2019年10月23日水曜日

『大草原の小さな家』— 料理編2 「主食」

小学校高学年の頃、私はままごとの延長で、お菓子を作るようになりました。
あれは教育方針だったのか(?)、お菓子をねだっても買ってくれない母が「お菓子を作ってみたいので材料が欲しい」と言ったら、材料費を出してくれていました。だからおやつが欲しければ、自分でつくる。いつのまにかそんな風にーーー。
母の持っていた小さな本(写真下)の中から、簡単なものを選んで作っていました。

   
昭和47年初版女子栄養大学出版部(左)  /   昭和50年初版 日本放送出版協会(右)

まずはこの中から、小麦粉、砂糖、卵・・そしてバターetc. 近所のスーパーで買うことのできる食材で作れるお菓子を抜粋。

すると、なんとスポンジケーキ、シュークリーム、パイなど、いきなり中〜上級クラスのお菓子が浮上しました。カスタードクリームに使うコーンスターチが何かも知らなかった頃、そしてケーキといえば、ヤマザキのスイスロールとバースデーケーキぐらいだったおばあちゃん子は、ちょっとたじろぎましたが、本の通りにやるとそれらしいものが出来て、感動でした。(この頃の本は手順の説明がしっかりしていて、とっても実践的!)

更に、ベーキングパウダーを買ってもらって、クッキー、パウンドケーキ。
マドレーヌ・・・は、型が無くて落選。
クッキーも、ラングドシャは、特にシンプルで、型が無くても作れるのでトライしたのを覚えています。
・・・が! 直径1cmほどの生地が、びろ〜〜んと薄く広がるので、天板上の生地がみーんなひっついて「一枚板」になってしまいました。レシピには「間隔をあけて」と、ちゃんと書いてあったけれど、ここまで広がるとは想定外でした。
あ〜〜いろいろ失敗したなぁ。)))

私の失敗談はさておき、この本の中に「ホットビスケット」というのがあり、分厚いクッキーのような写真が載っていました。
他のケーキやクッキーに比べて、あまり美味しそうには見えなかったので、あえて挑戦しませんでしたが、「ホットビスケットってなんだろう?」と、ずーっと気に掛かっていたのでした。

あれはスコーンのことだった!!

イギリスのスコーンは、その十数年後に暮らしたアメリカではホットビスケットと呼ばれていました(※実はスコーンはスコットランド発祥ですし、“ビスケット”のビス(bis)2度焼くところから来る接頭語なので、本来の意味からはかけ離れてきています)。
筒状のケースに生地が入って冷凍になっている、焼くだけインスタントもスーパーで買えて、パンケーキ(ホットケーキ)と並ぶカジュアルな軽食ポジションでした。
イーストではなくベーキングソーダで作る即席パン。それがホットビスケットなのでした。『小さな家の料理の本』には、パンビスケットという呼ばれ方で載っています。
ビスケットは「第2の主食」だったと、この本にもあります。


* * * * *

コーンブレッド

小麦以上に「主食」の印象があるのは、トウモロコシ。ドラマでも、よくコーンブレッドが出てきます。頁をめくると、挽いたトウモロコシ粉に塩と水を加えて練りローフ型に入れて焼いただけのものだったことがわかりました。ラードを取った後のカリカリの脂身を加えることもあったようです(Crackling Cornbread)。
また、バターの副産物のバターミルクで練ったレシピもあり、リッチな美味しさのコーンフレッドになっていきます。
本では、このレシピは、「ジョニィケーキ」という名前で紹介されています。
ローラはどうしてジョニィケーキというのか不思議に思ってお母さんに訪ねます。お母さんの答えは「南北戦争の時、北軍の兵隊は、南軍の兵隊を“反乱軍ジョニィ”と呼んでいたのだとか。その南軍の兵士達が食べていたのがトウモロコシのパンだったからでは?」というものでしたが、実は「ジョニィ」は、Journey (ジャニー) のニューイングランド訛りだという説が濃厚です。
ジョニィケーキも、元々は、コーンミールを塩と水でねったものをスキレット(分厚いフライパン型の鋳物)にいれて、たき火で焼いただけのパンケーキで、植民地時代の旅人によく食されていたのだそうです。地理的にも、発音の面からも、ジョニィはジャーニー(旅)だった説に私も1票!
ちなみに、トウモロコシのパンは、ネイティブアメリカンにとっても主食的な食べ物だったようです。

その時々で調達できる食材で、リッチにできたり粗野になったり・・・つまり、日本でいえばお寿司を作る時もあるけど、お粥で膨らしてお腹を満たしたり、雑穀を混ぜて量を増やしたりもする的なこと。この1冊にある複数のコーンブレッドレシピから、そんな暮らしぶりが浮き上がってきます。

トウモロコシの粉で作ったパンは、おしなべてズシッと重くて、のど太い印象があります。小麦の供給が安定した現代には、無くなってもおかしくないもののようにも思うのですが、コーンブレッドは、別名クイックブレッドことマフィンのレパートリーの中に加わり、今でもしかと存在感を放っています。
砂糖もベーキングパウダーもバターもミルクも入った、ローラの時代で言えばコーンブレッドの超リッチ版のコーンマフィンは、マフィン専門店でも根強い人気です。
トウモロコシ粉独特の食感に、開拓時代から食べ続けられてきたソウルフードとしての愛着が、ロングランの理由かもしれません。

<つづく>

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