏感に、食と社会の関係を捉えて発言を続けておられます。いや、1世紀近くを生きてこられたからこそ、物事の推移が捉えられるのかもしれません。
いろんな価値観に触れ、ご馳走や贅沢も知り、また戦争体験も。。。
特に、戦争体験というのは、あらゆる物事の本質を掴むセンサーを育てるのでしょう。

「食べることは生きること」という根本から、離れつつある所もある昨今、食の安全や食生活の大切さをなおざりにしない取り組みが大切になっていると確信します。 

一見難しく聞こえるかも知れませんが、その答えも、シンプルに
「食材と対話すること。まずどんな食材かを理解し、その上で、法則に叶った入れ方をする」
・・・と。

辰巳先生談の中で僭越ですが、「自分の体との対話」も、ココに加えたいところです。
体は正直で、良くないモノ、意味の無いモノは、とかく「飽きる」(または、麻薬的にアディクティブになってしまう!?)ように出来ている気がするのです。


「薬膳」とか「アーユルベーダ」「ヨーガ」とか「マクロビ」とか、「フレンチ」「イタリアン」「チャイニーズ」「和食」・・・巷に展開している様々な食と健康のアプローチ。どんな切り口であっても、本質のところをしっかり踏まえることの大切さを、しみじみ考えさせられる今日この頃です。

せわしない時代。急がば回れの「根本に帰る」思考を唱える辰巳先生でした。






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