2016年8月31日水曜日

カルダモン



その香りは、コショウに通じる辛味に茗荷や新生姜のような爽快感とエキゾチック感がプラスされ、存在感がありながらも軽やか。

私はこのカルダモンというスパイスが大好き。

名前もいい。
カルダモン。
「(オレは)オレだもん♪」と言っているみたい。
オレはオレさ」 “I yam(=amが鈍ってる) what I yam とはポパイのセリフ。楽天的な感じでいながら、実は頼もしい。

そう、カルダモンは、お肉にもお魚にも野菜にも、そしてデザートにも使えるという頼もしさがあり、ブレンドされても、脇役使いでも、凛として確かな存在感を放つ。

このキャラ、男性でも女性でも魅力的ですが、スパイスワールドでは、コショウが王様でカルダモンが女王と言われています。
共に活用の幅では1,2を争いつつ、圧倒的パンチ力とお肉との強い絆に軍配があがり、コショウがキングに。カルダモンは、優しさとエレガンスでクイーンに…というところでしょうか。


中医薬の観点からは小豆蔲(ショウズク)と呼ばれ、お仲間の白豆蔲(ビャクズク)同様、「芳香化湿」(=香りの刺激で水分の代謝を促進)、「理気温中」(=気の巡りを促進し、お腹も温めてくれる)とされています。その揮発性の爽やかな香りが一役かっているということのようで、胃腸の機能性を気の流れ面からバックアップしてくれるという訳です。

その香りを活かすには、カリーの仕上げブレンドスパイス 「ガラムマサラ」然り、料理の終わりにパパッと振りかけるのが良さそう。でも、スーッと爽やかな部分を煮て飛ばしてしまい、残された甘い香りで料理の甘さを引き立てるなんて使い方もあるのです。
スパイスを加えて煮詰める牛乳デザートのクルフィや人参と牛乳とスパイスを煮詰めたガジャルハルワなどがそれです。
辛さとも甘味とも仲良くできるなんて、なんて社交的なスパイスなんでしょう♪
バランスのよさと親しみやすさで魅力的な “クイーン” です。

カルダモンがミルクの甘味を引き立てるデザート、クルフィ。
9月の料理教室に、登場予定です。



2016年8月17日水曜日

冬虫夏草


「冬虫夏草は悲しい。冬は土の中で過ごして、夏はキノコになってしまうんだから。」

『宮廷女官チャングム』の23話に出てきたセリフです。

このセリフにある通り、冬の間、虫(コウモリ蛾の幼虫)が、地中に潜伏している間、寄生した冬虫夏草属の真菌(コルディセプス・シネンシス)にジワジワ養分を吸い取られ、夏になる頃にはすっかり体を乗っ取られて“草” =キノコになってしまうというもの。

この菌は、他の虫にも寄生することが可能なのだそうですが、チベットの標高3000m以上の高山に生息するコウモリガの幼虫に寄生したものが群を抜いて優秀な成分の冬虫夏草になるらしいのです。動植物性両方の生薬の良いところを集約した稀少な中医薬。その効能も、滋養強壮、疲労回復、諸病治癒、不老長寿....と、かなりの万能ぶり。

古くは仙人の食べものという位置づけで道教思想とも深く結びつき、五行の自然哲学が生まれる過程でも一役買っているらしかったり、かの秦の始皇帝の為の不老長寿の薬草を捜すという徐福伝説にも関わりがあるとされていたりと、冬虫夏草伝説は、紀元前まで遡ります。
時代は下って唐代、楊貴妃におぼれた玄宗帝が不老の為に、かたやその寵愛を受けた楊貴妃が永遠の美の為に冬虫夏草を重用したとか。楊貴妃は冬虫夏草がとれる蜀(=現在の四川省・雲南省辺り)の国の出身なので、楊貴妃がもたらしたとも??
近代では、清朝全盛期の6代皇帝乾隆帝(在位60年間、88歳で逝去!)もご愛用であったとか。

記憶に新しいところでは、1993年の世界陸上〜そして2008年北京オリンピックで、中国が驚異的な成績をあげた影に、冬虫夏草(とスッポン、亀)に支えられた過酷なトレーニングがあったというのが話題になりました。

冬虫夏草はドーピングにはなりません。そのままで、素晴らしい万能サプリぶりを発揮してくれる “食材” なのでした。ですが、天然の冬虫夏草は1キロ百万円以上(!)。(この数値は産地によっても異なり暫定的なもの。現在日本に冬虫夏草の輸出は行われていないみたい。)選手への処方は1日分だけでも相当な額になるので、これはもう国家の威光をかけてのプロジェクト・・・!

ともあれ、何時の時代にあっても、とても庶民には手の届かないスーパーフードなのでした。
ああ・・・(溜息)。

でも、世の中には、溜息をつくだけではなく、先に触れたように「他の虫でも可能」なキノコなので、類似品の培養に果敢にチャレンジしている人達もいらっしゃるようです。
「さなぎだけ」はそんな一品。蚕のさなぎに寄生させて作られた「サナギダケ冬虫夏草」。蚕も蛾の幼虫。なるほど、なんだかイケそう(!)。

成分は自然採取のコウモリガ冬虫夏草には遠く及びませんが、それでも癌細胞に有効なβグルカンやナチュラルキラー細胞を活性化するホルモンのメラトニン、アガリスク茸に含まれることでしられる腫瘍壊死因子、活性酸素の除去に効果がある成分等々を含む冬虫夏草を作り出している研究所が国内にも複数あるようです(!)。

4年後の東京オリンピック、国産冬虫夏草の摂取で日本選手が大活躍!!・・なーんて、ことが起こったりして!??? 


夏草花(乾燥さなぎだけ)
品名:「夏草花」
原材料名:「乾燥さなぎだけ」、中国産。
名前に「虫」がないのにお気づきですね(笑)。
これは、虫で培養したものではなく、虫に類似の成分を添加した培養基で製造したもの。
ひょっとしたらまがいモノ系(??)....かもしれませんが「虫で培養していません」と、名前で表明しているところが潔い(笑)。

5千年に遡る伝説にまで触れたからには、最後はホンモノの冬虫夏草の薬膳スープなどでしめたいところですが、小市民の私には、高値の花。今のところは夏草花で、冬虫夏草の疑似体験と参ります。ゴメンナサイ。
ともあれ、歴史は古く、研究は新しい食薬なのであります。


ちなみに、含有成分の有効性は現代科学によって分析、立証されています。
なかなか充実した成分ですが、続けて食することで初めて諸々の効果が見込める長期服用型(=冬虫夏草が沢山必要)でもあることを付け添えておきます。

ということで、夏草花を楽しみつつ、高貴薬をもとめるより、ごくごく普通の日々の食事からでもしっかり栄養吸収できるよう、胃腸の機能を高めることを心掛けるとしましょう。
だって、「薬より食事」っていいますもんね♪


■冬虫夏草
 性味:温〜平・甘   /  帰経:肺・腎
 補益 助陽類 益腎補陽 滋陰補肺 止血化痰 
 原産地・主産地:チベット、中国四川省、青海省、湖南省、雲南省など


 * * * * * *


マカオのカジノホテルのブティックで売られている冬虫夏草。
カジノで圧勝しないと手に入らないってこと(笑)

こちらはホンモノ、チベット産のようです。
人参、田七人参、冬虫夏草・・・高貴薬の棚か!?
冬虫夏草、手のひらに乗せた量が1万円以上であえなく退散でした。

2016年8月7日日曜日

9月の料理教室

「タコロジー」

集いの食Part2!
瀬戸内ならではの食材を使った、集いのお料理をご紹介します。
タコの〆方、捌き方、タコ丸ごと美味しい食べ方、そしてタコの知られざる効能、ひっくるめてタコロジーで夏のリカバリーです。

 ●  夏の翡翠スープ
 ●  名残野菜でつくるサラダ
 ●  瀬戸の生タコの刺身&カルパッチョ(←捌き方やります)
 ●  パエリア風タコ飯
 ●  インドのミルクデザート
 ●  カルダモンコーヒー


日時:9月3日(土)、4日(日)、20日(火) 10:30〜

2016年8月2日火曜日

奈良漬け




何年か前に「もう作らないから」と、奈良漬け名人の叔母からもらったノートがある。
奈良漬け名人になる前の叔母が、名人から習った時の、漬物日記のようなメモ。

7月頭に白瓜を、かくかく塩漬けして、しかじか・・・、さらに粕漬けにして云々…あとは「食べたい」、「食べたい」(ココ、「美味しくなれ」と連呼するところか・・)すると、樽に呼び掛けながら、涼しくなるまで数カ月待つ。呼び掛けのくだりは、ワタシの書き込み分ですが、奈良漬けは、なかなかの長丁場なのデス。

この手間暇…作っていると、ただ者ではない食べものである感が増してきた。
ちょっとネット検索してみると、8世紀、奈良の都 平城京の頃から伝わるお漬け物とあります。上流階級の高級な保存食という位置づけだった様子。
酒粕も、当時はどぶろくのそれ。砂糖も極めて稀少(薬として正倉院に納められていた!)な時代だから、麹で甘さを出し何度も漬け直して作ったに違いない。
む・・・ワタシの夏の自由研究の課題が見つかった(笑)!? 


毎年届く叔母の奈良漬けは本当に美しくて美味しかった(!)。
私がまだ学生時代の頃のことだから、ノートは30年以上も前の内容ということ。
あの頃は、夏の様子も今とはちょっと違っていた気がする…。

叔母から「ノートにある通りに作れば、必ず美味しくできるよ」と言われたけれど、この環境の変化に、何らかの微調整をしたほうがいいかも。

奈良漬けの仕上がりは、下漬けで決まる。
気温が高いので、乳酸発酵がすすむ、すすむ・・・。

この辺が見極めどころかな??

日に当てないように・・・。

さて、日当たりのよいことだけが取り柄の我が家。
樽を抱えて、右往左往したあげく、しばし北東の玄関先に鎮座していただくことに。

日数は足りないけれど、白カビの感じをみて下漬けを切り上げ、本漬けに入った次第。

ドキドキ・・・・。


先日、秋を待たずして、一緒に漬け込んだ胡瓜を引っこ出して食べてみました。
まだ漬かりが浅く色も薄いですが、十分に味が滲みて美味しく頂ける美味しい一品にしあがっているではありませんか!!

ドキドキがワクワクに代わり、この日の晩ご飯、手抜き料理と炊きたてごはんに奈良漬けを添え…いや、奈良漬けに、手抜き料理と炊きたてごはんを添え、どや顔で供すこととあいなりました。

   奈良漬けや 手抜き料理とどや顔添えて

   ああ・・・才能ナシ。(夏井先生にボロクソに言われそう)

下手な俳句(?)はどうでもいいけど、「奈良漬け」は、夏の季語なんです。))


この暑さ・・・お盆を前に、食欲が落ちている方もいらっしゃるかも。ここは、漬かり具合の良さそうなのを選って、お世話になっている方に、暑中お見舞い代わりに、奈良漬け第1弾をお届けするとしよう。
ちょっと製作期間が短くて「奈良漬け」と呼んでいいのかはばかられまするが。

奈良時代からのうんちくと、どや顔だけは添えないようにします。





2016年7月31日日曜日

暑中お見舞い申し上げます



夏はスパイス! 夏はカレー!!
・・・と、思っている方、沢山いらっしゃると思います。

スパイスはその殆どが植物の種。命を繋ぐ小さな粒。その分、秘めたパワーが凝縮しているのでしょう。なかなかのインパクト。小さな粒、性質の強いものが多いので、お薬としても密かに活躍しています。
昨今、スパイスがふんだんに使われるカレーが「薬膳」と呼ばれることもありますが、強いもの程、取り扱い注意。
季節折々のスパイスとの上手なお付き合いも織り交ぜながら、これからも教室を展開していきます。

この夏も、どうかお元気でお過ごし下さい。


2016年7月30日土曜日

山椒



土用の丑の日は、鰻。
ついでにしじみの赤だしも付けたい。
タコと胡瓜の膾が付けば、鬼に金棒。

そして、鰻には・・・香り高い山椒が・・・欲しい(!)。

京都のぢんとらで、五月の終わりに買った山椒を、ゴリゴリすり潰して鰻に。

夏バテしない気がする香りです。



2016年7月13日水曜日

『バベットの晩餐会』(2)料理編

晩餐会の料理は、食材の買い付けからはじまります。
パリで手配し、運び込まれた「食材」には、生きたままの鶉や、牛の頭、鶏のもみじ(足先)、キャビアにチーズ、ワイン等々・・・。そして、極めつけが、生きたままのウミガメ(!)。今ではワシントン条約で取引禁止になっていますが、この頃はまだ「食材」でもあったのですね(!)。
ルター派の村人たちには(でなくても?)、度肝を抜かれる食材ばかりで、バベットの料理の仕込みが「魔女の仕業」に見えたのも無理からぬことです。

さて、晩餐会の料理内容は下記のとおり。

   ○ウミガメのスープ

   ○キャビアのドミドフ風 ブリニ添え

   ○鶉のパイ詰め石棺風 フォアグラ詰め トリュフソース

   ○季節のサラダ

   ○チーズの盛り合わせ

   ○ラム酒風味のサヴァラン フルーツのコンフィ添え

   ○フルーツの盛り合わせ

   ○コーヒー


 実は意外にシンプル。

でも、火元は薪木が燃料のオーブン、調理器具も殆どが木と陶器、食材は、「生き物」をシメるところから、水も井戸水を汲んで瓶に溜め込んで利用・・・といったあの当時の台所事情を考えると、レストランと同じ料理を、ひとりで作るのですから、大変な労力と時間が使われたことは想像に難くないところです。
一連の超アナログな台所事情を観るのも、密かに面白いポイントかもしれません。
調理道具としての陶器や匙等々、これぞホンモノの「民芸」です。

そうそう、晩餐会のお料理に使われる食器は、バベットがパリから買ってきたものとお見受けしました。
姉妹の家には、グレイの陶器のお皿が壁に掛かっています(ティータイムなどのシーンで出てきますので、ご留意ください)が、それではなく、絵柄のついた磁器が使われていました。


改めて、映画を観た後で、30年前には気に留めなかったところがいろいろ見つかりました。

バベットはシェフでしたので、自らワインを選ぶことは無かったはずですが、彼女はお酒もいろいろ買い付けてきています。

晩餐会で出されたアルコールは。。。。

  食前酒 ○アモンティリャード(ミディアムドライのシェリー酒)

  最初のお酒 ○1860年のブーブクリコ(シャンパン)

  ワイン ○1845年のクロ・ブジョ(ブルゴーニュの赤ワイン) 

  食後酒 ○ハイン フィーヌ・シャンパーニュ(コニャック・ブランデー)

シェリー酒の年代も知りたいところです。

ん!? 1860年のシャンパーニュを1886年に・・・!??
そのシャンパン、もう枯れてますがな。シャンパンは、そんなに長期保存出来ないはずです。どんなにガンバッテも、美味しくいただけるのは5年〜10年までではないかと・・・。クロ・ブジョは、41年モノ。これもヘタすると枯れていそうなくらいのビンテージですがな。ちょっとやり過ぎな気もしますが、19世紀最高のヴィンテージとかなんとか(?)、"最高級"を表現する為の何らかのこだわりがあったのでしょうか??

・・・とまあ、こんな具合にお酒については、少々突っ込みどころがアリマス。

そういうところからしても、この映画はやっぱり料理がテーマではないと思うのです。

バベットの粋なお金の使い方、運命と決断。世の盛衰を目の当たりにしてきたバベットだからこそ出来たことかも知れません。そして何より「芸術は人々の心を解き放つ」ということを最もシンプルに可視化したラストの食事シーン。
こんなところが、この映画の味わいかと思いますが、いかがでしょうか?