2017年1月17日火曜日

今年の餃子道場は・・・?

2015年に練習しまくった蒸し・焼き用の皮での包み

今年は1月28日が春節。中国では、こぞって皆、水餃子をほおばる。
餃子という名前には「行く年来る歳の交わり」を意味していることから、元旦の零時に食べられるのだとか。日本でいうところの「年越し蕎麦」みたいな存在。
その形は、古代の金銭の形に似ていることから、吉祥如意の象徴と見なされています。おめでたいこと、お金に恵まれ幸せに過ごせますようにと思いを馳せる節句食。

その歴史は大変古く、唐代の餃子の化石が、新疆ウイグル自治区のトルファンで見つかっていることから、唐代には既に食べられていた料理だということが分かっています。
当時は「扁食」と呼ばれていたとか。餃子と呼ばれるようになったのは、明代以降だそうです。
餃子は、元々は西域の食だったようですが、その美味しさは、民族の壁を越えて魅了され、様々な姿と食べ方で、世界各地に根を下ろしています。


「南粒北粉」の中国でも特に餃子が有名なのは、西の都、西安。西安では、あらゆる山海の美味が餃子となってバリエーション豊かな「餃子宴」なる餃子尽くしのコースまであるのです。
20年前に知っていたら、椀子そば大会に挑む気持ちで臨んでいたかも知れません(笑)。


さて、餃子は何料理か?

西安でもう一つ有名な刀削麺。これの生地は餃子とほぼ同様。
だから、麺料理か。しかし、お肉がたっぷり詰まっていたりすると、皮より具の比重が多くて肉料理とも呼びたくなる。いやいや、野菜のバリエーションも、ニラに白菜、青菜や根菜まで入って野菜料理にもなり得る。
西安の餃子宴コースとは行かなくても、いろんな種類を食べれば「餃子は完全食!」と言い切れる気がしてきました。

まだ料理教室を初めて間が無い頃、5色5種の餃子に挑戦し、大奮闘しましたが、余りに慌ただしいので今は2種類ずつ・・・。
そう、料理は「一を聞いて十を知る」の心意気。

餃子の包容力に感服しながら、餃子指南が続きます。



2015年 沢山つくった鶏冠型


2016年の陰陽餃子



2013年変わり餃子
昔から作っている五行五色餃子 

2014年の紅白餃子
日本の大晦日にピッタリ!?(笑)





2017年1月11日水曜日

 核桃酪(胡桃汁粉)


今月のNHKカルチャーは、薬膳の真骨頂「核桃酪」。西太后の美肌と不老を支えたと言われる胡桃のお汁粉です。

美食家でならした西太后の食べたアレコレ談は、枚挙に暇がないので、何処までが伝説か真実かは分かりませんが、コレは食べていた気がする(!)。
実際、清朝の御膳房の記録にも記されている一品です。

宮廷料理らしい点は、見た目ではなく、何と言っても胡桃の薄皮剥きというプロセス(!)。
デコボコを覆う薄皮を楊枝で丁寧に取っていく工程に「女官」の二文字が頭に浮かびます。宮中の御膳房のお仕事。技術的に難しくはなくても一人でやるには、なかなか骨折れる仕事です。

皮むき作業は皆さんにもお手伝い頂くつもりですが、1回分は、私が予め用意しておかなくては。

なんとか剥ききりました。
キレイに取れた時は、妙に気持ちが良く、だんだん無心になってきます。)))

この温かいデザート、満州族の王朝、清の名物に相応しい一品です。
材料の西域から伝わった食材、胡桃は勿論のこと、「核桃酪」の酪の文字に、遊牧系民族を感じるのです。ナッツミルク。(ちなみに「酪」の文字はまた、ペースト状を指すこともあります。)正にそんな感じのデザートですが、酪の文字の懐の深さは意外です。
左の酉偏は、酒器、壺を指していて、右側は上から下向かうことを意味する象形なんだとか。転じて、神霊が降って来るといったニュアンスが添えられているようです。
漢字文化の漢民族社会に外から入ってきた遊牧民の食「乳」は「酪」で現される訳です。

日本では、奈良時代に大陸から伝わったアレコレの中に「酪」があり、今で言うところのバターを指していたようです。「蘇」や「醍醐」と呼ばれるチーズの一種と共に、とても貴重な食べもので、高貴な方のお口にしか入らなかったようですけれど。
19世紀、開国したての日本でびみょ〜な存在だったバターやチーズに牛乳。
平安時代の高貴な方たちのお口には、それこそ「醍醐味」だった!?? それが言葉の語源です。


余談ですが、今年の干支は酉(トリ)。「鶏」「鳥」と書かないのは何故でしょう??

思えば、十二支は全て動物とは関係の無い漢字を使用しています。
これは、庶民が覚えやすいように、身近な動物を当てはめ、1~12の数えなどに用いたことによるのだそう。

 子  丑  寅  卯  辰  巳  午  未  申  酉  戌  亥

酉は、10番目。12カ月でいえば、10月。お酒を作る季節でもあり、また農作物を「トリ込む」収獲の季節でもあるというもの。


こうやってみると、2017年最初のお料理に相応しい「核桃」ではありませんか!?


胡桃のお汁粉、気合いが入ります!


2017年1月2日月曜日

2017年 教室案内


あけまして おめでとうございます

高千穂の祝酉

2017年 酉年。

また1年、滋味な鶏スープを沢山トリます。

鶏スープは、お粥と並んで薬膳の原点。両者は胃を開かせ、食事の為のウォームアップ役でもあります。漢方薬も、お粥かスープを一杯飲んでからとると、体に巡り、効果がUPすると言われます。

鶏スープには、秘められた素晴らしい薬効がいろいろ(!)。
中国清代の料理書『隋園食単』に「鶏の功は最も大きい・・・」とあるように、鶏肉は、古より万病に良いものとされてきました。鶏のスープは基礎代謝を上げ、血糖血、血圧の安定、免疫力UP、疲労回復に効果的であることが明らかにされています。特に鶏胸肉は、イミダペプチドという抗酸化力のある成分が含まれ、スープで効率よく摂取できます。信じがたいですが、鶏のご先祖は渡り鳥(!)。渡り鳥が何日も羽ばたき続けていられるのは、この成分が翼の付け根である胸の筋肉に含まれているが故。
イミダペプチド、私も肩や腰に注入したいところだけれど、そういう仕組みにはなっていないようなので、ガンバってスープを取って頂くしか無い。
疲労回復に、老化予防、生活習慣病予防に、一碗のスープを♪



さて、お正月、沢山用意したいのは、鶏スープではなく、お魚のスープ、お出汁の方。

お出汁のことを、「だし汁」と言われるようになって久しい。
ですが、未だどうも違和感を拭えないのでアリマス。

だって、出汁は汁でしょ。漢字で書くと、出汁汁。
う〜〜〜ん。)))

だし汁と言うようになったのは、いつからなのでしょうか。
粉末出汁の素が生まれたころからでしょうか??
「だし汁」は「粉出汁ではなく出汁の汁のほうですよ」という含みがあるのかな?
鶏スープの場合はそのものズバリ「粉末鶏スープ」。出汁だって「粉出汁」とすればいいようなものですが、ひょっとして、粉出汁や出汁パックが如何に定着しているかという裏返しでしょうか??

インスタントコーヒー然り。侮れない粉末のクオリティーもあるのかもしれませんが、粉だし、粉スープに食塩抜きのものものはお見かけしたことがありません。
粉にできないことは・・・
出汁の濃さで味を出したいときの、追いがつお、またはスープでスープを取るという作業。

"レシピには、粉出汁は使わない。"
スープやお出汁の力を信じ、今年もこれを続けていきたいと思います。

いきなり干支を食べる話で、なんだか面目ない。


  さて、2017年最初の教室は・・・
 
春節だから、やはり餃子。毎年変わり餃子を手がけますが、今年は原点に返り、オーソドックスなエビ韮餃子を。プラス和食にもピッタリの春菊と鶏肉の餃子で幕開けです。スープ仕立て or 鍋仕立て、焼き餃子等々いろんな食べ方に合わせた皮作りもご紹介します。
あ、もちろん、唐辛子の赤色の中に黄色のウコンがしっかり染み出た赤くて黄色い自家製辣油もご用意しましょう!
デザートは・・・ギリギリまで悩みます。

おたのしみに!!

 日時: 2017年 1月24日(火)、2月4日(土)、5日(日)


2016年12月29日木曜日

勝ち栗


勝ち栗をいただきました。
殻付きなのは初めて。
晒乾して炒り、また干して炒り・・・焦がさず作る保存食。

栗は日本的な食材のような気もするけれど、古代から中国にもヨーロッパにもある森の恵。

日本では、縄文時代には、北国の主食であったとの記録も。
桃栗三年、柿八年 柚子の大馬鹿十八年(あるいは梅すいすい十六年)
3年で収獲できるまでになるところも、心強かったかな?

4−5世紀にまとめられたローマの料理書『アピキウス』にも、胡桃、榛(ヘーゼルナッツ)、アーモンドと並んで、栗が出てきて、家畜の飼料にされていたりもした様子。
6世紀、北魏の時代にまとめられた中国最古の農書『斉民要術』(全十巻)には、4巻の果樹の部で、棗、葡萄に次いで、杏、梅、栗が紹介されています。
寒さにも強いこともあり、命の糧として、古今東西にゆるぎない存在であったようです。

砂糖が普及してからは、栗羊羹に天津甘栗、マロングラッセ・・・女性好みの甘物として象徴的地位も獲得。最もオシャレに変身できる滋味な食材です。

鬼皮に守られ、渋皮に包まれ、それでもこの地位を守ってきた栗!!
乾物とは見分けが付かないこの風貌も相まって料理してしまうより、御供えにしたくなってきました。

しばし飾って拝んで、「勝軍利(かちぐり)」縁起モノとして、おせちに仲間入り。
あはは・・・確かに、皮むき作業には、鋭・鋭・応〜!の勝ちどきが必要かも。


2016年12月21日水曜日

ゴパン




東南アジアの友人が言う「ごはん」がどうしても「ゴパン」に聞こえてしまって、何度も聞き直しては笑った。黒米を加えたこのパンを焼くと、いつも彼女のことを思い出してしまう。このパン、彼女に食べさせて、また「ゴパン」と言わせたい(笑)。
これは、米粉パン反対派のごはん入りパン「ゴパン」です。

試行錯誤を繰り返してやっと理想的な配合が決まりました。
お正月の里帰りにはコレを手土産にしようと、沢山焼いたのはいいのですが・・・。
冷凍庫がパンで一杯です。

時間の算段、懐の算段、冷蔵庫内の算段・・・いずれも厳しい年の瀬です。



2016年12月19日月曜日

お櫃



ここ数年、二の足を踏んでいたお櫃を、思い切って買いました。
栗久さんの秋田杉のお櫃。
炊きたてのごはんをお櫃に移しかえるだけで御飯が美味しくなる。
更には、冷めても美味しい。
お冷や御飯が美味しいのです。温めたくないくらいに。

栗久さん曰く「お櫃に入れておけば、夏場も常温で2日間大丈夫」。

まだ夏は越えたことがありませんが、なるほどごはんの傷みというのは、湯気が水滴になり、それが傷むところから始まるのだなと、お櫃の御飯と付き合うようになって分かってきました。

ひと昔、ふた昔前、薪木をくべ竃で御飯を炊いていた頃のごはんに近づこうと、家電メーカーが研究に研究を重ね優れた炊飯器を生み出していますが、実は炊く美味しさ以上にお櫃の「保存」の美味しさが、キモだったりするのではないか!??
そんな思いが、ふとよぎりました。

高級炊飯器を使ったことがないのでわかりませんが、もし、ごはんをお櫃に移すひと手間が、十数万円もする炊飯器を越える美味しさを提供していたら・・・!!

なんだかほくそ笑んでしまいそう。

工芸と工業。天人合一と人定勝天のせめぎ合い。
ヒトは何でも叡智で乗り越えようと試行錯誤をして来ましたが、それを杉のわっぱがスッーと涼しい顔で成し遂げててしまったような・・・。

もう少し自然に寄り添うことで簡単にかなえられる喜びが、まだまだ沢山あるような気がしてきます。

何千万円も使って宇宙に行かなくても、数十万で行けるところにもロマン溢れる大自然が沢山あるし、里山の息づかいも捨てたものじゃございませぬ。

そんなことを思いつつ、江戸の長屋のおよねさん(仮名)になった気分でお櫃のお冷やごはんをよそい、お茶を掛ける。

ずるずるずる)))))

んまい!

美味しいお漬け物、漬けたくなります。

温故知新か先祖返りかと笑われるかもしれませんが、暮らしの中の道具、人の手を出来るだけ近くに感じていたいものです。


さて、欲は尽きぬモノで・・・・。
お櫃に入るに相応しい美味しいお米も欲しくなります。
コチラは、料理研究家の冬木れいさんから、青森土産にいただいたお米『晴天の霹靂』。
斬新なパッケージには「ごはんが好きになるお米」と。
お櫃とコレで、ごはんがもっと好きになった今日この頃です。


2016年12月16日金曜日

柚子味噌


毎年八丁味噌で仕込む柚子味噌。
今年は、白味噌バージョンもプラス。

2食のふろふき大根を楽しもうという寸法です。

雅な白味噌、骨太な八丁味噌。どちらも好きですが、どちらもどこかよそ行き気分。
それはきっと、記憶にある祖母のふろふき大根が、いつもの味噌汁使用のお味噌で作られていたからだと思う。

柔らかく炊けた大根いっぱいの大きなお鍋と、味噌を練った小鍋が、まるでビュッフェのようにテーブルの上に置かれ、各自大根をすくっては味噌を掛け掛け食べたものです。
大根と味噌、両方を熱々で供しようとした苦肉の策だったのか、単なる横着か??

小鉢に盛りつけられたふろふき大根を「1ケでは足りない・・!」と感じてしまうのも、そんな「食べ放題ビュッフェ大根」に親しんだからかもしれない。


味噌は、生活感をあらわす最もさりげなく最も深ーい素材。
昨年のドラマ『天皇の料理番』では、マッカーサーの「日本人にとって天皇は?」との問いかけに宇佐美さんが「味噌のようなもの」だと応えましたっけ。「味噌は生まれたときからそこにあって、当たり前すぎて、その意味など考えたこともない。でも、明日から味噌を食べるなといわれたら、とてつもなく寂しく、暴動が起きるでしょう」と。
宇佐美さんは、天皇制を味噌に喩えましたが、味噌の歴史は天皇家ぐらい古いという、ドラマとは別の意味でこのセリフを思い出してしまいました。

味噌は飛鳥時代に大陸から伝わったと言われます。
正確には、大豆醗酵食品の「醤」という形で伝わったわけですが、味噌汁で味噌を食べるようになったのは鎌倉時代なんだとか。
一汁一菜という言葉もその頃からでしょうか。

仏教伝来と共に肉食のタブーが広まっても、日本人は味噌を始めとする発酵により生まれるアミノ酸で栄養のやり繰りをしてきたともいえます。
正に命の源、米と味噌。

そんな味噌。日本全国いろいろな味噌がありますが、土地土地の食文化を体現していると言っても過言ではないですね。

旅のような私の人生。やはりふろふき大根も、東西の味噌ハーフ・アンド・ハーフぐらいが相応しいかな(笑)。

一日1食1品は味噌を使ったお料理をいただくことが、目下、私のささやかな健康法です。