2018年11月28日水曜日

井桁シェフのご本『現代に生きる老四川』 ①

インド料理談も未だですが、それはちょっと後回し。
先に、私の敬愛する方々のご本をご紹介したいと思います。

NHK 朝イチ月一回の三シェフ競演で中国料理を担当していた方といえば、ピンと来る方も多いのでは。テレビ側の無茶ぶりテーマ(?)にも穏やかな笑顔で対応し続けておられた井桁良樹シェフ。8年間の出演を経て、全国でもすっかりお馴染みになられましたが、この度、渾身の本を出版されました。
『現代に生きる老四川』旭屋出版。
(「老」は「昔ながらの」の意。)

井桁さんは、四川料理を主軸に置かれる中国料理人。現在、麻布十番と銀座三越、六本木ヒルズ『飄香(ピャオシャン)』のオーナーで、自身は麻布十番で鍋を振っておられます。
中国料理一筋の47歳。日本で料理修行の後、本場の料理を学ぼうと上海に渡り、四川省成都の由緒ある名店「松雲澤」へ弟子入り。「授業料を払いながら働き続ける」覚悟の学びで、本格四川料理を習得されました。多種多様な四川のお漬けものをはじめとする家庭料理も、どっぷり現地の食文化に浸って学び取られたものだけに、実に奥深く、かつ、幅広い!!

私が初めて「飄香」に伺ったのは、十数年前になります。当時は代々木上原の、とあるビル地下にありました。
細い階段を降りると、すぐ目の前が厨房で、額に汗して鍋を振るシェフの姿があり、その一角には、井桁さんが中国から抱きかかえて持って帰られたという「泡菜」(水床で浸ける中国のお漬けもの)の大きな壺が鎮座しておりました。壺の中のお漬けものを、取り出してはお料理に使われる・・・そんな様子がうかがえるお店でした。

その頃から井桁シェフのお料理は、(中国料理入門者だった私には)実に画期的で、いろんな味を楽しみながら「本当の中国を、私は知らないんだ・・!」と、何度も感じました。
麻布十番に移り、佇まいが一変。素敵な租界式になった今も、行く度に新鮮なお店です。

今や四川料理の象徴のようになっている唐辛子。しかし17世紀頃にはまだ中国には伝わっていなかったのですから、昔の四川料理も麻辣の辣の味は優しいものであったに違いありません。
そんな時代から継承されてきた四川料理に思いを馳せつつ、当世中国料理に取り組まれる井桁さんのご展開ぶりが、きっとこのご本の中に垣間見られることでしょう!

料理は時代と共に変化します。でも、今の味わいは、長きにわたって塗り重ねられてきた人々の工夫と叡智の結晶であり、らしさを取り繕っても形にはならないと思っています。

料理人の感じ取ってきたセンスは、語らずとも自ずと作品(料理)に出てきます。
井桁さんのお料理は、井桁さんが四川でつかみ取ったエッセンスが滲み出て、当に「現代に蘇る老四川」!
是非皆さんにも知っておいて頂きたいです。頁をめくった次は、飄香へ是非!!


<つづく>

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